参院選で焦点 無償教育が社会変える 期待します「暮らしに希望」提案 ②

2019年6月17日

心配なく学び、子育てしたい
 「希望がわく」「社会が変わるかもしれない」―。参院選挙へ、共産党が発表した「くらしに希望を―三つの提案」の一つ「お金の心配なく学び、子育てができる社会を」が若い母親や学生たちからも歓迎。教育関係者から「日本の未来社会を切り開く推進力になる」との声もあがっています。

子育てママ「希望わいてくる」
 保育士として働きながら、5歳と2歳の子どもを育てる大田区の小林真理子さん(33)。共産党の提案に「2人を保育園に預けているので、無償化になれば助かります。共働きじゃないと大変ですから」と期待します。
 小学6年生と5歳、3歳の子どもがいる荒川区の中川早苗さん(44)も共働き。5年前に購入した一戸建て住宅のローンを抱え、子育てや仕事、家事などで目が回るような忙しさです。
 「保育園料も給食費も無料になれば、いいですね。大学の授業料が半額、無償というのはもっとうれしい」
 長男の大学進学を考え、そろそろ塾通いをしなければと思っていた矢先。これから、下の子たちが相次ぐことを考えたら、将来は不安だらけです。「大学の学費が無償になるなんて夢のよう」
 無償教育の運動をすすめる「奨学金の会」会長の三輪定宣さん(千葉大名誉教授)の調べによると、各家庭の教育負担は異常です。それによると、子ども1人の幼稚園から大学までに必要な教育費の家計負担(2016年)は、国公立学校コースが1125万円、私立学校コースは2571万円にものぼります。
三輪さんはいいます。
 「こんな国ってないですよ。家計支出(2人以上の世帯)の年額平均は388万円。私立大へ通わせたら200万円かかり、さらに私立の高校生もいたら300万円になりますからね」

学生 学費半額、うれしい

 三輪さんが指摘するように、高等教育の高い学費と修学の困難さは際立っています。
 都内の私立大学のⅡ部(夜間部)に通う3年生の斉藤皐稀さん(20)は、経済的な理由で働きながら学ぶⅡ部しか進学の道はありませんでした。奨学金を借りれば〝借金漬け〟。それまでして大学へは行きたくない。不合格なら進学をあきらめる覚悟でした。
 入学後、高等教育無償化プロジェクト(FREE)と知り合い、メンバーになりました。そこで大学の異常な実態を、初めて知ったといいます。
 そのFREEが行った学生1000人の実態調査(2018年)によると、大学・学部を選ぶ際、6割の人たちが「学費のことを考えた」と回答しました。
 アルバイトをしている人は9割を超え、〝アルバイトで負担になっているものは何か〟の問いに、睡眠時間や学習時間が「削られる」と答えた人が5~6割も。進路が経済的な理由に左右され、学生生活が奪われているという実態が浮き彫りです。
 斎藤さんはいいます。
 「Ⅱ部の大学へ進んでよかったと思います。先生の問題意識を共有したり、最新情報を得たり。学ぶことが楽しい。課外活動を通じて色々な人と知り合い人間形成もはかることができます。学費の半額、無償化は学生にとっても、社会にとっても、絶対にプラスになります」

〝世界一の高学費〟
 三輪さんの調べで、OECD(経済開発協力機構)加盟国35カ国における教育予算の対GDP(国内総生産)比は、全ての教育段階で平均4・2%、日本は2・9%。高等教育では平均1・0%で日本は0・4%。いずれも最低。高等教育支出に占める公的支出と私費負担の比率は日本が32対68。公的支出は最低、私費負担は最高です。
 学費は調査したOECD30カ国の半数が無償。有償でも低額が一般的。学費が有償で給付奨学金がないのは日本だけ(調査時点の2015年)。(出典は「図表でみる教育―OECDインディケータ2018年版)

未来をひらく推進力に
千葉大名誉教授 三輪定宣さん

 無償教育を実現する上で何が問題か―。三輪さんは、日本の過重な教育費負担が「日本社会の疲弊と衰退の根源になっている」と指摘します。
 「奨学金を借りた学生が就職したら、毎月給料から2~3万円を返済することに。夫婦で、そんなことを20年も続けたらどうなるか。子どもを2人育てたいと思っても、1人にするかもしれない」
 学生はアルバイトづけで勉強時間ゼロ、体はボロボロということにも―。
 「学生や若者に、これほど冷たい国はありません。北欧などのように学費を無償にして社会が支え、学生はゆったりと学んで大学生活をエンジョイ。無償教育になれば、子育て世代のお母さんや、学生に希望を与えることになります」
 国連が、幼児から大学までの教育を無償とする教育条項を含む国際人権A規約を採択し、発効したのは1976年です。しかし、日本政府は無償教育条項(13条2項)を留保し、その留保を撤回したのが33年を経た旧民主党政権のときでした。それ以来、「政府の責任」で無償教育を導入することになったのです。
 三輪さんはいいます。
 「日本のような先進国は『即刻』が基準です。ところが、日本政府は高等教育の無償化に全く手をつけず、内外から批判が高まったのです」
 安倍政権は「大学無償化」などといいながら、学費を値下げすることもしません。授業料減免の対象になるのは全学生のわずか1割。しかも財源は消費税の増税です。
 三輪さんは、共産党の提案を評価しました。
 「政策が際立っています。すべての学生の授業料を『すみやかに半分に』とありますが、例えば5年以内と考えれば、来年度から24年度までに、私立大学の学費115万円が58万円に値下げされることになるわけです。給付奨学金の実施と併行して行われたら、効果は大きい。財源が恒久で可能という見通しも説得力があります」
 三輪さんは、無償教育へ、一刻も早い切り替えが必要だと訴えます。
 「所得にかかわらず、すべての段階でお金の心配なく学ぶことができる。そんな社会で育った子どもたちが20年後に社会の主役になれば、社会は変わります。未来を拓く新たな希望になるかも知れません」