都立・公社病院の独法化/命のとりで縮小・患者負担増・職員の削減

6月25日告示、7月4日投票の東京都議会議員選挙で争点となる都立・公社病院の独立行政法人化について、都立病院の充実を求める連絡会の氏家祥夫代表委員に独法化の実態や問題点を聞きました。(菅原碧衣)


抜本拡充を

都立病院の充実を求める連絡会代表委員・氏家 祥夫さん

14ある都立・公社病院は、都内の感染指定病床の80床、7割を担っており、コロナ禍で大きく増床され、都民の命を守るとりでとなってきました。2回目の緊急事態宣言が出された1月には、都立広尾病院と東京都保健医療公社の荏原病院、豊島病院がコロナ専門病院となり、わずか14病院で2000床(2021年6月現在)都内コロナ病床の36%を担っています。

都立病院は、明治時代の初めに、赤痢やコレラ等の感染症や精神疾患、生活困窮者対策として設置されたのが始まりです。現在は、感染症、救急、災害、難病、小児、周産期、精神科、島しょ医療など、民間で採算の取れない行政的医療を担っています。六つの公社病院でも民間では難しい行政的医療を行っています。

コロナ禍で大きな力を発揮できたのも人工心肺エクモや陰圧室などの高度な設備を備え、医療従事者の訓練ができているからです。コロナ禍を経験して都立・公社病院の抜本的拡充こそ必要です。

小池都政は22年度から独法化を進めようとしています。都は都立病院に年400億円、公社に100億円を出して支えていますが、独法化でこれらが削減されるのは必至です。効率・経営優先で独立採算の強化、患者の負担増、職員の削減、労働・雇用条件の切り下げが起こるでしょう。2009年に独法化された健康長寿医療センター(板橋区)では、高額な個室が4分の1を占める一方、常勤医師も18年度から14人も減っています。

日本共産党の都議会の論戦で、400億円の赤字説の論破、予算・給与・採用など都直営でも可能なこと、大阪府・神奈川県の独法化の経営危機の実態、独法化で海外の富裕層向けの「医療ツーリズム」の検討の暴露など独法化の問題を全面的に明らかにしてきました。

2006年独法化された五つの大阪府立病院では、初年度に職員賃金17.2憶円を削減し黒字化にしたと宣伝しましたが、9万3千円の分娩(ぶんべん)料が18万円、個室料金が1 日最大で5万9千円になるなど患者負担も大幅に増えています。

独法化反対署名に取り組む都立病院の充実を求める連絡会などのメンバー=2020年12月(都立病院の充実を求める連絡会提供)

都議選争点

都議選は、都民の命を守る都立・公社病院を拡充するのか、それとも都民に必要な医療を削り、独法化を許すのかが焦点です。

日本共産党は独法化に一貫して反対しているのに対し、小池都政の与党である都民ファーストの会は、都の財政支援を「赤字」だと攻撃し、自民・公明は独法化の旗振りをしてきました。都は独法設立に必要な「定款」を出せませんでした。

都議選で日本共産党と独法化に反対する議員を増やし、独法化をくい止め、都民の命を守ろうと訴えていきたい。

(2021年6月10日付「しんぶん赤旗」より)