「聞こえの支援は人権問題」との考えから、主に高齢者を対象に補聴器購入への補助制度が広がっています。23区では、ここ3年ほどで2倍以上、少なくとも16区が創設。一方、多摩26市では、三鷹市が初となる補助制度を10月からスタートさせました。すでに100人近い市民が申請し好評です。

共産党の条例提案実る

クローズアップ地方選
住民の願い実現を

 近年、聞こえの問題が高齢者の社会参加の障壁となっていることが、様々な研究で分かってきました。うつや認知症を引き起こす要因ともなるとの研究結果もあります。その対策として補聴器の使用が有効とされています。
 しかし補聴器の普及は進んでいません。高額なことが障壁となっています。国の身体障害者総合支援法の補装具費支給制度はありますが、条件が厳しく、かなりの重度難聴でなければ適用されません。三鷹市は支援法の対象にならない、18歳以上の市民が対象で、購入費の半額、最大4万円までを補助します。所得制限(210万円以下)があります。
 市高齢者支援課によると、11月17日までの申請者数は97人(65歳未満5人)で、このうち79人(同5人)が認定されました。申請には医師の「意見書」の添付が必要ですが、不認定となった人の中には、医師の診断で初めて重度の難聴だったことが分かり、支援法による補聴器支給につながったケースが2件ありました。
 大高俊彦課長は「助成制度を待ち焦がれていた人が一気に申請され、その後も途切れることがありません。それだけニーズがあるということです。思いのほか重度で福祉(支援法)による支援につながった方もいます。この制度をやってよかった」と話します。

高額な購入費 補助が後押し
 補助制度のスタートを機に、購入を考える人が増えています。最近聞こえづらくなったという久保田有子さん(80)もその一人。「相手の話を聞こうと神経を使うので疲れてしまう。聞こえないのがこんなにつらいとは知りませんでした。補聴器は高いと迷っていたけれど、補助金が出るのなら買います」。前田たま子さん(82)も、「夫との会話で『なに、なに』って、何度も聞き返すことが多くなると、結果的にしゃべらなくなってしまう。調子が悪い補聴器を買い換えたい」と、補助に期待します。
 浅羽和子さん(88)は、9月に紛失した片耳の補聴器の購入を1カ月待って、補助申請し認定されました。「補聴器をつけないと、友人との外食では会話になりません。後ろから来る車の音も聞こえない。恐くて自転車にも乗れない」と切実。
 夫の晴二さん(92)も難聴が進み、補聴器は必需品。最近買い換えた機器は両耳で25万円。「私の場合は所得制限で補助の対象外。医療費は2倍と負担ばかり増えているので、所得制限の緩和や補助額を増やしてほしい」と話しました。

「検討したい」大城質問に答弁
 三鷹市が補聴器の購入助成に動き出すきっかけとなったのは、2019年9月議会でのこと。日本共産党の大城みゆき市議の質問に、河村孝市長が前向きな答弁をしたことでした。
 同議員団が毎年行っている市民アンケートで「高くて手が出ない」「高額な補聴器を買ったが、雑音が入って役に立たない」など、購入補助をはじめ聞こえの支援を求める声が多く寄せられていました。大城市議はこうした声を受けて、19年9月の定例会本会議で助成制度の創設を求めました。河村市長は「主旨は理解できるので検討したい」と答弁しました。
 これを受けて共産党市議団(4人)は、翌20年12月に補聴器助成条例案を提出。21年2月の厚生委員会で審議され、趣旨説明を行った大城市議は、コロナ禍での長期の自粛で聞こえにくいことが原因による家庭内のストレスが増えていると指摘。「補聴器の必要性はコロナ禍だからこそ重要。市民からの要望も強くある」と訴えました。
 公明党は「高齢者の介護予防にも有効な取り組み」と評価するも、「時期尚早」と自民党などとともに反対、否決しました。この事態を受けて地域の年金者組合や新日本婦人の会、生活と健康を守る会が学習会や、購入補助を求める署名を始め、市長に要望書を提出するなど市民運動が広がりました。
 この年の12月議会で、大城市議が改めて助成制度の導入を要求。河村市長は「真剣に検討したい。ちょっと待っていただきたい」と答弁していました。こうした中、22年度の当初予算に1014万円(この内、都の高齢社会対策区市町村包括補助約370万円)が盛り込まれました(表参照)。

