司法の役割を果たせ 道路・再開発裁判 判決続く

この記事は約4分で読めます。

 都が防災などを口実に強引に進める都市計画道路・特定整備路線とそれに関係する再開発をめぐる行政訴訟で、判決や控訴審開始などが17~20日に相次ぎました。都の主張をうのみにするような判断に、住民は司法の役割を果たしてほしいと訴えます。

北・十条 「恣意的分筆」認める
 JR埼京線十条駅西口(北区)の市街地再開発事業に反対する住民らが、事業に係る組合設立認可処分の取り消しを東京都に求める行政訴訟で、東京地裁(市原義孝裁判長)は17日、原告の請求を退ける判決を下しました。
 十条駅西口は2012年、高さ約146㍍、地上39階建ての大規模な超高層ビルの建築とともに、特定整備路線補助73号線の一部新設整備を含む都市計画が決定。2007年に準備組合が設立されたものの、組合設立要件である3分の2以上の地権者の同意が長らく得られず、2016年11月にようやく申請要件を充足。翌12月に組合設立認可申請書を提出しました。
 最大の争点は、3分の2の同意の有無。共有名義の土地(1筆)が同意直前に5分割されており、裁判所は「恣意的な分筆」と判断しました。最終的には僅差で3分の2の同意が認められてしまったものの、報告会で弁護団の木本茂樹弁護士は「こちらの主張が認められた、数少ない点」と指摘。後日、原告のひとり、伊藤勝氏は「他の再開発でも同意者の水増し事例がある。裁判所の判断は一石を投じるものになった」と語りました。
 補助73号線の不要性、高層ビルによる日照阻害、風害の影響、十条銀座商店街のにぎわいや下町情緒あふれる街並みの破壊などを理由に都市計画の適法性についても争いました。しかし、「補助73号線には延焼遮断帯として相当の効果がある」「被害の発生について基礎づける事情を認めるに足りない」と判決で示されました。
 原告団長の榎本敏昭氏は「十条西口の再開発は補助73号線の建設と密接に関わっているのが問題」と強調。控訴するかは検討中です。
 北区は30日に、赤羽西補助86号線の裁判も判決をむかえます。

品川・29号線 判決に国と都の言い分
 翌18日には特定整備路線・都道補助29号線(品川~大田区)の事業認可取り消しを国と都に求める裁判が東京地裁(春名茂裁判長)で開かれ、原告側は敗訴しました。
 判決報告集会が21日、荏原第五地域センター(品川区)で開かれ、内容について串山泰生弁護士が説明。1966年の高度経済成長期に決定した都市計画をめぐり、原告は口頭弁論で行政法専門家の春山一穂氏の意見書を提出し、少なくも事業認可を受けた2015年の状況まで踏まえて判断すべきと主張。また、都市計画決定時点から長期間経過後の事業認可の違法性を訴えました。
 判決は都市計画法21条1項に基づき、「変更すべきことが明白であったといえるなどの特段の事情がある場合」には都市計画を変更する必要があるが、特段の事情は認められないと判断。原告から「何をもって明白といえるのか、根拠が示されていない」と怒りの声が上がりました。
 都が道路をつくる名目で主張する交通の円滑化に関し、原告側は2000年頃から品川区内の幹線道路の交通量が、25~30%減少している事実を指摘。判決文には被告と参加人側の主張がそのまま引用され、都区部の混雑時平均旅行速度は時速16・8㌔であり、交通渋滞の解消や環境改善などのために首都圏三環状道路の整備と関連し、補助29号線が必要と訴えを退けました。
 都市防災・都市計画専門家の中村八郎氏の証人尋問により、補助29号線の延焼遮断帯構想では火災が広がる要因のひとつ、飛び火による延焼は防げないと原告側は明らかにしましたが、判決は「一定の効果が認められる」と認定。そのほか計画地には起伏が激しく、高低差が8㍍ほどある部分もあり、安全性や利便性の欠如なども訴えたものの、認められませんでした。
 串山弁護士は「道路ができることで住民のかけがえのない日常生活が破壊される。杓子定規な冷たい判決」と強調。後日、原告団長の池戸アキコ氏は取材に「公園や広場をつぶす訴えを避け、裁判所の考えがまったく見られない行政言いなりの判決で驚いた」と述べました。池戸氏らは控訴の準備を始めています。

板橋・大山 控訴審はじまる
 特定整備路線・都道補助26号線(板橋区)事業認可取り消しを都に求める控訴審は20日、東京高裁(定塚誠裁判長)で始まりました。
 原告側は、1日に3万人以上の来街者がある都内屈指の商店街「ハッピーロード大山商店街」を道路建設から守ることを最大の焦点にしています。
 法廷では原告団長の信澤眞弓氏、弁護団の久保木太一、和田壮一郎、舩尾遼の各弁護士が意見陳述。信澤氏は一審の判決文を見てがく然としたと述べ、「道路が通るとどうなってしまうのかという一番肝心な部分について、1ページくらいしか書いていない」「住民の生活が壊されるのは当たり前で、議論の必要すらないということか」と、原告の思いを代弁。裁判官に対し、「商店街に足を運び、現場を見た上で判決を」と強く訴えました。
 第2回控訴審は9月30日を予定しています。