日本共産党の小池晃書記局長は2日の参院予算委員会で、石破茂首相に対し、中小企業の賃上げに向けて、徳島県の中小企業支援を事例に国の直接支援を迫ったほか、上場企業の行き過ぎた「自社株買い」への規制、社会保障費を高齢化の伸びの範囲内に抑える財政フレームの廃止を求めました。
賃上げ
中小企業直接支援こそ
内部留保還元する仕組み 首相同意

小池氏は、政府の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2025)」の議論が始まり、石破茂首相が「賃上げのためにあらゆる政策を総動員する」と述べているが「速やかな最低賃金1500円実現には、カギを握る中小企業への思い切った支援が必要だ」と強調しました。
3月の予算委員会で、赤沢亮正経済再生担当相は「生産性の向上や価格転嫁で対応する」と、賃上げのための中小企業への直接支援を否定していました。小池氏は「あらゆる政策を総動員するというなら直接支援に踏み切るべきだ」と迫りました。
経済財政諮問会議に内閣府が提出した資料で、徳島県が最賃引き上げと中小企業の直接支援をセットで行っていることが紹介されており、国として中小企業の直接支援の検討を始めるのかただしました。石破首相は「それぞれの地域にふさわしい活用を国の財政を用いて支援をする」と答弁しました。
小池氏は、実質賃金の低下が続く一方、大企業の内部留保は積み上がり経済に環流されていない上、上場企業が株価をつり上げるための「自社株買い」が急増していると指摘。共産党の調査で、今年4月までの1年間で上場企業の自社株買い計画額の合計は21・5兆円で、昨年4月までの1年間(10・8兆円)のほぼ倍になっていると述べ、「自社株買いは本来投資するべきものを株主に与えるもので、企業の持つ価値や将来性を株主が奪うものになる」と強調しました。
経済産業省の有識者会議が「自社株買いをする『余分な資金』があるなら、将来の投資に回した方が、長期的にみれば企業価値を上げられる」と近く提言するとしています。小池氏は重要な提言だとして認識を問いました。
赤沢担当相は、投資や賃上げなどに幅広く分配されることは重要だとして「賃金向上推進5カ年計画に基づき賃上げを目指していく」と答弁。小池氏は「経産省で議論されることは重要だ」と述べました。
小池氏は、米国やフランスでは大企業の自社株買いに課税していると指摘。行き過ぎた自社株買いへの規制を行い、企業の目先の短期的な利益の追求ではなく、内部留保を投資や賃上げに還元する仕組みを考えるべきだと求めました。
石破首相も指摘の通りだと答弁。「株主への還元だけ重視することであれば企業の社会的責任を果たせない。従業員や地域に還元していくことが極めて重要だ」と述べました。小池氏は大事な方向性だとして、政策の具体化を求めました。
医療 介護
社会保障費抑制やめよ
「高齢化伸び範囲内」廃止 首相拒否
小池氏は、今年の春闘で医療、介護、福祉労働者の賃上げ水準が極めて低く、他産業との格差が広がっており、「その背景にあるのが、医療機関や介護施設の経営危機だ」と指摘。日本医師会の松本吉郎会長が記者会見で「このままではある日突然、病院がなくなる」と訴えており、「医療や介護経営の安定や、現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながるためには、診療報酬や介護報酬の引き上げが必要だ」と追及しました。
福岡資麿厚生労働相は「賃上げの実現は極めて重要な課題だ」とし、前年度の報酬改定や、今年度の補正予算などの効果を見極めながら必要な対応を行うと答弁。小池氏は「患者負担増を抑えつつ、来年春の報酬改定を待たずに対応すべきだ」と求めました。
小池氏は、政府がまとめた「骨太方針2025」骨子案でうたわれている診療報酬など「公定価格の引き上げ」の障害になっているのが、社会保障関係費の伸びを「高齢化の伸びの範囲内に収める」とする財政フレームだと指摘。医療費でいえば、高齢化による伸びは自然増の3分の1で、残りの3分の2の医療の高度化などによる伸びを認めないことになるとし、「こんなことをやっていたら患者の命は守れない」と強調しました。
また、日本の医療福祉分野の就業者数は今年の推計で950万人、全就業者の7人に1人であり、ケア労働者の賃金が低く抑えられてしまったら「国民経済にもマイナスになる」と強調。高齢化による伸びの範囲内しか社会保障費の自然増を認めない財政フレームを今年の骨太方針で廃止すべきだと迫りました。
石破首相は「高齢者に安心して医療を受けてもらうためにみなさまのご負担も求めていかねばならない」などと国民負担増を強いる姿勢を示しました。小池氏は「それでは医療も介護も崩壊してしまう危険がある」と指摘しました。
(「しんぶん赤旗」2025年6月3日付より)