制度なしは「違憲状態」 結婚の自由訴訟で東京地裁

 同性の婚姻を認めていない民法や戸籍法の諸規定は憲法に違反するとして、原告8人が国を提訴した「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟で、東京地裁(池原桃子裁判長)は11月30日、同性カップルが家族になる制度が存在しない現状は人格的生存に対する重大な脅威、障害であり、憲法24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に違反する「違憲状態」との判断を示しました。一方、法制度の構築は国会の立法裁量に委ねられているとして、結論は「合憲」と判断し、請求を棄却。原告は控訴に踏み切る構えです。

原告「速やかに法改正を」

 「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、同性パートナーとの結婚が認められないことは、憲法が定めた婚姻の自由(24条)の侵害であり、法の下の平等(14条1項)に反する不合理な差別などとして、当事者らが諸規定の改廃を怠った国に対し、精神的な損害の賠償を求めて提訴。全国で延べ36人の原告が、2019年2月から札幌、東京、名古屋、大阪で、同年9月から福岡の裁判所で争っています。
 今回の判決は、昨年3月の札幌地裁、今年6月の大阪地裁に続き3件目。札幌地裁は、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとして「違憲」と指摘。大阪地裁は、婚姻の目的は「男女が子どもを産み育てる関係の保護」であり、同性婚を認めないことは「合憲」の判断を示し、司法での見解が割れています。

「個人の尊厳」重視
 閉廷後の記者会見で、東京弁護団共同代表の上杉崇子弁護士が声明を発表。判決は「法的に家族となることは、人格的生存にとって極めて重要な意義を有する」と認め、「家族としての法的保護を受け、社会的公証を受けることができる利益は、個人の尊厳に関わる重大な人格的利益に当たると判断した」と強調。「国は本判決を真摯に受け止め、諸規定の改正に直ちに着手し、婚姻の扉を速やかに開かねばならない」と主張しました。
 登壇した原告の大江千束さんは、「パートナーはかけがえのない家族。(判決が)そこに触れてくれたのは喜ばしいところ」と発言。小川葉子さんは、「大きな一歩」ではあるが「もう一声ほしかった。やや複雑な気持ち」と語りました。
 廣橋正さんは、「家族であることが社会的に認められなければ、人生のあらゆる局面で大変な思いをする。自分の存在、尊厳が、日々傷つけられている」と真情を吐露。「なぜ法の下の平等が認められなかったのか」と疑問を抱きつつ、「決してあきらめず前を向いて進んでいく」と決意を示しました。
 かつさんは、札幌と大阪地裁に続く判決で「不安と期待が半々だった」と述べ、「法廷での意見陳述が裁判官に伝わったと感じた。ただ、もっと踏み込んだ判決内容であればうれしかったというのが本音」と語りました。
 3人の子どもを育てる小野春さんと西川麻実さんは、リモートで参加。小野さんは「私たちは男女のカップルが利用している結婚制度と同じものを求めている。別の制度を用意するのは不自然で、それこそ差別ではないか」と指摘。西川さんは「違憲状態は価値ある判断」としつつ、「異性愛者に用意されている幹線道路を、私たちが通れないことが差別だと分かってもらいたかった」と話しました。

婚姻は共同生活の保護
 弁護団共同代表の寺原真希子弁護士が、裁判について補充説明。判決は「同性愛者を取り巻く社会状況に大きな変化がある」ことを認め、憲法24条が定める「婚姻」に「同性間の婚姻を含むものと解釈すべきという、原告らの主張を直ちに否定することはできない」と示したことは「かなりの進展ではないか」と考察しました。
 婚姻制度の目的のひとつを「人的結合関係における共同生活の保護」と明示した東京地裁判決は、大阪地裁と大きく異なると指摘。家族としての法的保護を受け、社会的公証を受ける制度がないことが個人の尊厳において問題であると判断したうえで、「養育される子も含めた共同生活の安定に資するものであり、人的結合関係を強め、社会的基盤を強化させ、異性愛者も含めた社会全体の安定につながる」と踏み込んだ、判決の視点を評価しました。
 その後の報告集会では、応援に駆け付けた東京訴訟の二次原告や、他地域の原告、弁護団らが発言しました。