2025都議選 東京の医療と介護 危機

赤字・人手不足・休業多発 共産党、都独自支援迫る

大本には国の報酬抑制策 「自治体の役割果たせ」

 いま、東京都の医療と介護が危機です。民間病院の過半数が赤字に陥り、医療機関の閉院が相次いでいます。重症患者を24時間体制で受け入れる2次救急医療機関も、診療休止になる例も生まれています。危機の大本には、診療報酬・介護報酬を抑えてきた国の責任があります。日本共産党は、国政では自公政権の医療・福祉切り捨てに反対するとともに、都に対しては「住民の福祉の増進」(地方自治法)という自治体としての役割を果たし、支援するよう求め続けています。13日に告示される都議選では、国の悪政から都民を守る防波堤となる都政をつくるかどうかが問われます。

医療 医師会提起受け「入院基本料」創設訴え

総額321億円の臨時措置が実現「継続・充実を」

 2024年9月10日。東京都医師会の尾﨑治夫会長は、記者会見で「東京の医療、病院が危機におちいっている」と医療現場の窮状を訴えました。説明にあたった土谷明男副会長は、21年度から赤字の病院が増加し、23年上半期(4月~9月)は49・2%、一般病院だけでは51・6%にものぼるという、東京都病院協会の調査を提示(グラフ参照)。

 病院が医療を行うための費用は増えているものの、診療報酬がそれに見合った額より低く抑えられているとも発言しました。「このままでいけば、つぶれる病院が非常に多く出てくる」と危機感を示し、入院患者を受け入れた医療機関に対して財政支援する都独自の「入院基本料」の創設を訴えたのです。

 大坪由里子理事は、赤字病院が増えている原因について、コロナ禍による経営環境悪化や建築費・物価の高騰、人手確保の費用増にあると言及。24年だけで複数の病院が閉院・診療停止に追い込まれている実態も紹介しました。

 さらに医療現場では、労働者の賃下げが余儀なくされて退職者が続出する事態になっています。医療危機は、すべての都民の命に直結する大問題です。藤田りょうこ都議(大田区)は、4年間で14回にわたる東京民医連の対都要請に同席。党都議団としてコロナ禍の時期からくりかえし、都が独自に医療機関へ財政支援することを働きかけてきました。

質問する、とや都議=2024年9月25日、東京都議会(しんぶん赤旗提供)

 前出の都医師会の記者会見直後の都議会代表質問(同25日)で、とや英津子都議(練馬区)が、この問題を取り上げました。赤字病院が増加しているという東京都病院協会の調査結果を提示。都医師会が入院基本料の創設を強く求めていることを紹介し、「ただちに具体化すべきです」と迫りました。都は「必要に応じた財政支援をしている」と述べるだけで正面から答えませんでした。

 さらに日本共産党は、24年12月に「予算編成に対する提案要求」(25年度)で、都に「東京都独自の入院基本料を創設」を求めます。

 そして小池都政は、25年度予算で、同医師会が求めていた「入院基本料」(166億円)を含む財政支援・総額321億円を計上しました。

 この財政支援策について、東京都病院協会の猪口正孝会長は会報誌で、入院患者1人あたり1日580円支払われることにふれて「非常にありがたい」「ものすごく大きな一歩」と高く評価しています。

 しかし、現状は「入院基本料」を含む総額321億円の都の支援は、1~3年の臨時措置です(入院基本料は1年のみ)。共産党の里吉ゆみ都議(世田谷区)は25年3月19日の都議会厚生委員会で、「入院基本料」を26年度以降も継続・充実することを検討するように求めています。

介護 訪問事業所の直接支援に小池都政は背

職員賃上げに補助 都民運動と力合わせ実現

医療・介護・福祉の充実を求めるナースウエーブ宣伝に参加する福手ゆう子都議(左)と藤田りょうこ都議(右)=5月15日、新宿駅前(しんぶん赤旗提供)

 介護事業は、東京都でも深刻な人手不足やヘルパーの高齢化、事業所の閉鎖などで危機が広がっています。そのうえ、2024年4月に国が訪問介護の基本報酬を引き下げた結果、崩壊寸前となっています。

 厚生労働省が今年3月31日に公表した調査結果では、訪問介護事業所の6割近くが報酬引き下げ前より減収になっていることがわかっています。この間、日本共産党都議団は、都内各自治体議員と一緒に同事業所への聞き取りやアンケートを実施。都議会では実態を示し、都独自に支援するよう求めてきました。

 北区では、訪問介護報酬が引き下げられた24年4月に、党区議団が中小49事業所を訪ねてアンケート調査を実施しています。23事業所が対応し、そのうち約8割の事業所が「とても苦しい」「苦しい」と回答。すでに事業所を廃止したのが2カ所、さらに「事業廃止を検討している」との答えが2カ所あり、厳しい経営実態が浮き彫りになりました。

 今年2月には、曽根はじめ都議と、せいの恵子都議予定候補(北区・前区議)が、あらためて区内事業所を訪問。すると、前回「来年までの継続は困難」と話した事業所が、事業閉鎖を決めて事務所を片付けている最中でした。

 「想像以上に大変な状況でした」と曽根都議は振り返ります。「事務量が増えて人を雇いたいけどその支援はなく、逆に報酬は切り下げられるなら事業所はやっていけない」と、責任者は怒りを込めて語ったといいます。他には「この10カ月で減収100万円」という声もありました。

 この実態を、曽根都議は小池百合子都知事にぶつけます(3月13日の予算特別委員会)。

 「訪問介護を必要とする人が増えるなかで、こんな事態を放置すれば家族介護の負担は増大するし、介護離職もなくならない」「今こそ都として、訪問介護事業所の経営を抜本的に支えるための支援が、さらに必要ではないか」

 しかし、小池都知事は答弁に立たず。担当局長が「国が定める介護報酬等により運営されることが基本」「国に対し、繰り返し要求しております」と同じ答弁を続けるだけでした。

訪問介護事業者から話を聞く清水とし子都議(中央奥)=2024年11月、東京都日野市(しんぶん赤旗提供)

 世田谷区では昨年、住民と共産党が一緒に運動を進め、訪問介護事業所1カ所あたり88万円の支援を実現しています。清水とし子都議(日野市)は昨年12月、都議会本会議質問で、この例を示し「都としても(介護)事業所への直接的な支援を行うべきではないか」と迫りました。

 共産党都議団は介護職員の賃上げ支援について、くり返し議会で提案し、都民の運動と力をあわせて実現しました(24年度から実施)。曽根都議は、今回の都議選で自身の議席を引き継ごうと立候補した、せいの恵子予定候補が介護現場で働いた経験があることにふれて、「介護の現状を改善するために最適の人」と力説します。「小池都政は介護など困難を抱える高齢者への政策が特に弱い。そこを変えてほしいですね」


(「しんぶん赤旗」2025年6月2日付けより)

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