2025都議選 暮らしの現場から 都営住宅申し込み殺到

「入りたくても入れない」 新規建設は26年間ゼロ

「落せん」を知らせるハガキを前に話す女性(しんぶん赤旗提供)

 都心部の家賃が高騰するなか、東京都営住宅に応募が殺到しています。平均倍率は8倍を超え、60倍を超える区もあります。「この街に住み続けたいけれど…」。都民の願いは。(芦川章子)

 「あぁ、今回もだめだった」。練馬区に住む女性(72)は、3年前に亡くなった夫の仏壇に落選通知のハガキを供え、嘆息します。

 2年前から毎月、都営住宅に応募しています。20回以上、落選しています。

 今、家賃5万2000円、2Kの賃貸アパートで息子と2人暮らしです。女性の年金は月約4万円。50代の息子は、建設業の職人として忙しく現場を飛び回っています。社会保険料や住民税などを「どかっと引かれ」、所得は年間200万円ほど。食費も光熱費も限界まで削り暮らしています。

 自室は2階にあります。人工関節が入る高齢の足で15段の階段を上がるのも「そろそろ限界」です。半世紀を暮らした同区には姉妹や友人もいます。「できれば、ここで」。いちるの望みを区内の都営住宅入居にかけつつ、「もう、東京には住めないのかな」。背を丸め、小声でつぶやきます。

 6回目の応募という別の女性(73)は、同区で1人暮らしです。年金は月6万円。家賃は7万8000円です。不足分は清掃のアルバイトで補います。

 傷んだ野菜、値下げされた食材を選び、3食自炊します。生活費は「1日1000円」と決めていますが、コメをはじめ、物価高騰で「それも、もう難しい」。

 第一希望の都営住宅は職場に近く、バリアフリー仕様です。「ここに入りたい」と切望しますが、倍率89倍と知り、応募先を区外に替えました。「早く当たりたい」。祈るような気持ちで、応募書類に筆を走らせました。

練馬区の都営住宅(しんぶん赤旗提供)

 「光が丘ボランティアの会」(練馬区)が、10年前から行っている都営申し込み相談会には、今月40人以上が訪れました。

 同会会長で、全国公営住宅協議会の小山謙一会長は「相談者のほとんどは低収入で入居資格を満たしています。希望者は殺到していますが、戸数が圧倒的に足らず、都営は“入りたくても入れない”住宅になっています」と語ります。

国と都は「民業圧迫」などといい、勤労者向けの公共住宅や都営住宅の新規建設から撤退しています。都営住宅の新規建設は26年間、ゼロです。応募倍率は5月現在、23区平均で11・4倍、もっとも高い区は文京区で68倍です。

入居資格の政令月収(公営住宅法施行令で定める収入月額)は15万8000円以下です。基準を超えると世帯全員が追い出されるなど、厳しい基準が入居をさらに阻みます。

小山さんは「若者や壮年者が都営から追い出され、低年金や無年金の高齢者だけが都営に取り残される」と危機感を持ちます。

広がる「住まいの貧困」。その一方で、公金を注ぎながら進む大規模再開発による「億ション」建設
。小山さんはいいます。「住まいは人権です。住宅政策の見直しを求めたい」

【日本共産党都議団の政策】
 都営住宅は▽新規建設の再開▽建て替え時の増設▽借り上げ都営住宅の活用―の3点セットで、10年間で10万戸を供給します。収入や年齢などの基準を見直し、入居対象者を拡大します。

 都議団は都営住宅申込者アンケートを募集しています。ウェブ上からも回答できます。


(「しんぶん赤旗」2025年5月23日付より)

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