都議会は12月9日、本会議を開き、小池百合子知事の所信表明に対する代表質問を行いました。日本共産党からは斉藤まりこ都議(足立区選出)が立ち、「生活できる東京」を目指す5つの柱、①物価高から暮らしを守る政策②自己責任・市場原理優先の政治を終わらせ、公共を取り戻す③すべての人の権利尊重④都市政策の抜本的見直し⑤高市政権が進める戦争準備への反対―を提案し、実現を求めました。
物価高から暮らし守れ

姉妹都市NY市長と交流を
斉藤都議は東京都の姉妹都市ニューヨーク市で民主的社会主義者の市長誕生に触れ、小池知事に市長との交流を提案しました。
新しく市長に就任するのは「生活できるニューヨーク」「公共を取り戻す」と掲げたゾーラン・マムダニ氏。家賃値上げの凍結、無料の公共交通、最低賃金4500円への引き上げなどを公約し、外国人差別に反対して「恐怖と憎悪」ではなく「連帯と希望」をと訴えました。
知事は答弁せず、佐藤章政策企画局長が「様々なレベルで交流や連携を実施していく」と答えました。
働く人から搾取構造変革が必要
大企業の利益は13年間で約3倍、内部留保は581兆円と過去最大となる一方、労働者の実質賃金は増えていません。斉藤都議は、働く人は搾取され、富が一部富裕層に集中する社会構造を変える必要があるとして、知事の見解を問いました。
小池知事は「内部留保や役員報酬、株主配当については、企業それぞれの経営判断に基づくもの。成すべきは強い経済の創出によって持続可能な発展につなげること」だと答え、格差と貧困を拡大する社会構造を肯定する立場を示しました。
スピード感ある中小企業支援を
高市早苗首相が11月14日の参院予算委員会で、最低賃金1500円の目標を事実上撤回する発言をしたことについて、斉藤都議は「最低賃金の大幅引き上げを首相に求めるべきだ」と要求。物価高騰の中で中小企業の賃上げ支援の重要性を強調し、現在の都の支援制度が複雑で時間がかかりすぎると指摘。岩手県の例を挙げ、シンプルで迅速な賃上げ支援制度の導入を求めました。
斉藤都議は、都が補正予算案に賃上げ支援を盛り込んだのは重要としつつ、「全額国費であり、生産性向上が主な目的だ」と指摘。都の賃上げ支援事業の一つである「魅力ある職場づくり推進奨励金」は、申請から支給まで平均1年7カ月かかり、24年度に応募した企業への支払い実績はゼロ件だと述べ、「スピード感が全くない」と批判。
岩手県などでは申請から4週間で支給し、2年間で約5万人の賃上げを支援している実績があると述べ、知事の見解をただしました。
田中慎一産業労働局長は「賃上げの実効性の確保と奨励金の速やかな支給の両立を図る方策について検討を進めている」と答弁しました。
住宅費の負担軽減策を提案
東京23区の新築マンション平均価格が1億5300万円、家族向け平均家賃が24万円を超えています。斉藤都議は「所得の約4割が家賃に消えている。家賃・住宅費の高騰は周辺区や多摩地域にも広がりつつある」と指摘。家賃助成の実施や再開発や投機的な転売の規制、都営住宅の増設などを提案。知事の100億円出資するアフォーダブル住宅政策では年間300戸しか供給されないと批判しました。
山崎弘人住宅政策本部長は住宅政策について、「空き家対策や既存住宅の流通促進など様々な取り組みを推進している」と答えただけでした。
教育費の軽減支援を求める
足立区は保護者の声に応え、小中学校の副教材費と修学旅行費の無償化を実施し、来年度から公立・私立とも入学準備金10万円の支給を開始します。
斉藤都議はこうした教育費の負担軽減が23区内に広がっているとし、「都内全ての子どもに豊かな教育を保障するために学用品や修学旅行費の無償化などの支援を求めました。
また、国の高校授業料無償化拡充により軽減されると見込まれる都の支出約500億円を活用した都立学校の教材費無償化などを提案しました。
坂本雅彦教育長は教育費への支援について「基本的には設置者(区市町村)がそれぞれの判断で対応するもの」と従来の答弁を繰り返しました。
公共料金の軽減を
斉藤都議が代表質問
斉藤まりこ都議は代表質問で、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の大幅な値上げ予定を指摘し、都による財政支出での負担軽減を求めました。都の試算によれば、区市町村の独自支援がない場合、今年度より一人あたり約1万2000円増、19万2000円に。後期高齢者医療保険料も同約1万2000円上がる案が出ています。
