小池百合子都知事が26億円余を投じ、臨海副都心・お台場海浜公園に整備中の高さ150メートル、世界最大級の噴水事業。噴水見学者を年間3000万人としていることに、「過大ではないか」と疑問視する声があがっています。実は、都が2022年に実施した噴水ショーの見学者は1日平均900人弱と不人気だったことが記者の取材で判明。都関係者から「エネルギー浪費イベントだ」の声も―。
(岡部裕三・ジャーナリスト)
台場噴水3千万人に疑問

記者は噴水事業をめぐり、東京都に情報開示を請求、港湾局が一部開示した25件、1660枚余の文書を入手しました。
文書は、東京五輪大会一周年記念事業の名目で、22年に台場で短期実施した噴水ショーや、小池知事が昨年9月の会見で公表した巨大噴水整備計画などに関するもの。
22年噴水イベントは小池知事が直接かかわって実施。港湾局は短期イベントに仮設噴水施設の設置・撤去、プロジェクションマッピングを含め3億4177万円を支出しました。
都が業務委託した東京港埠頭(株)の報告書(457枚)によると、噴水ショーは22年10月15日~12月25日の金、土、日、祝日の計34日間の夜間、高さ30メートル、1回10分のショーを1日5回開催し、計約3万人が見学。見学者1日平均882人のイベントに、都は1日1000万円を投じた計算です。
開示文書によると、小池知事は22年1月5日と9月22日の2回、港湾局からこの噴水イベントの説明を受け、「意見なし」で了承しました。
事業実施の際には、小池氏は東京港埠頭社長との間で6月から12月にかけて5件の協定を締結。協定書は都の負担金、噴水ショー開催回数の変更、知事出席セレモニーの会場設営費用の追加などです。
推計根拠は白塗り
一方、小池氏が昨年9月に発表した世界最大級の噴水計画については、知事への説明記録を「不存在」としており、大きな疑問です。
都の元幹部は「知事レク文書を不存在とするのは、知事のトップダウンで事業を計画した可能性が考えられる」「電力、水道を浪費する巨大噴水事業は自然環境に負荷を与え、時代の流れに逆行する」と指摘します。
都は巨大噴水ショーの見学者を年3000万人と推計しますが、根拠とする委託調査報告書の大部分が白塗りでした。
港湾局は「高噴射噴水は水道水、桜噴水は海水を使用し、1日10回実施する予定。見学者数はお台場花火のように、大井など周辺エリアの観覧者数を含め外部委託で算出した」と説明。水道水の使用量・金額などの質問には回答しませんでした。
批判の声も非開示

臨海副都心進出企業や都・関連団体で構成する「東京臨海副都心まちづくり協議会」(理事長・日枝久=フジ・メディアホールディングス取締役相談役)が昨年10月に都に提出した「台場ファンテンの着実な整備」を求める予算要望書は開示しました。臨海副都心にカジノ創設を都に提案してきたフジテレビ、森ビルも会員です。
一方、噴水事業を批判する都民の声は全面非開示でした。
都は4月、台場噴水施設整備工事の競争入札を実施、海洋土木大手の東洋建設が24億8160万円(予定価格の99・3%)で落札しました。
都議会で日本共産党は「巨大噴水整備とIR・カジノ誘致、都庁プロジェクションマッピングの無駄遣いはきっぱり中止を」と追及。小池知事を支える自民党、公明党、都民ファーストなどは噴水事業を推進しています。
無駄遣いに批判は当然
臨海都民連世話人 関口偵雄氏の話
都民が物価高に苦しんでいる時に、台場噴水など巨額の無駄遣いに批判があがるのは当然だ。港湾局は「税金は一切使わない」と言い訳をしているが、出どころは臨海地域開発事業会計という港湾局所管の準公営企業会計で、都民の財産だ。観覧者3000万人の根拠も不明朗だ。当初、海水を吹き上げると言っていたが、批判をうけ一部水道水使用に変えるため、維持費は年2億円より増えるだろう。(元都庁職港湾支部長)