都議会は9月30日、本会議を開き、知事の所信表明に対する代表質問を行いました。開会中の第3回定例会は改選後初で、代表質問に立った日本共産党の里吉ゆみ都議は、「物価高騰で暮らしの厳しさが増している」として、選挙の最大公約として掲げた物価高騰対策の実現を知事に求めました。

補正予算編成せず
ひとり親家庭の支援団体が行った7月のアンケート調査では、1日2食以下の子どもが41%と昨年比7ポイント増、必要な米が買えないと答えた世帯は66%、同25ポイント増でした。「空腹を我慢している」「育ち盛りの子どもの体重が減っている」などの声も寄せられました。
こうした深刻な状況がある中、全国22府県が物価高騰対策や賃上げ支援などを盛り込んだ補正予算案を9月議会に提出しています。小池知事は補正予算案を編成・提出していません。
里吉都議は所信表明で都民生活を支えると言いながら、中身は乏しいものだと批判した上で、具体的な物価高騰対策を示し、実現を迫りました。
東京の今年の最低賃金引き上げ率は全国最低だとし、「もっと賃上げしたいが、経営がギリギリ」といった飲食店経営者の声を示し、賃上げした中小企業への直接支援は全国9県にまで広がっていると紹介しました。
岩手県などは賃上げのみを要件として、申請から4週間程度で支援金が支給されています。一方、都の制度は賃上げ以外にも専門家の派遣を受けるなどの支給要件があります。手続きが煩雑となり、支給にも1年以上かかります。
里吉都議は支援金を迅速支給するため、「賃上げのみを要件とする中小企業への賃上げ応援助成制度の実施を」と求めました。共産党は「中小企業賃上げ応援助成金条例」案を提出しています。
田中慎一産業労働局長は、都の制度について「適切なもの」と答弁し、制度改善への言及はありませんでした。
里吉都議は▽消費税減税とインボイス制度廃止を国に求める▽水道料金の基本料金無償化の延長▽国民健康保険料の引き下げ、子どもの均等割を18歳までゼロ円―を提案しました。
高騰の23区火葬料
原純子都議(当時)が都議会で以前取り上げた23区の火葬料高騰が、大きな問題になっています。今回の代表質問では全会派が代表質問で取り上げ、マスコミも注目しました。23区の火葬場は9カ所のうち公営は2カ所で、残る7カ所のうち6カ所は同じ株式会社が運営。2021年以降火葬料の値上げがくり返され、最低額は9万円と約3年で1・5倍になっています。
一方、多摩地域では無料か低額です(表)。厚労省の説明によると、火葬場の経営主体は「永続性と非営利性の確保」の必要から、「原則として市町村等の地方公共団体」で、全国の97%は公営です。
里吉都議は民間事業者への指導監督を担う区側と連携して料金に関して国に要請を行うとの都の新たな方針を評価。その上で「民間事業者を値下げへ誘導するためにも、都立葬儀所の火葬料を大幅に引き下げるべきだ」と主張しました。
花井徹夫都建設局長は「受益者負担の適正化を図る」と答弁し、都立葬儀所の値下げには言及しませんでした。里吉都議は「民間の引き下げを求めるのに説得力がない」と批判しました。
中小企業の賃上げを応援
共産党都議団が条例を提案

日本共産党都議団は開会中の第3回定例会に、中小企業の賃上げ応援条例案を提出しました。1日、都庁で記者会見し、説明しました。
条例案は中小企業が労働者の賃金を時給70円以上引き上げた場合に、従業員1人当たり15万円、1社最大20人分300万円の助成金を支給するもの。3年間の緊急事業として行い、財源は約300億円を見込んでいます。
会見で藤田りょうこ都議は、物価高騰で10月にはさらに3000品目以上の値上げが予定され、家計負担が増大している中、「物価高騰を上回る賃上げの実現は待ったなしだ」と述べました。
東京地評の調査で「都内で普通の生活を送るには時給2000円が必要」とされたことを示し、「東京都の最低賃金が過去最高の引き上げで時給1226円になったとはいえ、十分とは到底言えない」と指摘。一方、中小企業からは「賃上げしたいが経営が苦しい」という声が寄せられ、「賃上げの原資の確保に窮している」と指摘。
その上で、「全国最多の小規模事業所を抱える東京都こそ、都民の暮らしを守り、賃上げを実現するための直接支援制度の拡充は不可欠」だと強調しました。
都の賃上げ支援制度では賃上げ以外の条件が必要で、支給まで1年以上かかります。藤田都議は「賃上げのみを要件とし、迅速に支給できる支援金の創設が必要だ」と訴えました。