リニア不安爆発

区道最大13㌢隆起 工事中断 東京・品川

 リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が行われている東京都品川区で、周辺の区道が最大13㌢隆起していることが28日、JR東海などへの取材で分かりました。同社は工事を中断し、隆起との因果関係を調査しています。

 品川区は同日、JR東海に対し、区道が隆起した原因の究明や、原因判明までの工事中止を要請しました。

 JR東海などによると、隆起した区道は、JR山手線の大崎駅から南東へ約600㍍に位置します。リニア工事の現場からは約5㍍離れています。

 JR東海は2021年10月、品川区で「第一首都圏トンネル」の掘削工事を開始しました。品川区は工事開始以降、周辺の目黒川で気泡が発生するなど、区民から不安の声が多く寄せられていると指摘。同社に対し、区民への丁寧な説明も求めました。

総工費11兆円に
隆起した部分。ひび割れが横断歩道の向こう側まで続いている=29日、東京都品川区(「しんぶん赤旗」提供)

 JR東海は29日、品川(東京都)~名古屋駅(愛知県)間で工事を進めるリニア中央新幹線の総工事費について、2035年開業の場合11兆円になるとの見通しを発表しました。総工事費は18年3月時点で5・5兆円、23年3月時点では7兆円の見通しを立てており、年々増加しています。

 同社の発表によると、23年の見通しから4兆円増の理由は、物価高騰の影響、難工事への対応などとしています。特に難工事については、当初の想定よりも脆い地盤での山岳トンネル掘削や品川・名古屋間の両駅での工事計画の見直しによるとしました。

 また、静岡県内でのトンネル掘削工事の着手の見通しが立たず、35年開業とするのは試算のための仮置きだとしました。

周辺住民ら 説明を 究明を 中止を

 隆起が判明した翌日の29日、東京都品川区の現場にはカラーコーンが立てられ、常時警備員が監視していました。現場は、高層ビルやマンション、鉄道線に囲まれた丁字路の交差点。隆起した部分から横断歩道を渡るように一直線にアスファルトがひび割れています。通行人はスマホで隆起した部分を撮影していました。

 交差点を通りかかった付近に住む浅川幸子さん(71)は、リニア工事が行われていること自体は知っていたものの、どこをどう掘っているかは知らず、昨日のニュースで隆起を知ってびっくりしたと言います。「大深度の工事とはいえ、実際にこうやって影響がある。行政は何が行われているのか区民にもっと説明してほしい」と話します。

 「リニア新幹線の中止を求める品川区民の会」の新美一美共同代表(75)は、外環道工事での陥没(調布市)やリニア新幹線工事現場付近にある目黒川での気泡発生(品川区)など大深度地下の工事で地上にも影響が出ていることに触れ、今回の隆起もリニア工事の影響ではないかと指摘します。

 新美さんは「JR東海はまず原因究明し、工事との関係が分かるまで掘削を止めてほしい。また、担当者と市民が直接やりとりする住民説明会を開くべきだ」と強調。大深度地下での工事は地上に影響がないとして住民に知らせなくてよいとする大深度地下法による工事で、市民の生活と財産が脅かされていると述べ、区議会も危険性を知ってほしいと述べました。

 JR東海が同日、リニア新幹線の総工事費が4兆円増の11兆円となると公表したことにも触れ、「これだけ費用がかかり、周辺地域にも影響を与えることを考えると計画をここでストップすべき」だと話しました。(西森知弘)

(「しんぶん赤旗」2025年10月30日付より)

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