公的な汚染調査を早く PFASと横田基地でシンポ

 人体への有害性が指摘され、多摩地域に深刻な汚染が広がる有機フッ素化合物(PFAS)をめぐり、米軍横田基地による汚染実態の解明や対策を求めるシンポジウムが6日に立川市で開かれました。パネリストとして国会議員、弁護士、地方議員がそれぞれの立場から、横田基地とPFAS汚染をめぐる現状や対策のための課題を報告し、討論しました。

山添氏「世論可視化で動かそう」
 パネリストの一人目は、福生市の市議(日本共産党)の市毛雅ま さひろ大 氏。シンポジウムを主催した「多摩地域のPFAS汚染から命と健康を守る会」(多摩PFAS連絡会)の世話人でもあります。
 「横田基地によるPFAS汚染 どこまで明らかになったか」をテーマに報告した市毛さんは「PCBやアスベストなど、最初は便利だと思われていたのに、人体や環境に有害だと規制された物質は多い。PFASをめぐっても、住民や私たちの会の取り組みによって、ようやく多くのことが明らかになってきた」と切り出しました。
 「特に大きな力になった」として紹介したのが、連絡会の前身である「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が専門
家の力を借りて取り組んだ、約800人の多摩地域の住民の血液中のPFAS濃度を調べる血液検査です。
 自治体ごとに平均濃度を出しました。この結果、米アカデミーの健康被害の恐れがあるという基準を超えた住民の割合は、最も高かった国分寺市で93%、続いて、立川市74%、武蔵野市が70%でした。多摩地域全体でも、参加者の46%にのぼりました。
 市毛さんは多摩地域の広範な住民が知らないうちに、PFASを接種し、血液濃度が高くなっている可能性があることを指摘し、「かつてない規模の住民に健康被害の恐れが出ているという深刻な問題だ」と強調しました。
 また、汚染がどこからきたのか解明するために、多摩地域の各地の井戸や河川の水、土壌などから約150のサンプルを集めて、PFAS濃度を調べた結果についても報告。西から東に流れる東京の地下水の流れにそって、横田基地の東側で濃度が高まっています。2023年12月に、この結果を発表した際、会として「多摩地域はPFAS汚染のホットスポットとなっている。都や国による住民の血液検査が急務」と声明したにもかかわらず、行政による調査が進んでいないと批判しました。
 市毛氏は、横田基地も一部のPFAS流出を事実として認めていることにも触れ「これだけの状況証拠が揃っている。横田基地が汚染源であることは否定できない」と報告を結びました。

米基地は無法地帯
 法律家の立場からPFAS汚染の問題に迫ったのは、三多摩法律事務所の富永由紀子弁護士です。
 富永氏は、「法的な責任主体は、在日米軍と日本の行政の二つ」と指摘。1990年代にはPFASの環境汚染の問題が指摘され始め、2000年代には国際的な規制も始まっていたのに、在日米軍での対策は遅れ、日本の行政も市民への危険性の情報提供や是正の措置を取ってこなかったと批判しました。
 原因究明と被害救済を阻んでいるものとして富永氏は、「在日米軍による環境被害には、米国の国内法は適用されず、日本政府も地位協定などの定めがない限りは日本の国内法は適用外という立場で、在日米軍基地は無法地帯化している」と語りました。
 ドイツなど米軍基地がある多くの国では、その国の国内法は米軍にも適用され、例外的な範囲で協定などで適用を放棄していることを紹介し、「日本は、原則と例外が逆転している」と構造的問題を指摘しました。
 こうした状況の転換を迫っていくための法的な手続きとして、富永氏は、「PFAS汚染が、住民に被害をもたらしている因果関係を、より精密に示していくことが重要になる」と指摘。情報公開制度の活用や他地域のPFAS被害をめぐる運動との連携、基地労働者の健康被害問題など、「さまざまな運動と連携して、PFAS被害の実態を、より精密に明らかにしていく必要がある」として、「様々な工夫をして、法的に追及できる枠組みを考えていきたい」と語りました。

三つの「ない」が

 日本共産党の山添拓参院議員は3人目のパネリストとして、国会での米軍や日本政府の責任追及の論戦について報告しました。
 山添氏は、漏出事故をめぐる日米の対応を示す典型的な例として、2023年1月に起きた、ショッピングモールの搬入口から、950リットルの汚染水が漏出した事故を取り上げました。
 この際の汚染水は、米軍の規定に違反して、誰でも人が入れる場所に置かれていました。ずさんな管理をめぐって、23年4月から米軍の監察官が調査を進めていたにもかかわらず、米軍は漏出事故の存在自体を非公表としていました。
 日本政府も、沖縄タイムスがこの問題を公表した後、山添氏が国会で3度にわたって質問しても「事実関係を米側に確認中」と答弁するのみで、独自に調査したり、米側に抗議する対応を取ってきませんでした。
 山添氏はPFASをめぐる日米両政府の対応を、①説明しない/(日本は)求めない②謝罪しない/求めない③調査しない/求めない―の「三つの『ない』が、どの漏出事故でも繰り返されている」と批判しました。
 あわせて、この間のPFAS汚染の解明を求める世論の高まりを受けた前進面として、2024年8月の漏出事故をめぐっては、横田基地では初めて日米地位協定の環境補足協定に基づく立ち入り調査が、25年5月に実施されたことを紹介しました。
 ただ、この立ち入り調査も、漏出から半年以上、経っており、漏出の実態解明が目的ではなく、米側が汚染水をこれまでのように焼却処理するのではなく、浄化して放流する方針を示したのに対し、その装置の機能を確かめるためのものでした。山添氏は「米側の方針変更の正当化、アリバイづくりに、日本の立ち入りが使われているのが実態だ」と指摘しました。
 そのうえで、「国会で自公が少数与党化したもとで、世論が高まり、野党が結束すれば、政府側も要求をのまざるを得ない状況が生まれている。PFAS問題についても、世論を可視化し、議会と結んだ運動を広げていこう」と呼びかけました。

超党派で取り組み
 会場の参加者からも、さまざまな意見や提案が出されました。
 大学で土壌汚染の政策を研究しているという男性は、「土壌汚染対策法にもとづく調査や対応、規制を、政府に求めていくべきではないか」と提起しました。
 沖縄出身だという女性は、「PFAS汚染は、沖縄をはじめ、全国各地に広がっている。国会議員の国政調査権を使った調査を求めるなど、超党派で取り組みを広げてほしい」と求めました。会場には、立憲民主党の大河原雅子衆院議員も参加しており、この発言を受けて山添さんと「ぜひ、超党派の取り組みをつくりましょう」とエールを交換する場面もありました。
 主催した多摩PFAS連絡会の根木山幸夫共同代表は開会あいさつで、「今日のシンポジウムを通じて、国、都、米軍による汚染の調査や、公的な血液検査、地下水や土壌の除染に道を開いていきたい」と強調しました。

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