9月に東京民報社の代表取締役に就任した和泉尚美氏(前共産党都議団幹事長)が、都政と都議会をウオッチする不定期連載が始まります。年に4回の定例議会では、都議との対談で論戦やエピソードを振り返ります。今回は、都議選後最初の第3回定例会(9月24日〜10月9日)で代表質問に立った、都議団新幹事長の里吉ゆみ都議(世田谷区選出)です。司会は、荒金哲編集長。

和泉 忙しいところ対談ありがとうございます。今回の定例会で私が感じたのは、都議団が14人に減っても、前期に野党第一党として切り開いた歩みを止めることなく、議会の課題にも都政の課題にも、多角的に取り組んでいることでした。
里吉 新人・元職の3人を含め、14人全員、力がある議員なんです。それぞれが、都政でこれをやりたいという思いを持っていて、例えば申し入れをしようとなったら、自主的に文書をつくったり、動き出してくれます。
和泉 都議団の伝統ですよね。こんな取り組みをしたいと都議一人ひとりが問題意識を持って、主体的に動いてくれる。あと、徹底的に議論するのも都議団の文化です。
里吉 それぞれが得意分野を持っている専門性と、集団の力。その組み合せが、都議団ですよね。
議会改革への一石
和泉 今回、議会改革を都議団として提案しましたよね。ねらいは?
里吉 都議会の改革を検討する「都議会のあり方検討会」(あり検)を、前期に引き続き設置することが決まりました。しかし、前期のあり検は議員の質問時間を短くしようという議論が突然、持ち出されたんです。せっかく設置するならば、私たちが必要だと考えている議会改革をまとめて提案しようと考えました。
和泉 あり検の議論が実効性あるものになるように、提案という一石を投じたんですね。まとめてみて、どうでしたか?
里吉 実は、この間、都議団が提案してきた議会改革の多くが、実現しているんですよね。委員会のインターネット中継もそうだし、政務活動費の使途公開や、公用車のルール見直しもそうです。振り返ってみて改めて実感しました。
和泉 公用車の利用は、すごく減ったよね。以前は、他党は一般の議員も普通に使っていたから。
里吉 提案の表題の「よく議論して決める、都民に開かれた都議会に」に、私たちの思いが込められています。議会運営委員会の理事会など、非公開の場で、まともに議論もせずに決められる。そんな議会を変えようということです。
言い訳に苦しさが
和泉 都議選後、最初の定例会で、やはり大きなテーマは、物価高騰から暮らしをどう守るかでした。都議団は、賃上げ応援条例を出しました。賛成は共産党と、グリーンな東京の2会派だけだったけれど、論戦では、賃上げへの支援は必要と多くの会派が主張した。そういう認識は、都議会に定着してきましたよね。
里吉 公明党は、私たちの条例案に反対しましたが、「中小企業の賃上げを進めたいという趣旨は理解します」と発言しました。これは異例のことでした。他党も含めて、国がやるべきことと言ったり、生産性をあげることと賃上げ支援を同時にと言ったり、反対はするけれど言い訳がだんだん苦しくなっている(笑)。
和泉 都議団の提案って、最初は「また、荒唐無稽なことを言っている」みたいな反応から始まるんですよね。でも、都民の切実な要求だから、運動と結んで議会で繰り返し取り上げることで、だんだん、必要だと認識されていく。そうやって〝議会内世論〞をつくるのが、都議団の大事な存在意義ですよね。
里吉 給食費無償化も、認可保育園増設も、そうですよね。今回、各党が取り上げて話題になった火葬料の高騰も、最初に、はらじゅん(原純子都議=当時)が質問したときは、「何それ?」という反応でしたから。
多くの仲間を背に
和泉 今回、参政党が都議会に入った。自民党の代表質問を聞いていると、ほとんどが知事の所信表明をなぞる中身だったのに、唯一、「自民党らしさ」を出したのが外国人攻撃でしたね。都議会でも、排外主義に流れる動きを感じました。
里吉 参政党などの質問で、今回は本会議場では、そこまで露骨な外国人差別の発言はありませんでした。ただ、委員会での発言は、ひどかったですね。一方、良かったのは私たちの質問に知事が、国籍という言葉も入れて、多文化共生を進めると答弁したことです。
和泉 その答弁を、本会議で取ったのは、大きいよね。だったらなぜ、朝鮮学校に都が補助金を出さないのかとか、いろんな問題は残るにしても。知事答弁といえば、もう一つ、感じたのは、会派による答弁の格差です。
里吉 おしなべて知事答弁は、他の会派に対しては、テーマをあいまいに聞いただけでも、「重要な課題で、現状はこうで、こういう対策をしたい」みたいな厚みのある答えが返ってきます。
和泉 他党の質問には長々と答弁するのに、共産党の質問に対しては、こちらが聞きたいことにも答えない。それを徹底していますよね。
里吉 若い人たちが、都議会の傍聴ツアーを組んでくれたんです。公明党の質問に間に合って、それを聞いた後に私の質問を聞いたという人が、怒っていましたね。公明党への答弁と、共産党への答弁が違いすぎる、と。こうした答弁の格差の問題も、私たちの議会改革の提案で取り上げました。
―最後に、新幹事長の決意と、前幹事長からのエールを。
里吉 和泉さんは同期で、幹事長をやる姿を見て大変さはわかっていたので、私が幹事長となったときは、頭が真っ白になりました(笑)。でも、都議会で共産党しか言わないことってたくさんあるし、後ろに多くの仲間がいるからこその幹事長だと思って、頑張ります。
和泉 私の時は、幹事長就任直後にコロナ禍が始まったし、どの期も違う困難がありますよね。排外主義とのたたかいなど新しいテーマも加わる中で、ぶれずに筋を通す共産党の役割を発揮してほしい。期待しています。
