密室で計画、公の利益壊す 外苑再開発 外国特派員協会で会見

 神宮外苑再開発(新宿区・港区)でラグビー場建て替えの認可手続きを巡って緊迫した状況が続く中、作家でジャーナリストのロバート・ホワイティング氏、日本共産党の吉良よし子参院議員、原田あきら都議は10月30日、日本外国特派員協会(千代田区)で記者会見し、それぞれの立場から計画の見直しを強く訴えました。

吉良・原田氏、米国作家ら
 この再開発計画は、東京で最も歴史ある緑に恵まれた公共性のある地域で行われ、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を交換しての建て替えや、超高層ビル、商業施設、ホテルなどを建設するもの。多数の樹木が伐採されます。多くの都民や専門家、文化・芸能人らが反対の声をあげ、現在2件の訴訟が進行中です。
 しかし文部科学省は再開発で建て替える秩父宮ラグビー場の財産処分を8月に認可。東京都は9月、全体計画がまだ提出されていないのに新ラグビー場建設の設計変更を認可しました。現在、ラグビー場の設計変更に伴う権利変換計画の都知事の認可を巡って、緊迫した状態が続いています。
 吉良議員は、政府の責任を追及してきたことを紹介。「国に再開発の責任はなく見守るだけと繰り返すが、イコモスや国連人権理事会作業部会からの国への指摘やラグビー場は国民の財産という点からも国にも責任がある」と強調。
 さらに国が国連人権作業部会の報告にあった『開発で人権に悪影響を及ぼす可能性がある』との記述の削除を国連に要請したことや、財産処分認可申請の認可が通常2〜3カ月かかるところ1週間で認可した理由として、申請前の協議や事業者からの要請だと認めたことを挙げ、「国は無責任なだけでなく事業者側に偏った公平性に欠ける姿勢だ」と批判。引き続き国会で追及し、計画の撤回、見直しを求めていくと表明しました。
 原田都議は政官財の共謀で「密室」の中で計画が練り上げられ、公共の利益がいかに私的利益のために踏みにじられているかを入手した資料をもとに都議会で追及してきたことを紹介しました。
 原田氏は「外苑再開発は単なる民間事業ではなく、国民共有の財産を使い、容積率緩和で都市計画公園に超高層ビルの建設を特別に可能にしたもの」と指摘。計画自体も都幹部が森喜朗元首相や萩生田光一・現自民党幹事長代行と水面下で協議し、神宮球場と秩父宮ラグビー場の土地交換による建て替えが樹木伐採の原因となったことを強調しました。
 野球をテーマにした著作を多数著しているホワイティング氏は、神宮外苑の歴史的・文化的意義を紹介し、1926年開場の明治神宮球場が日本野球史において果たしてきた役割を語りました。
 ホワイティング氏は1962年からの神宮球場との自らの関わりを紹介した上で、「100年の歴史がある神宮球場は、野球ファンの聖地で不可欠の存在」だと強調。
 「公共の森としてつくられた外苑に、超高層ビルや商業施設を造るのは、東京の歴史を台無しにするもの。神宮球場は野球の歴史にあふれる場所で、建て替えは日本の野球のアイデンティティーを壊す」と主張。「私たちには次の世代に引き継ぐ責任がある」として、建て直すのではなく、改修をと訴えました。
 記者から「開発に歯止めをかけるためには、どうすればよいか」との質問が出され、原田氏は「開発中止を求める署名が36万人分寄せられ、多くの著名な文化人も声を上げている。大事なのは声をあげること。政治家と大企業が癒着した非民主的なまちづくりの問題として批判が広がるのではないか」と述べました。

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