コミバス

 高齢化が進む中で、“買い物難民”が社会問題化しています。病院までの身近な“足”の確保も切実です。公共交通網が発達していると思われる東京も、例外ではありません。日常の移動を助けてくれる住民の“足”として喜ばれているのが、コミュニティバス、いわゆるコミバスです。武蔵野市のムーバス(1995年)から全国に広がったとも言われ、住民運動の広がりの中で都内の多くの自治体が走らせています。一方、不採算や財政上の理由から縮小・廃止や、導入に二の足を踏む自治体もあります。日本共産党都議団は11月2日、都内の実態調査を発表しました。この10年の変化を見ました。

採算性がブレーキに

品川区試験運行を開始

 「西大井から大森駅行きバスがなかったので、とてもうれしい。病院に行くときに使っています」
 今年3月28日からコミバスの試行運行が始まった品川区民の喜びの声です。
 品川区では鉄道駅が延べ40駅、路線バスは61系統運行され、交通の利便性が高い自治体の一つとみられます。一方でバス停から距離がある地域や本数が少ない地域、道路の幅員が狭くて大型バスを通せない地域もあります。
 そうした地域住民から、「通院や買い物に行くのに駅まで遠くて大変」「電車やバス停から自宅が遠いため、自転車を利用できない雨天や高齢者は特に大変」など、切実な声が聞かれます(共産党品川区議団実施のアンケート)。
 同区ではコミバス導入を求める住民運動が広がり、8年間で18回の陳情・請願が区議会に出されました。共産党区議団は「実施は急務」と導入を区に提案してきました。自民、公明と区は「区内交通環境は充実している」などと住民要求に背を向けていました。しかし、粘り強い住民運動と共産党の議会論戦を背景に、2018年10月、区が導入を決めました。
 運行に向けて区は、20年9月から地域公共交通会議で検討を進め、ワークショップで地域住民の声を反映するなどしてルートを決定。車両は運行事業者が購入し、区が全額補助。狭い道路も通れる小型バス(座席10人、総定員29人)を導入しました。名称の「しなバス」は公募で決めました。運賃は220円(こども半額)。シルバーパスの利用が可能です。10月にはダイヤ改正で、西大井駅と大森駅を結ぶ区間の路線が1時間あたり2便から3便、1日あたり56便から84便に増便になりました。
 区は本格実施の評価指標として、年間の運賃収入を運行経費で割った収支比率50%以上を定め、これを下回った場合は廃止を含め見直す方針。本格導入後も3年連続で基準を満たさない場合は、廃止を含めて見直すとしています。
 共産党品川区議団は、導入決定後も、住民アンケートなどで住民要望を聞き取り、運行の継続、路線拡充、運賃の引き下げを求めています。

中野区実証でワゴン型
 中野区では10月18日から来年3月31日まで、地域公共交通サービスの実証実験を行っています。若宮・大和町地域に、細い道も通行可能なワンボックスタイプ(乗客定員10人)のミニバスを走らせています。運賃は大人200円(小児半額)。
 狭い道路でも走れるミニバスの運行を求める地域住民でつくる「若宮・大和ミニバスの会」は、利用しやすいミニバスにと、住民アンケートに取り組んでいます。
 同区では08年に不採算を理由にコミバス「なかのん」を廃止しています。今回の実証実験は、区内の公共交通ネットワークの拡充に向けて住民アンケート調査結果に基づき、地域を決定。オープンハウス型の説明会を3回開催してきました。区では「実証実験の結果を踏まえて交通状況を見定めた上で、コミバス導入を含むさまざまな対応を検討していく」としています。
(長沢宏幸)

荒川区 不採算で路線を廃止
共産党 財政支援求める

 荒川区内で3路線目のコミバスとして12年に導入された「町屋さくら」が、今年3月末で廃止になりました。昨年10月議会に住民が提出した存続を求める陳情も不採択となりました。
 日暮里・舎人ライナー熊野前駅と都電や東京メトロの町屋駅をつないでいました。2019年度に約22万人だった利用者は、新型コロナ禍の20年には約11万人に半減。同区は導入当初から運行費補助を出しておらず、採算悪化で事業者は区に補助を要請しましたが、区は応えず、廃止を決めました。
 区によると、運行維持には約3000万円が必要で、「町屋さくら」に補助を出すと、他の2路線にも出さざるを得なくなり、3路線で年間約1億2000万円の支出になることを挙げています。
 共産党区議団の横山幸次区議は議会論戦で、今後さらに高齢化が進むもとで、新たな需要が拡大していくと指摘。「地域の交通の基幹路線として整備するというのは、将来絶対に必要になってくる」とし、コミバスへの財政支援を強く求めています。

マイナ保険証 強制は理不尽
医師らが訴え

 全国保険医団体連合会、中央社会保障推進協議会、全日本年金組合らは3日、JR新宿駅東口で「マイナ保険証を強制するな」と宣伝を行いました。同時刻にツイッターデモも展開し、「マイナンバーカードの普及のための保険証廃止は許されない」との声を上げました。
 宣伝には午前中の診療を終えた医師らも駆けつけました。都内で診療を行う歯科医師はマイクを握り、「現在は月1度の保険証の確認が、マイナンバーカードでは毎回の確認が必要です。同じ月内に入れ歯の出来上がりを楽しみにしていたお年寄りが、制度変更を理解できず、受け取りの時にカードを忘れたとしたら医療費を10割全額を預からなくてはいけません。1割負担の方なら5500円で済むところ、5万5000円預からないと入れ歯を渡せない。理不尽ではありませんか」と告発。
 あわせて「あらゆる情報がマイナンバーにひもづけされることで情報漏えいだけでなく、個人情報が営利目的に利用される」と警鐘を鳴らしました。マイナンバー制度開始にあわせて個人情報保護法が改正され、個人が特定できなければ集約された情報(ビッグデータ)が営利目的に利用できるようになっています。
 また、他の参加者から「既往症などの情報が盛り込まれ便利だというが、誰にも人に言いたくないことがある。例えば精神疾患の既往症が知られることになる」との訴えがありました。

 岸田政権が年末にねらう安保関連3文書の改定に向け、自民公明両党が「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を合意しました▼仮想敵となる相手国のミサイル基地や、発射を司令する中枢機能を攻撃する能力を持とうというものです。従来、日本政府は「専守防衛」を掲げ、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つ」ことは、「憲法の趣旨とするところではない」と国会でも答弁してきました▼自公合意は、同盟国が攻撃を受けることによって日本の存立が脅かされる「存立危機事態」でも、対象になるとしています。米軍が始めた戦争に日本が参戦し、報復攻撃を受ける可能性がさらに高まります▼敵基地攻撃能力を持つことは、安倍政権による「安保法制」に匹敵するような、日本の安全保障政策の大転換にもかかわらず、「平和の党」を看板にしてきた公明党を含め、与党内からの異論の声はほとんど聞こえてきません。国会での本格的な議論もないまま、岸田政権は危険な道を突き進もうとしています▼敵基地攻撃に必要な防衛力を確保するには、大幅な増税や暮らしや教育、社会保障のための予算削減が不可避です。必要なのは、近隣の諸国と平和の道をつくる外交の努力こそ、です。