【都議会予算特別委】病院独法化、羽田新ルート 小池知事の姿勢を問う

“都民と進む”言うなら撤回を
都議会予特委 白石都議が追及

 9日から始まった都議会予算特別委員会では、小池百合子知事の公約や政治姿勢が厳しく問われました。日本共産党都議団でトップに立った白石たみお都議は、新型コロナウイルス感染対策でも重要な役割を果たす都立病院と公社病院の地方独立行政法人化(独法化)や、都心の超低空を旅客機が飛ぶ羽田空港の新飛行ルートを都民の声を無視して強引に推進する知事を厳しくただしました。  (長沢宏幸)

 都立・公社病院の独法化は、病院経営を効率化や採算性を優先し、より民間に近い形態に変えるもの。いま問題となっている感染症対策は、採算性がとれない医療分野であり、都の財政的支援が不可欠なことから、「行政的医療」と呼ばれています。
 都は独法化の目的について、「都民の医療ニーズに迅速かつ柔軟に対応することで質の高い医療を提供」「最少の経費で最大のサービスを提供」などと説明しています。
 ところが共産党都議団が公文書開示請求で入手した都の知事への説明文書には、独法化の狙いが“財政負担の軽減”にあると明記されていました。また同文書には「設立から10年程度で経営改善が明らかになっている事例が多くあり」と記されていました。

 白石都議はこれらを指摘したうえで、独法化後10年になる神奈川県立病院機構の事例を紹介。同県は財政支援を大幅に減らし、18年度決算では収支が25億円マイナス、繰越欠損金は94億円を超え、経営が危機的な状況に陥っていました。同機構は職員の増員も原則認めていません。白石都議はこの事実を示し、知事の認識をただしました。小池知事はかたくなに答弁に立たず、堤雅史病院経営本部長は、事実を否定できず「どのような経営形態をとっていても(経営難は)共通」「(運営費負担金は)規定の形で支払われる」と弁明しました。
 白石都議はまた、独法化をめぐる意思決定過程の問題を厳しく追及(質問のポイント参照)。公文書開示請求で入手した知事への説明文書(右写真)には、パターンAとパターンBがあり、実際に採用されたのはパターンAのスケジュールでした。

 白石都議は、この文書のパネルを示して、「何かおかしいところはないか」と知事に質問。知事はじめ都側からの答弁はありませんでした。白石都議はBの方に記されている「12/10?四定・代表 質疑 独法化方針(答弁)」の部分を指して、文書は代表質問の1カ月以上前の昨年11月8日に作成されていたことから、「都議会でやらせ質問をしてもらって、独法化を表明しようとしたことになる」と指摘。
 小池知事が都民ファースト代表の時の政策パンフレットには、質問原稿を「都庁職員に書かせる議員の怠慢」「質問づくりを都庁職員に丸投げする議員がいる」と批判していたことを紹介。知事に「やらせ質問」の事実を認め、姿勢を改めるよう迫りました。堤本部長は「ご質問があった場合に答えていくものという意味で整理した」とごまかし、知事は「(やらせ質問は)全く認識が異なる」と答えただけでした。
 白石都議は、都民や都議会、職員からの意見を丁寧に聞き、準備を進めるとした従来の説明とは全く違うと批判。島しょ地域の住民の声も紹介し、かけがえのない医療を提供する都立・公社病院の独法化を中止し、都立病院は直営を守って充実するよう求めました。

羽田新飛行ルート
都として撤回求めよ

 「知事が『都民が決める、都民と進める』という立場に立つなら、知事を先頭に、都として国に撤回・中止を求める、これが本来の筋です」
 白石都議は小池知事が「東京大改革宣言」で「都民が決める、都民と進める」を「基本姿勢」として掲げていることをあげ、都心上空を超低空で旅客機が飛ぶ羽田空港の新飛行ルートの問題を追及しました。
 この問題を巡っては、ルートに当たる品川や渋谷、港の区議会が「容認できない」と議決。町会や自治会なども参加する住民運動も大きく広がっています。ところが小池知事は、国際競争力や東京五輪を理由に国と一体で推進の立場で、昨年8月の国との協議会では、知事の了承のもと、副知事が国の追加対策を評価し、新ルート実施を要望しました。

 白石都議はこの副知事の要望が「地元の理解が必要」として窮地にあった国に、「地元の理解が得られた」とのお墨付きを与える結果になったと強調。「裏を返せば都の発言がなければ、新飛行ルートを進めることはできなかった」とのべ、都が計画強行で果たした役割を厳しく指摘。「都が国と一体で強行突破した事実は否定できない」と批判しました。
 小池知事は「国が自らの判断、責任で決定したもの」と答え、自らの責任には触れませんでした。

白石都議 羽田新ルート
落下物の危険防げない

地元住民は航空機からの部品などの落下物の危険を心配しています。この問題を巡って都は、国が追加対策の目玉としている対策について「世界に類を見ない落下物対策」だと評価しています。
 ところが白石都議の質問に佐藤伸朗都技監は、羽田など国内主要7空港で2017年11月~19年10月までの部品欠落が942件1144個だったと明らかにしました。1日1・5個以上の部品欠落が起きている計算です。
 白石都議は“世界に類を見ない落下物対策”の基準が実施された2019年3月以降、それまで一日1個だったのが逆に1・5個に増加していると指摘。さらに一昨年には重さ4㌔以上のパネルが落ち、走行中の自動車に直撃し、氷が落下することもあると指摘。「国の対策によって落下物はなくせるのか」と質問しました。小池知事は答弁せず、佐藤都技監は「安全対策の着実な実施を国に求めていく」と、国に責任を押しつける答弁に終始。
 白石都議は「新飛行ルートの直下には学校、保育園、病院、高齢者施設、福祉施設、住宅がある。一回でも落下物が落ちたら都民の命にかかわる大問題になる。それを検証もせずに知事は推し進めた」と、知事の責任を厳しく追及しました。

降下角3・5度の危険

 白石都議はまた、1月末から行った実機による飛行確認で国の想定を大きく超える騒音が各地で測定されたと指摘。着陸機の降下角を現行の3度から3・5度に引き上げることに対し、国際的航空団体が「着陸時の危険性が増大する」と警告していることを示し、新ルート撤回を国に求めるよう迫りました。
 小池知事は「国に丁寧な情報提供、騒音・安全対策を求める」としただけで、騒音や落下物など白石都議の指摘には、まともに答えませんでした。