卒業式や入学式の「君が代」斉唱時に起立斉唱しなかったとして処分を受けた都立学校の現職・元職の教員15人が、処分の取り消しを求めた「東京『君が代』裁判第5次訴訟」で、東京地裁は7月31日、2人に対するのべ6件の減給処分を取り消す判決を言い渡しました。戒告処分については、訴えを退けました。

「結論ありき」弁護団批判
原告らを対象とした26件の処分のうち、10件は2014~17年の卒業・入学式における不起立に対するもの(減給のべ6件、戒告のべ4件)。このほか16件は、2次~4次の「君が代」裁判で、減給処分を取り消された原告に対し、都教委が改めて2013年から20年にかけて戒告処分を下した「再処分」です。処分は、憲法の定める思想・良心の自由を侵害するとして、2021年3月に提訴しました。
清藤健一裁判長(西村康一郎裁判長代読)は、起立斉唱の職務命令について、「思想良心に対する間接的な制約になる面はある」としつつ、教員に対する国歌斉唱の義務付けは「必要性・合理性が認められる」として、憲法違反にはあたらないとしました。
そのうえで、原告2人が受けた6件の減給については、処分として重すぎ、裁量権を逸脱して違法だとして取り消しました。一方、戒告処分の取り消しは、再処分のものも含めて、すべて棄却しました。
重さを訴えたのに
判決後の報告集会で、戒告を取り消されなかった原告は、「戒告処分を受けたことで、都立学校での再任用の道も閉ざされた。戒告がいかに重い処分なのか、裁判長に訴えたが、どこまで受け止めてくれたのか」と疑問を呈しました。
2013年に受けた減給処分が取り消された後の再処分の取り消しを求めている原告は「20年以上前の処分のために、裁判をたたかっている。処分を受けた後は、3年間通した担任を持たせてもらえないなど、不本意な教員生活だった。再処分の問題点を指摘した研究者の意見書と陳述など、法的には勝っていると思っていたので残念だ。高裁で取り消させるよう頑張りたい」とあいさつしました。
弁護団は、「最高裁判決の文章をそのままなぞっており、従来の最高裁の判断の範囲で、判決を出そうという結論ありきの判決だ」「今回、初めて『再処分』が訴訟の対象となり、その問題点を指摘したが、他の戒告とひとくくりに論じている。我々が提示した論点に答えていない」と批判しました。
原告団・弁護団は同日、声明を出し、判決の不十分さを指摘しながらも、減給処分はすべて取り消すなど「都教委の暴走に歯止めをかける判断」だとして、「都教委に国家の起立斉唱の義務付けに対する反省と撤回を強く求める」と表明しました。
他の原告は報告集会で、「以前の卒業式は、子どもたちとの最後の授業として、生徒の創意工夫が発揮されていた。それが、『君が代』強制のために、まったく変わってしまった」「判決を目前に裁判長が異動になり、最高裁から来た裁判官が判決を書いた後に、また異動になって最高裁に戻っていった。こんな異常なことがあるのか。控訴審で、日本に民主主義があることを示したい」などと発言しました。