インターネットやスマートフォン、AI(人工知能)やクラウドの活用など、日常生活やビジネスで欠かせない存在となったデジタル技術。これを支えるのが膨大な情報処理を担うデータセンター(DC)で、とくに首都圏で建設計画が相次いでいます。一方で、莫大な電力消費や二酸化炭素(CO2)排出、排熱など大きな環境負荷が伴い、各地で事業者と住民との摩擦が激しくなっています。その要因の一つが住民の不安に寄り添わない事業者側の姿勢です。日野自動車の工場跡地(日野市、約11万4000平方㍍)で三井不動産が進めるDC計画もその一つ。日本共産党の山添拓参院議員は11月29日、現地を視察し、地元住民と懇談しました。

山添議員ら市民と懇談
「日野市は『緑と清流のまち』と言われるが、DCは火災の危険や日影、排熱による気温上昇、低周波など住民にさまざまなリスクがある。『新しい公害』ということでは困る」。「巨大データセンターから住民の暮らしと環境を守る市民の会」の山崎康夫共同代表は、語気を強めました。
山崎さんは25年前にこの地域に引っ越し、ずっと住み続けたいと思っていました。それが昨春、突然DCの建設計画が持ち上がり、驚きました。計画地とは道路を隔てて接しています。周辺は日野自動車の社宅だった所で木造戸建て低層住宅が並びます。その目の前に高さ最大72メートル、幅91メートル、奥行き150メートルなどの巨大な建物を3棟建てる計画です。
市民の会のシミュレーションでは、近くの公園で毎朝6時半に行うラジオ体操は、夏至のころは日陰で、8時半にならないと日が当たらないという結果が出ています。
住民はこの日影問題のほか、DCの冷却用に外周全域に設置される室外機から発生する低周波音による健康被害、冷却用に使用する大量の冷却水供給による湧水の枯渇や地盤沈下などのリスク、火災発生時の有毒ガスや延焼などの大惨事の可能性を心配します。実際、DCの火災事故は海外では多く、多摩市の三井不動産の開発物件で建設中の18年に死亡5人、重軽傷42人という火災事故が起きています。
これらの環境問題以外に三井不動産は、消費電力量やCO2排出量などについて秘匿性を理由に公表を拒んでいます。
日野市はこの間、「気候非常事態」を宣言し、「気候市民会議」を設置。
市民会議の提言を踏まえ、CO2排出削減の目標・計画を定めてきました。
市民の会などの推計では、総受電容量は205メガワットで、日野市全体の使用電力79メガワットワットの2・6倍、CO2の推計排出量は873キロトンで30年までの市の削減目標の2倍以上に相当します。山崎さんは「脱炭素を目指し省エネに取り組んでいる日野市民の意思に反する」と指摘します。
排熱の影響も周辺地域で2〜3℃、300メートル離れた市民病院で1・5℃弱の温度上昇となるシミュレーション結果が出ています。山崎さんらは温暖化で市内の熱中症搬送者が今年は120人に及び、さらに深刻化するのではないかと危惧しています。
各国では規制も
住民との懇談には山添拓議員のほか、清水とし子都議、ちかざわ美樹、わたなべ三枝、中野昭人の各日野市議、ながせ真由美、成瀬厚の両市議予定候補が同席しました。
参加した住民は「低層の住宅地に隣接し、300メートルも建物が続く」「電力消費、CO2(二酸化炭素)排出、排熱などの情報が示されない」と不安を語り、「住宅地への建設は規制を」との要望も強く出されました。
山添議員は「諸外国では規制も進んでいる。国内でも大量のCO2排出量の増加は行政の施策と矛盾するもので、政治の姿勢が問われる」と述べ、「『秘匿性』を理由に、建設に伴う影響の具体的な数値が明らかにされないことは問題だ」と語りました。
山添議員らは、別の事業者がDC建設を計画する同市日野のエプソン工場跡地一帯も視察。住民から実情や要望を聞きました。
住環境守る市政へ
市議選の争点に
日野市の「まちづくりマスタープラン」では、工業系地域の土地利用に関して「周辺環境と調和のとれた」「統一感のある景観」を求め、そのために「周辺住民の意向を踏まえながら地区計画を作成・提案することが望ましく」とあります。
大坪冬彦前市長も当初は「地区計画」の導入を求めていましたが、市は「地区計画は不要だと判断している」と態度を変えました。
来年2月には市議選があります。
日本共産党市議団は「いま市政には日野の環境・まちづくりのルールを守り、確固とした指導・対応を貫くかが問われている」として、良好な住環境を守り、気候危機対策を実行する市政に変えるために全力をあげるとしています。

