公園で進むトンネル工事
東京都が豪雨災害対策として都内各地で進める地下調節池の整備計画で、地元住民の不安や反発を招くケースが相次いでいます。石神井川上流地下調節池工事もその一つ。工事が始まった武蔵野市の都立武蔵野中央公園の現場を訪ねました。

丁寧な説明を求め
住宅地から片側一車線の道路を渡り、南口から公園に入ると、目の前に広大な原っぱが広がります。公園の広さは約11万2000平方メートル。東京ドームのグラウンドが約8面入る「原っぱとスポーツ広場」や「バーベキュー広場」を備え、千本近い樹木に囲まれ、自然豊かな市民の憩いの場です。
地下調節池(ことば)の工事は、公園の南側8500平方メートルを使用。立坑を掘るための施設として長さ100メートル、幅75㍍の敷地を高さ8メートルの塀で囲い、トンネル施工時には高さ22メートルの防音ハウスも設置する計画です。公園ではすでに「原っぱ広場」の手前に柵が設置され、閉鎖中の看板が掲げられていました。
都によるとトンネルは延長約1・9キロメートル、内径14・3メートルで、同公園や青梅街道などの地下約30メートルの深さに整備します。トンネルを掘るための立杭工事と調節池を管理するための施設を武蔵野市側の同公園と西東京市側の2カ所に設置します。
住民でつくる石神井川上流地下調節池の「工事を考える会」代表の太田尚之さんは、「公園は多くの人が住む住宅地に囲まれています。住民の生活や安全に大きな影響を及ぼす工事なのに、住民の疑問や不安に十分に応える説明会ではありませんでした」と憤ります。
都がこれまで行った「説明会」は、多くがオープンハウス形式で、工事担当から治水工事としての調節池工事の意義や工法の説明が主で、公園での工事については住民が納得できる説明はなかったと言います。
公園南側の道路に隣接する地域に住む太田さんは「日照やシールド工法のトンネル掘削工事による振動、陥没も心配です。公園は戦時中、ゼロ戦などのエンジンを製造した中島飛行機製作所の巨大軍需工場の跡地で、米軍の大規模な空襲による不発弾の心配もあります」と不安を語ります。
他にも大型の工事車両の出入りが多くなることで交通事故が心配されるが、資料にある交通整理員の配置だけで安全が確保されるか分からないとも言います。
市民に寄り沿い市は都に対応を
会員で元保育士の星友子さんは「周辺には園庭のない保育園も多く、公園は子どもたちの遊び場になっていました。今は工事が行われる周辺には立ち入ることができなくなりました。武蔵野市は、保育施設などに説明するよう都に求めてほしい」と言います。
市議会は、工事について徹底した安全対策を求める陳情を2022年6月議会で採択し、都に意見書も提出しています。
会は6月、工事開始を受けて、改めて市に要望書を提出。▽安全な場所での子どもの遊び場の確保▽全面的な不発弾調査の再実施▽工事車両の生活道路の使用禁止▽工事開始は通学時間帯を避ける▽作業時間は午後6時30分までに▽都に丁寧な住民説明会の開催を求める―などを求めました。太田さんは「市は主体的に市民の住環境を守る取り組みを強めてほしい」と訴えます。
地元で活動する日本共産党の橋本しげき市議は、「安全対策や工事の生活環境への影響について配慮すること、ていねいな住民対応を前市長は都に要望しており、現市長はその立場に変わりはないと私の質問に答弁しています。市長として市民の声に寄り添い、都にしっかり働きかけるべきだ」と話しています。
ことば
地下調節池
台風や集中豪雨など大雨によって河川の水位が上昇した際、川の水があふれ出る前に河川から水を引き込んで地下深くのトンネルや巨大空間に一時的に溜める施設です。
