激辛ポテチ 高校生搬送 診察した谷川医師 ブームに警鐘

「18禁」表示で防げない

 「18禁」激辛ポテトチップスを食べた高校生14人が救急搬送―。生徒が学校内に持ち込んだ激辛ポテトチップスを食べ、頭痛や腹痛の症状を訴えました。テレビやSNSで面白おかしく過激化する「激辛ブーム」。ゆきすぎに警鐘を鳴らす必要があります。(遠藤寿人)

 問題が起きたのは東京都大田区の都立六郷工科高校。16日午後1時ごろ、「辛いお菓子を食べ体調不良になった」と学校が通報。30人以上の生徒が激辛ポテチを食べ、15人が体調不良を訴えました。

 東京消防庁によると、16台の救急車が大田・千代田・品川各区から出動。大田病院(大田区・全日本民医連加盟)には3人の生徒が搬送されました。

 診察にあたった谷川智行医師(53)=日本共産党政策委員会副委員長=によると、1人は意識がもうろうとしていました。声を掛けると目を開け、簡単な質問に応じました。後で確認した際には、「運ばれた時のことはよく覚えていない」と話していたといいます。他の2人はゆっくり歩ける状態で、点滴をして回復しました。

 谷川さんは予想していた経過とは異なっていたと振り返ります。当初は、とても辛いものを食べて粘膜が炎症を起こし、強い痛みが生じて迷走神経反射で気分が悪くなったり血圧が下がったり、呼吸が速くなる過換気症候群になっているのではないかと想像していたと語ります。

 比較的症状が軽かった2人から事情を聞くと、「想像とは全く違う事態」でした。

朝食べ午後発症

 ポテチを食べた時間が午前8~9時で症状が出るまで、ずいぶん時間がたっていたこと、食べた量が小さなかけら1~2枚だったこと。意識障害がある生徒が食べたのも1枚だけでした。

 3人の共通点はポテチを口に入れ食べた瞬間、口の中が焼けるように痛かったと訴えていたことです。若干の頭痛や腹痛があったものの午前中の授業を受け、昼の弁当は全部食べられたといいます。3人とも軽症ですみ、治療後数時間で帰宅できました。

 谷川さんはトウガラシに含まれるカプサイシンという成分は「血圧を上げたり心臓に負担を掛けたり、胃腸の粘膜を傷つけたりする。過剰摂取は命にかかわる」と説明し、これが原因だったのではと指摘します。

 生徒たちが食べた激辛ポテトチップス「18禁カレーチップス」を販売したのは磯山商事(茨城県鉾田市)。「超激辛!!“ブットジョロギア”ふんだんに使用」が売り文句です。ブットジョロギアとは「世界一辛い」といわれるトウガラシ。商品にはその粉末が使われています。裏面には「18禁!辛すぎますので、18歳未満の方は食べないでください」「高血圧、体調不良、胃腸の弱い方は絶対に食べないでください」などと「警告」が明記されています。

 同社によると、2013年から「18禁」を販売し、18歳以上でも個人差があるとし、(体調を悪くした)同種事例はなく、「販売を終了することにはなっていない」といいます。

 消費者問題を扱う国民生活センター(神奈川県相模原市)によると、激辛のインスタント食品による健康被害は19年以降、3件報告されました。食品の「辛さ」の基準のようなものはなく野放図の状態です。

SNSで盛んに

 製品の欠陥問題に詳しい中村雅人弁護士は「18歳を過ぎていたら副作用が出ないとはいい切れないのではないか。被害が出るなら販売を継続するべきではない」と指摘。「『警告』が記載されても字が読めない小さい子どもがつまむかもしれません。『18禁』との表示ですべての事故が防げるとは思いません。管理なしに菓子のようにだれでも簡単に食べられるような形で劇物を市場に置くのは問題があります」

 谷川さんは「テレビやSNSで大食い激辛などとして、盛んに映像が流れています。ゆきすぎると危険です。アメリカでは亡くなった少年もいます。SNSで注目を集めるために過激になっているのでは」と警鐘を鳴らします。

しんぶん赤旗2024年7月23日付より