また、夏に実施された水道基本料金無償化の好評を受け、冬季の実施や水道料金の10%引き下げを提案しました。あわせて国の重点支援地方交付金は水道料金の負担軽減への支援に使うことができるとの答弁がありました。
予算6割のアプリ
多くの都民を排除
物価高騰対策の補正予算案について「大事な内容も含まれているが、都民生活の深刻な現状と、都の財政力に照らして規模も中身も貧弱」だと批判。さらなる追加支援を求めました。
補正予算案の物価高騰対策の6割以上を占めるのが、「東京アプリ」に1万1000円分のポイントを付与する事業です。このポイントを得るには、スマホにアプリをダウンロードして、マイナンバーカードと連携しなければならず、斉藤都議は「はじめから多くの人を排除することになる」と指摘。「東京アプリの450億円は、支援を必要とするすべての人に届く物価高騰対策に充てるべきだ」と迫りました。
山下聡財務局長は「より多くの都民に参加いただけるように取り組む」と答えました。
医療・介護の支援
都の調査で都内病院の7割が赤字で、急激な物価高騰が病院運営を圧迫していることが明らかになりました。斉藤都議は、診療報酬の大幅引き上げを国に求めたことを評価しつつ、今年度実施した166億円の民間病院への支援が来年度予算の局要求にはないとし、民間病院への支援継続や公立病院への財政支援拡充を求めました。
また、介護職員減少問題に触れ、ケア労働者全般の賃上げと処遇改善の必要性を訴えました。山田忠輝保険医療局長は診療報酬引き上げについて「引き続き国の動向を注視していく」と答えました。
英スピ中止を
斉藤都議は都立高校入試に点数を加算する英語スピーキングテスト(11月23日実施)で会場に入れず外で1時間待たされたなどのトラブルやセクハラされたといった人権侵害事例を指摘し、構造的な欠陥があるとして中止を求めました。
坂本教育長は英スピテストについて「毎回適切に実施されている」と強弁。例示のトラブルは「一切確認していない」と、あたかもトラブルが起きていないかのような答弁をしました。
また、都立夜間定時制高校6校の生徒募集停止決定について、2万5000人分の請願署名が教育委員会で報告も審議もされなかったことを批判し、募集停止の撤回を求めました。
女性の権利尊重
斉藤都議は「女性活躍条例」案について、女性の権利の視点がなく、女性を経済活動の道具としてみているのではないかと批判しました。また、タイの少女が性的行為を強制された事件に触れ、東京における子どもへの性搾取の実態調査や買う側の処罰、被害者支援の必要性を訴えました。
同条例案は「東京の持続的な発展」のための条例だとされ、小池知事は「未利用エネルギーの最たるものが女性だ」と繰り返し発言しています。斉藤都議は「人を経済や都市活動を動かす道具としか見ていないのではないか」と指摘し、「女性の権利の尊重こそ必要だ」と強調しました。
小池知事は条例案について「雇用・就業分野で女性が活躍できる環境整備を一層進めるために提出したもの」と答弁。「女性の権利」への言及はありませんでした。
再稼働止めよ
新潟県知事が原発再稼働を容認する判断をしたことについて、小池知事は「非常に重みのあるもの」とコメントしました。
斉藤都議は新潟日報のアンケートで県知事の判断を支持しないと答えた人が78・4%に上ったことを挙げ、「都は東京電力の大株主。再稼働を止めるために力を尽くすべきだ」と批判しました。
各地で続く巨大データセンター(DC)建設について「知事は『CO2排出実質ゼロ』を目指すと言いながら、莫大なCO2を排出するDCを推進する。矛盾の極みだ」と指摘。条例によるDCの立地や規模の規制や、環境アセスメントの対象とすることなどを求めました。
須藤栄環境局長はDCを環境アセスの対象にすることについて「いかなる法令でも内容等が定義されておらず対象に加えることはできない」としました。
降下訓練中止を
横田基地でのパラシュート降下訓練による民家への米兵落下事故や、児童館屋上へのパラシュート部品落下事故について「住民の命にも関わる重大な事故だ。厳しく抗議し、危険なパラシュート降下訓練の中止を求めるべきだ」と述べ、米軍基地撤去を求めました。
谷崎馨一都技監は「降下訓練における場外降着は、一歩間違えれば人命に関わる重大な事故につながりかねない」と述べたものの、再質問にも遺憾や抗議の表明はありませんでした。
また、高市政権が非核三原則を見直そうとしていることに対し、唯一の戦争被爆国として核なき世界を目指すべきだと主張しました。小池知事は「核の脅威に対する都民国民の不安を踏まえまして、国にしっかりと対応していただきたい」と述べるにとどまりました。

