独法化やめ患者守れ 不採算医療担う都立病院 都議会 独法化議案を可決

この記事は約5分で読めます。

自民・都ファ・公明・維新が賛成

 都議会第1回定例会は3月25日に本会議を開き、都立・公社病院を7月に独立行政法人化する都立病院条例廃止案、法人の中期目標などの関連議案を自民党、都民ファーストの会、公明党、東京維新の会などの賛成多数で可決・成立させ、閉会しました。日本共産党、立憲民主党、自由を守る会、グリーンな東京、生活者ネットは反対しました。
 独法化関連議案の採決を巡っては、独法化に伴い6月末で廃止する病院会計予算には共産党は反対しましたが、自民、都ファ、公明、立民、維新などの賛成多数で可決。共産党が提出した子どもの国民健康保険料(税)の均等割無料化条例案は、自民、都ファ、公明、維新などの反対多数で否決しました。
 採決に先立つ討論で、共産党の斉藤まりこ都議は「コロナ対策を強化するため」「行政的医療を将来にわたって提供するため」という独法化を進める都の理論は、「全て破綻した」と指摘。「議員一人ひとりの決断が東京の医療体制に重大な影響を及ぼす。今ここで立ち止まろう」と、全会派・議員に呼びかけました。
 立民の風間穣都議は「独法化そのものを否定するわけではない」としつつ、「コロナ禍を脱したとは言えない。なぜ廃止するのか明確でない。拙速だ」と指摘しました。
 独法化議案に賛成した会派のうち自民党の石島秀起都議は、「独法化のメリットを生かし成果を都民に還元を」と主張。医療後退を招く独法化を推進しておきながら、「安定した医療体制を構築し、通常の救急医療体制も確保を」と要望。都ファの入江伸子、公明党の慶野信一の両都議は、独法化に一言も触れませんでした。

過去最大の一般会計
 最終本会議では、過去最大となる2022年度一般会計当初予算案(7兆8010億円)など、合わせて104議案(議員提出を含む)を可決しました。
 日本共産党は「都民の暮らしと営業を守る対策が極めて不十分だ」として一般会計予算案に反対しました。
 討論に立った日本共産党の斉藤まりこ都議は、予算案について「住民の反対が強い特定整備路線などの大型道路予算が約1000億円に膨らみ、国際競争力を口実にした臨海部などの大規模開発予算は4割増になった」と指摘。IR・カジノ誘致の調査費や、羽田空港新飛行ルートを固定化・拡大する羽田空港機能の調査費の引き続く計上について、「見直しが必要だ」と強調しました。
 さらに不要不急の事業を見直して、都民の命と暮らしを支える施策を充実させる日本共産党都議団の予算組み替え案について、「予算のわずか3・4%を組み替えるだけで、99項目に及ぶ都民要求が実現できる」と主張。「この提案こそ、コロナ禍で苦しむ都民の願いに応えるものだ」と訴えました。

北朝鮮に抗議決議
 都議会本会議では、ウクライナ危機に対応し中小企業を支援する一般会計補正予算案、北朝鮮のミサイル発射に抗議する決議を全会一致で可決しました。

独法化の論拠総崩れ
予算特別委 大山都議の論戦に見る
 第1回定例会で最後の本格論戦の場となった予算特別委員会のしめくくり総括質疑(3月22日)。今定例会で最大の焦点となった都立・公社病院の独立行政法人化で、都があげた論拠は全て崩れました。日本共産党の大山とも子都議の論戦に見ました。

 小池知事が独法化の理由として、予算特別委員会の場であげた「コロナ対応のための独法化」。小池知事が独法の今年7月設立を決めた時期は、コロナ重症者が過去最多となった昨年8月で「なぜコロナ禍に独法化するのか」との疑問や批判がまき起こりました。大山都議は「(そのことに)まともに答えられなくなった後付けの、その場しのぎの説明をせざるを得なかったからだ」と断じました。
 大山都議が示したのは、都立小児総合医療センターや精神科の都立松沢病院のコロナ病床数は全国の小児病院、精神科病院の中で1位という事実。「都立病院は最も多くのコロナ病床を確保している。独法化する理由はどこにもない」と指摘しました。
 その上で「独法化すればよくなるなど、どうして言えるのか全く分からない」と疑問視する、都立松沢病院の前院長の斉藤名誉院長の話を紹介。実際、都が独法化の成功事例として高評価する大阪府は、人口100万人当たりコロナ死者数で突出しているのです。大山都議はこのことの認識を知事にただしましたが、答弁できませんでした。

行政的医療の安定もごまかし
 大山都議はまた、「行政的医療を安定的に提供するための独法化」という都の論拠についても崩しました。
 大山都議は都の独法評価委員会分科会で知事が任命する委員が、独法化後の病院運営について「再編統合は避けられない」と発言したことを重大視。知事の認識をただしましたが答弁せず、代わりに立った西山智之病院経営本部長は石原都政が行った小児病院の廃止を評価する答弁を行なったのです。大山都議は、小児病院が廃止された地域で小児救急医療が大きく後退した事実を突きつけました。
 政府が再編・統合の議論が特に必要な公立・公的病院リストにあげる都立神経病院。ここではナースコールを押せない神経難病患者のために、動かすことができる指先やまばたき、眼球の動きなどでナースコールができるよう一人一人に合わせて調整しています。
 大山都議はこのことを紹介した上で、「不採算医療を担い患者の人権と尊厳を守る神経病院は、採算性、効率性が重視される独法化とは最もなじまない」とし、独法化の撤回と都立直営での拡充を強く求めました。
 コロナ禍で都民の命の砦ともなる都立・公社病院の岐路となる独法化をめぐる論戦は、小池知事、関係局長からまともな説明はなく、独法化ありきの不誠実な対応だけが目立つ中、関連議案の可決・成立という都政に禍根を残す結果となりました。

都議会共産党が予算組み替え動議
3月22日の予算特別委員会での大山とも子都議の質疑は、独法化問題の他、新型コロナウイルスのオミクロン株のもとで感染が急拡大している保育園などでの対策強化、米軍横田基地に配備されている特殊作戦機オスプレイの周辺地域に与える深刻な騒音被害の実態と改善、東京都平和祈念館の東京大空襲80周年となる3年後までの実現―について取り上げました。
 また、翌23日の同委員会では、日本共産党都議団から2022年度当初予算案の組み替え動議が提出されました。自民、都ファ、公明、立民、維新などの反対で否決されました。
 日本共産党都議団の曽根はじめ都議が趣旨説明を行い、原田あきら都議が討論に立ちました。

独法化実施阻止へ運動和泉幹事長が談話
 日本共産党都議団の和泉なおみ幹事長は第1回定例会の閉会にあたって談話を発表。都立・公社病院の独法化関連議案の可決・成立したことに関連して、「都政に禍根を残させないため、引き続き都民と力を合わせていく」と表明しました。