再開発で危機深まる
 再開発事業が進む神宮外苑地区(新宿、渋谷、港区)のイチョウ並木を巡って、日本イコモス国内委員会(委員長=岡田保良国士舘大学名誉教授)は10日、都庁で記者会見し、一部が枯れるなど生育状況に問題があるとの調査結果を公表しました。日本イコモス理事の石川幹子中央大学研究開発機構教授が10~11月、樹木医の教育に関わる浜野周泰東京農大客員教授と共同でイチョウ並木146本を調査しました。
 神宮外苑のシンボルとしてイチョウ並木は観光名所となっており、葉が黄色に色づく秋は観光客で賑わいます。石川氏は100年の時を超えて継承されてきた、このイチョウ並木が危機にひんしていると警鐘を鳴らします。
 調査によると、6本のうち1本は4段階で最低のD「著しい枯損」と評価。残り5本はC「要注意」と評価しました。Dと評価されたイチョウ(高さ23㍍、幹回り2㍍83㌢、枝張り10㍍)は、黄色い葉を輝かせる周囲のイチョウとは対象的に、上半分ほどの葉が全て落ちて幹や枝がむき出しになっていました。
 浜野氏は倒木の可能性もあり、枯れた部分の切断など大規模な措置が必要といいます。「イチョウは生命力の強い木。生育環境を整えれば元の円錐形の樹形に戻る可能性はある」とした上で、元に戻るには100年以上はかかるのではないかと推測しました。

根からの養分が不十分な可能性
 6本全てが4列の並木のうち、飲食店やテニス場が接近する西側の一列に集中していました。
 要因について浜野氏は、「根から養分や水分を十分に吸収できていない可能性がある」と推測。再開発で新神宮球場が造られた場合、イチョウ並木の西側と8㍍しか離れていないことから、「変化がより大きくなる可能性がある」と懸念を示しました。
 石川氏らは都環境影響評価審議会で示されなかった、再開発に伴う樹木の検証可能な「毎木調査」のデータ提示を事業者に求めました。その結果公表されたのは、2018年12月~19年1月に行われた4年間のデータでした。9割以上を「健全」とするA評価で、残りも「比較的良好」のB評価。今回問題が指摘された6本はいずれもA評価でした。

共同で現地調査改めて申し入れ

 石川氏は事業者に対し再三、新しい情報を提示するよう要請したにもかかわらず、4年前のまま更新されていないと批判。そのため日本イコモスが独自に調査したとしています。石川氏は事業者に対し、学術調査に基づく科学的な保全のための最新データの提示とともに、現地での共同調査を改めて申し入れるとしました。
 神宮外苑の再開発事業は、三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、日本スポーツ振興センターの4者が進めています。樹齢100年を含む大量の樹木伐採が計画されたことから、大きな批判を招いています。
 日本イコモスは対案を示して、計画の見直しを求めています。