実現へ市民運動が後押し
大城みゆき市議の話

 共産党市議団は市民生活を守るために、子ども医療費無償化、敬老金復活、国民健康保険税の子どもの均等割軽減など、条例提案や予算組み替え動議などを行ってきました。補聴器助成条例は、コロナ禍で市財政が厳しい中でも、他市の例や都の包括補助の活用などで実現可能であることを示しました。実現には市民運動の後押しが大きな力になりました。今後も所得制限の緩和や補助増額、補聴器調整の仕組み作りなど、改善に努めていきます。

エンタメ4団体

「日本文化が先細る」
インボイスで2割が廃業も

 来年10月の導入まで1年を切ったインボイス(適格請求書)制度に反対する声優やアニメ、演劇、漫画業界の各有志団体が16日、都内で合同記者会見を開き、インボイス制度と収入に関する実態調査を発表しました。前日には、日本俳優連合(西田敏行理事長)が制度施行の中止を求める声明を公表。制度が周知されるにつれ、抗議の声が大きくなっています。
 各団体が実施したアンケートによると、制度導入で「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」と回答したのは、声優27%(回答数671人)、アニメ業界関係者25%(同1132人)、演劇業界19・6%(同567人)、漫画業界21・2%(同1275人)と、多くの人が廃業を視野に入れている実態が可視化されました。
 「インボイス制度を考える演劇人の会」代表世話人で劇作家、演出家、俳優の丸尾聡氏は、コロナ禍以降に公演などの中止や延期を9割以上が経験し、約4割の演劇団体が300万円以上の負債を抱えていると説明。ここにインボイス制度の負担がのしかかると、「日本の未来において文化・芸術の先細りは明らか」と声を強めました。
 「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」代表で漫画家の由高れおん氏は、「アシスタント業の問題は深刻」と強調。アシスタントの約6割は年収200万円未満であり、「漫画家側はアシスタントに課税できず、アシスタント側は先生に免税を迫れない」と指摘。「一部の大手出版社や有名作家の作品以外は死滅するのでは」と、涙をこらえながら話しました。
 「アニメ業界の未来を考える会」世話人で、株式会社スカイフォール代表取締役の植田益朗氏は、「43年間アニメ業界に携わってきて、インボイスほど危機感を抱いたことはない」と憤慨。インボイス制度を憂慮する声優で立ち上げた「VOICTION」共同代表で声優の岡本麻弥氏は、長年にわたる不景気とコロナ禍で「ただでさえ虫の息のところ、とどめの一撃になる」と訴えました。

多摩地域初「9条の碑」府中にも
つくる会がスタート

 憲法9条を守る運動のシンボルとして、府中市にも「9条の碑」をつくろう―。40年目を迎えた「けやき平和コンサート」が開催された18日、同市で平和運動に取り組む市民らが中心となって結成した「三多摩初の『9条の碑』を府中につくる会」が、コンサート会場の「府中の森芸術劇場」で記者会見を開き、碑の建設計画をスタートすると発表しました。
 憲法改悪の動きが強まる中、「9条の碑」の建設を目指す運動が日本各地で広がっています。都内では足立区で初めて6月に建立され、府中で実現すれば都内で2番目、多摩地域では初となります。
 会見には「つくる会」共同代表や賛同人が出席。 共同代表の一人で、同コンサートの会の姫田光義中央大学名誉教授は「コンサートで掲げる『反核・平和、環境保全、福祉』は、現在の世界情勢を包括している。(9条の碑の建設を)世界に発信していきたい」とあいさつしました。

一分

 「料金を滞納して電気やガスが止まった家庭でも、水道はギリギリまで止めない」―以前、複数の都の職員に聞いた言葉です▼理由は「水の停止は命に関わるから」。そして、それが「行政が水道事業をやる意味だ」とも。そんな“常識”から、都政はいかにかけ離れてしまったのか、11月20日号で報じた公営企業決算特別委員会の質疑で驚きました▼日本共産党の和泉なおみ都議が取り上げたのは、料金滞納などによる給水の停止が、今年度は前年度より倍増している問題。理由の一つと指摘したのが、滞納家庭を訪問して催告し、生活困窮が伺えるなら福祉行政につなげる取り組みを、「業務効率化」の名で廃止したことです▼同じ号では、杉並区で岸本聡子新区長のもと、区民参加で新たな区政が始まっている姿も紹介しました。その岸本氏が国際NGOに勤めていた際、専門としたのが水道事業です▼岸本氏の著書「水道、再び公営化」では、世界各国で、効率化を目指したはずの水道事業民営化が失敗し、安全で安価な水を取り戻そうと、市民運動によって再公営化が進んだことを紹介しています。新自由主義の流れに抗して、住民と地域の暮らしを守る自治体を市民運動でどうつくりあげるか、東京にとっても重要な課題です。