「対話から始まる」へ歩み 杉並区 岸本区長が会見

 杉並区の岸本聡子区長は9日、記者会見し、選挙公約「さとこビジョン」実現に向けた取り組み状況について、「着実に歩みを進めている」とし、道路計画の見直しや補正予算案の内容について説明しました。
 「私が掲げた『対話から始まる みんなの杉並』がいよいよ始まったなという実感を持った」。岸本区長は強調しました。その事例として挙げたのが、前区政が改定作業を進めていた「区まちづくり基本方針」の見直しです。骨子案の策定について、いったん中断し、「まちづくりを脱炭素化の視点から推進する方針」を中心に据えて大幅修正した上で、意見募集で寄せられた区民の意見を反映したものに改めました。

 前区政の「まちづくり基本方針」に示された道路計画を巡っては、住民から強い反対の声が上がり、区長選で大争点となりました。岸本区長は「地域住民や関係者と丁寧に話し合い、反対意見が強くある場合は凍結し、見直します」と公約していました。
 骨子案を策定するにあたって岸本区長は、素案への意見募集を10月1日から17日間実施。期間後も含め575件にのぼる意見が寄せられたと紹介(ホームページで公開)。田中良前区長が認可申請し、都が認可した道路が通る西荻・高円寺地域では、まちづくりの中で道路を考える対話集会「さとことブレスト」をスタートさせ、これまでに2回開催。今年度中に計8回開催を予定しています。区は骨子案を基に年内に「まちづくり基本方針」(案)をまとめ、区民からの意見募集をした上で、来年3月に決定するとしています。

児童館廃止計画 方向変えたい
 岸本区長は前区政のもとで決めた区内児童館の全廃計画について、「来年度以降、廃止の方向を変えたい。区民の意見を聞いていきたい」とのべました。
 予算措置など前区政のもとで今年度の廃止が決まっている下高井戸児童館については、「児童館という形では存続できない苦しい判断はあった」としつつ、「区民の意見を聞きながら杉並らしい子どもの居場所を確保したい」とのべました。
 前区長のもと区内に41あった児童館の再編が進められ、これまで14館が廃止されました。区長選でも大きな争点となり、岸本区長は「児童館を地域ごとに配置し、以前と同じ数に戻すことを目指します」と公約しました。

「ハラスメントゼロ」を宣言
 岸本区長は、この日の記者会見で、区役所におけるハラスメント根絶に向けた「ハラスメントゼロ宣言」を発表。「あらゆる種類のハラスメントをなくし、全ての職員が安心して自身の能力を余すことなく発揮できる職場をつくっていきたい」との決意を表明しました。ハラスメント根絶は、「さとこビジョン」にも盛り込まれています。
 杉並区はハラスメントの実態を把握するため、初めて非正規(会計年度任用職員)を含む全職員約6000人にアンケート調査を8~9月にかけて実施。回答のあった2701人分をまとめた結果、過去3年の間に「ハラスメントを受けたことがある」「目撃したことがある」と答えた職員は、いずれも15%を超えました。種類ではパワハラが圧倒的多数で、管理職からのものが最多でした。
 岸本区長は「ハラスメントは個人を傷つけるだけでなく、さまざまな面で大きな損失を生じさせる行為であり、絶対に見過ごせない」と強調。「わたしはしない、見過ごさない」をスローガンに掲げ、専門家や職員団体と連携して具体的な取り組みを検討するとしました。

9億円余の補正予算を提案
 岸本区長は11月16日開会予定の区議会定例会に提出する補正予算案(28事業、総額約9億4000万円)を公表しました。
 食材や高熱費などの物価高騰の影響を受ける私立幼稚園や民間学童クラブは都の補助対象から外れるため、国の地方創生臨時交付金を活用して、保育所に準じた補助を実施。交付金や都補助の両方とも対象外となる指定管理保育所、グループ保育室などに対しては、区独自の財源で補助します。予算額は約2億7000万円。
 前区政の区立施設再編整備計画や、指定管理者制度導入による効果を検証するための予算を計上します。また、住基ネットを不正に検索して得た個人情報を外部に漏洩した容疑で区職員が逮捕された問題で、再発防止のための対策委員会を設置するための経費を盛り込みました。