政府は7日、新型コロナ感染拡大の緊急事態宣言とともに、経済の落ち込みに対応する緊急経済対策を公表しました。1世帯あたり30万円の現金給付などを盛り込んだものの、対象は限定的。焦点だった、休業による損失の補償も不十分です。自粛要請に深刻な影響を受けている、ライブハウスや文化関連の企業、団体を取材しました。

 「東京都からの通知が、1日に届きました。『感染拡大を防止するため、自粛にご協力を』と書いているだけで、あとは各店舗に判断をゆだねている。無責任としか言いようがないです」
 通知の文書を手に話すのは、新宿区のライブハウスで店長を務める猪狩剛敏さん(55)です。通知は、小池知事が3月25日の記者会見で、ライブハウスを名指しして「自粛のお願いを個別に行う」と述べたのを受けて出されました。

 猪狩さんのライブハウスでは、知事会見を受けて対応を協議。「出演者やお客さん、スタッフに判断を委ねるのは申し訳ない。首相や知事が無責任に自粛要請するだけなら、誰かが責任をとらないといけない」と話し合い、12日まで店を休業することを決めました。その後、4月末までの休業延長を決めています。

 休業しても、チケットの払い戻しや、出演予定だったバンドへの連絡など、社員が出社し続けています。「いつも以上に忙しいくらいだけど、一銭の稼ぎにもならない。がらんとした店内を見ると、今後への不安が募ります。家賃やスタッフへの給与などの支払いが迫っています。納めてきた税金で、きちんと補償してほしい」と猪狩さんは話します。

収入半減で済まない

 政府の要請でイベントが中止になり、休校で芸術鑑賞公演もなくなるなど、文化関連の団体や企業が苦境に立たされています。
 民族歌舞団荒馬座(板橋区)は、保育園や学校などの芸術鑑賞公演の他、自主事業や民舞・太鼓の教室を行っています。
 制作部の岡宏司さんは「学年末3月の体験学習、新年度の4月以降の芸術鑑賞教室や公演も軒並みなくなってきています。延期ならまだしも、『今年度は中止』となることもあり厳しい状況です。今年度の収入は半減では済まないでしょう」と話します。
 学校公演は、中止でも家庭から鑑賞料を集金できないなどの事情で、キャンセル料を請求できないことが多くあります。「私たちの気持ちを支えるのは、子どもたちの笑顔です。見通しがない今、子どもたちに会いに行けないのが辛い」(岡さん)。

 歌声喫茶ともしび(新宿区)を運営する株式会社ともしびも、学校でのオペレッタなどの出前公演が、3月はすべてなくなり、以降も6割以上の減少だといいます。
 うたごえ喫茶も、客数が約3分の1に。代表取締役の斉藤隆さんは「見送る際も『また来てください』とは言いにくい。この仕事に関係して40年近くで、初めての出来事です。東日本大震災の時はガクッと売り上げが落ち込みましたが、支援公演なども企画され戻ってきた。今回はそれ以上の影響」と嘆きます。

 斉藤さんは、「返済を考えると融資は怖い。雇用調整助成金も100%支給という保証はありません」と話します。
 文化への支援を求める声も急速に高まっています。ライブハウスの関係者が、文化を生む場が休業するための支援を求め、「セーブ・アワー・スペース(私たちの空間を守って)」と名付けた署名は、3日間で30万人分を超えました。
 ドイツ政府は「一度失われたものは早急には再建できない」として、数千億円規模の文化芸術への支援策を決定。フランスも文化芸術関係者の収入減への支援を打ち出しています。