意見表明の機会を与えて 外苑再開発公聴会 抗議の中、打ち切り

 神宮外苑再開発(東京都新宿区・港区)の一環である秩父宮ラグビー場(港区)の移転・建て替え計画で、東京都が10月23日に開催した公聴会の開き方を巡って紛糾し、意見を述べるために待っていた公述人5人が残っていたのに、都は一方的に閉会を宣言しました。公述人や傍聴者らは翌24日にかけて厳しく抗議しました。

告示後5日で申請締切
 建て替え計画は、同ラグビー場の観覧席のほか商業施設や博物館、駐車場などを含め延べ床面積約7万2000平方メートルに及びます。予定地は第2種中高層住居専用地域で、土地の用途制限に触れるため本来は建てられません。ただ、建築基準法で知事が特別に許可した場合は除かれます。公聴会はその許可の可否について住民の意見を聞くものでした。
 ところが都は、公聴会の開催告示を15日に都公報などで告知しただけで、わずか5日後の20日に公述人の申請を締め切りました。その際、意見要旨を提出する必要もありました。都は37人を公述人として認め、そのうち19人は仕事などの都合で参加できませんでした。

公聴会の再開催を
 この告知後、わずかな期間で開催する都のやり方を問題視した男性が、自らの公述後、「都規則に基づき公聴会の延期を事前に申し入れたが説明はなかった。仕事の都合で来られなかった人や、そもそも開催を知らずに公述できなかった人がいる」として、改めて公聴会を開催するよう要求。都側は回答しないと繰り返し、理由の説明も拒否しました。
 都側が発言席に残る男性を無視して、後続の公述人に発言を促しましたが、残る5人とも「男性の主張は正しい。質問に答えるべきだ。それまで待つ」と都側に求めましたが、都側は答えませんでした。
 やりとりは長時間に及びましたが都側の対応は変わらず、「公述を促したが公述しなかった」として閉会を宣言。公述を控えていた石川幹子・東京大学名誉教授は「市民の権利を一方的に奪うのですか。改めて意見をのべる機会を与えていただきたい」と抗議しましたが、都側は「終了したのでお帰りください」と受け入れませんでした。
 公聴会には鹿島建設や三井不動産、東京建物などの事業者も出席。都民や専門家らが公述人として意見を陳述。ほとんどの人が認可に反対しました。
 23万6000人以上の樹木伐採反対・再開発計画見直しを求めるオンライン署名を集めた米国人経営コンサルタントのロッシェル・カップさんは「大規模施設の許可は、住環境保全を目的とする用途地域制度の根幹を揺るがすもので、悪しき前例となる。新ラグビー場の規模と外観は、神宮外苑の歴史的環境と調和していない」と発言。
 「神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」の代表、加藤なぎささんは「遊興施設として使用が見込まれている以上、静かな暮らしと学びの場である文教地区にふさわしくない恐れがある」と指摘。厳正な判断のために教育、建築、環境アセス、景観などあらゆる分野の専門家を交えた対話の場がもたれるべきだと主張しました。
 小池百合子知事は、24日の記者会見で「公聴会は適切に行われ終了した」と、抗議の声を意に介しませんでした。多数の樹木伐採などに強い批判が出ている同再開発を巡り小池知事は、「都民の理解と共感を得るように丁寧に進める」と繰り返してきただけに、知事の姿勢が問われます。

都議連が抗議
 都議会外苑議連は24日、「そもそも多くの住民が公聴会の開催すら知らされず、意見を述べる権利を奪われている」として抗議し、公聴会を再度開くよう小池知事宛てに要請しました。日本共産党から大山とも子、尾崎あや子、原田あきら各都議が参加しました。

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