都民支援の施策こそ迅速に スピード感ない賃上げ策

 都議会は小池百合子知事の出席のもとで2024年度の各会計決算を審議する特別委員会(各決)を11月14日に開き、予算執行の問題や課題について知事をただしました。日本共産党から清水とし子都議(日野市選出)が立ち(持ち時間29分)、小池知事が多用する「スピード感をもって」という言葉通り、都民に役立つ施策でスピード感が発揮されているかを検証しました。

各会計決算特委 共産党清水都議が追及
 清水都議が最初に追及したのは、中小企業の賃上げ支援で、都の「魅力ある職場づくり推進奨励金」の賃上げを含むメニューに応募しても、支払いまでの期間が1年7カ月もかかる問題についてです。4週間ほどで支給される岩手県や徳島県の賃上げ支援制度と比べると19倍もの長さです。
 なぜ東京都はこんなにも時間がかかるのか―。清水都議は、その謎をパネルを示し(図参照)〝解明〞しました。2024年度の同事業への応募は4000件を超えました。支援への道のりは、まず「運試し」のような抽選から始まります。当選しても、その後8つのチェックポイントを通過して初めて支給審査となります。
 清水都議は「物価高騰で苦しむ中小企業にとって、あまりにも長く険しい道のり。知事が掲げる『スピード感』とは、全くかけ離れている」と指摘しました。

年度内支給ゼロ
 さらに驚く事実が明らかになりました。予算23億円の執行率は100%、なのに2024年度中に受け付けた事業者への支援実績は「ゼロ件」でした。田中慎一産業労働局長は、事業を請け負う「東京しごと財団」に23億円を拠出したので執行率は100%だとする一方、支援金については「年度末時点では支払いに至っていない」と認めました。
 清水都議は「知事の言う『スピード感を持った政策実現』とは言えない」と指摘。職場環境改善などを目的とする現行制度とは別に「(岩手、徳島両県などのような)賃上げのみを条件とするシンプルな『中小企業賃上げ応援事業』に速やかに踏み出すことを強く要望する」と提起しました。

賃金格差解消 まず都職員から
 雇用分野で重要な課題になっているのが、男女賃金格差の解消です。田中産業労働局長も答弁で「働く女性が男性と比べ、収入や処遇の面で格差が生じている状況を解消することは必要」と認めました。
 ところが都職員の賃金を共産党都議団が調査したところ、正規、非正規も含んだ全職員(警察・消防・学校職員を除く)の一人あたりの平均年収は男性748万円、女性671万円で、女性の方が77万円も低いことが分かりました。給与額は勤務形態にかかわらずフルタイムに換算した数字です。
 清水都議は賃金格差の要因に管理職の登用割合や雇用形態に男女格差があるとし、とくに女性職員の非正規割合が高いことが大きいと指摘しました。

非正規は女性差別
 雇用形態別の平均給与では、特に女性非正規職員の8割を占める会計年度任用職員の平均給与は422万円。この数字は常勤換算なので、実際の支給額はさらに低くなり、男性正規職員(794万円)の半分程度が実態です。
 清水都議は女性相談員や消費生活相談員、学校司書など、ほとんどが常時必要な大事な仕事なのに会計年度任用職員でしか採用していないと指摘。「非正規雇用が雇用形態を通じた女性差別になっている。この問題を解決しない限り、都職員の男女賃金格差はなくならない」と提起しました。
 その上で、「(男女賃金格差の)解消は必要だというなら、まずは都自身が問題を直視し、都の職員から正規と非正規の賃金や待遇の格差をなくすこと、雇用を正規化することを率先して実施すること」を強く求めました。

データセンター 新たな規制必要
 清水都議は地元、日野市など、各地で進む住宅隣接地でのデータセンター建設問題で、海外の規制強化策の実例などにも触れ、新たな規制強化策を求めました。小池知事は同センター建設を推進しています。
 データセンターとは、インターネットサーバーやネットワーク機器などのITインフラを安全に保管・運用するために特別に設計された施設。大きな電力消費が伴う電源供給や、大量の水を使う冷却設備が必要。昭島市で計画が進むデータセンターでは、同市全体の年間電力消費量の6倍、温室効果ガスの二酸化炭素排出量は4倍相当になると試算されています。
 日野市では日産自動車工場跡地に三井不動産が計画。高さ72メートル、幅300メートルに及ぶ巨大要塞のような建物で、住民から「当たり前の生活が壊される」と、不安の声が上がっています。しかし三井不動産は電力消費量、二酸化炭素排出量、排熱量といった周辺環境に及ぼす重要情報を公表していません。

環境アセスの対象に
 清水都議は一定規模以上のデータセンター稼働について、事前に管理当局に通知義務があるギリシャや、規制や禁止する条例が相次ぎ制定されている米ジョージア州などを紹介。都のこれまでの対策では「住民や環境にもたらす負荷や悪影響にまったく歯が立たない」と強調。建設を規制する新たな特別対策が必要だとし、都の環境影響評価の対象にすべきだと提案しました。

タイトルとURLをコピーしました