「医療崩壊」から命守る 小池知事「体制は十分」と対策に背 共産党都議団

対策チームで知恵集め
首都東京の大型選挙として、国政にも大きな影響を与える都議選(6月25日告示、7月4日投開票)まで5カ月を切りました。国政、都政が、新型コロナ禍に無為無策と逆行の対策を続ける中、政治の転換を求める、重要な選挙です。日本共産党都議団は、前々回の都議選から2回連続の躍進で、都政を動かす重要な役割を果たしてきました。コロナ禍から命を守る医療体制をめぐる論戦は、その一つです。都政の各現場で、共産党都議団が奮闘する姿を追います。

クローズアップ都議選
「1週間、悲惨でした。コロナは、症状が軽くても、乗り切るのが本当に大変です」―東京の東部地域に住む47歳の男性が語ります。
12月22日に新型コロナの陽性がわかり、ホテル療養を希望しましたが、「軽症で優先順位が低い」と保健所に断られました。保育士の妻や、就職活動中の子どもたちにうつすわけにはいかないと、それから1週間、車中泊で過ごしたといいます。
自家用車に布団を積み込み、コンビニの駐車場に駐車。店員に怪しまれないよう、1日2回、別のコンビニに移動しました。家族におにぎりを差し入れてもらい、風呂は入れず、身体を拭くだけ。
「幸い、熱は出ませんでしたが、だるくて、寒いし、体が痛くて…。周りでは日常が動いているのに、自分は寝ているだけ。気分が本当に落ち込んだ」と振り返ります。

通常医療を圧迫
第三波の感染拡大が続く中、陽性でも入院やホテル療養ができない事態が広がっています。自宅で療養していて、亡くなるケースも出ています。
中野区で飲食店を開く荒川節雄さん(67)も、新型コロナにかかり、症状があったのに、病院に入れなかった一人です。
年明けから寝込む日が続き、1月15日に陽性が判明。熱はなく軽症とされ、自宅で療養しました。「治療法も、薬もない。寝ているしかできず、すごく不安でした」(荒川さん)。おかゆを食べて過ごし、体重が5~6キロ落ちたといいます。
東京社保協会長で、都内で内科クリニックを開く吉田章さんは、東京の医療の現状を、「自宅療養や、入院調整中の人が何千人にも増え、医療崩壊です」と指摘。「小さな病院では対応できない病気の患者さんを受け入れてきた大病院から、コロナ対応で患者を受けられなくなると連絡が来ています。夏の感染者数が少ない時期に、打つべき手立てを打たなかったために、通常医療にしわ寄せがきて、必要な医療を受けられない状態が生まれている」と危機感を募らせます。
小池都知事も、第一波の感染拡大が収まった後、「医療提供体制は十分に確保されている」(6月30日、記者会見)と繰り返し述べ、感染拡大に備えた医療体制の強化に実効ある手立てを取ろうとしませんでした。
日本共産党都議の藤田りょうこさんは、看護師として働いてきた経験から、「都は、病床の確保数と入院者の数に差があり、余裕があると言い続けてきました。しかし、『確保している』病床も、完全に空いているのではなく、患者さんがいます。コロナ陽性者を受け入れる準備には、時間がかかる。そういう医療現場の実態が分からないまま、病床確保の数字だけを見ていた」と憤ります。

専門病院を提案
日本共産党都議団は、コロナ感染拡大による医療崩壊を防ぐ対策を繰り返し求めてきました。
その一つが、昨年4月、新型コロナ対応の補正予算案などを審議するために、都議会が設置した、特別委員会での論戦です。
特別委員会の設置が決まると、都議団内に対策チームを設置。東京都医師会の尾崎治夫会長など、さまざまな関係者にも話を聞き、「知恵を集めて、質問を練りあげた」(藤田都議)といいます。
同特別委員会では、あぜ上三和子都議が質問に立ち、医療体制をめぐっては、コロナ対応の専門病院の開設、医療現場の支援、病床確保のための人的、財政的な手立てなどを要求しました。
コロナ対応の都立の専門の医療施設は、12月に「旧都立府中療育センター」を改修した、専門病棟として実現しました。
年末年始には、都議団が求めていた、コロナ患者を受け入れる医療機関への支援として、重症で患者1人あたり1日30万円などを支給。年明けには、コロナから回復した患者の転院を受け入れた医療機関に対する、患者1人当たり18万円の支援金の支給が実現しました。

予算案にがく然
コロナ感染拡大から都民の命を守る医療を確保するために、何が必要か―。藤田都議は、「大きな問題が、医療現場に必要な人手を増員しようとしない、都の姿勢」と指摘します。
1月29日に発表した、都の来年度予算案では、コロナ対応の最前線に立つ、都立病院での増員計画は医師1人、看護師8人分のみでした。
「コロナ病床で患者さんをケアするには、手指消毒や、感染対策の防護具の脱着、さらに、マスクでコミュニケーションを取りづらいことなど、通常より大幅に人手が必要となります。コロナ病床を増やすなら、それに見合うスタッフを確保しないと現場がもたない。そう求め続けてきたのに、予算案を見て、がく然としました」(藤田都議)。
東京社保協の吉田会長は都政に求めることとして、家庭内に陽性者が待機しなくて済むようにホテル療養を抜本拡充することや、コロナ対応の専門施設の充実、医療現場の減収への支援、無症状陽性者を発見するためのPCR検査の大幅拡大を指摘します。
藤田都議は、「いま、東京都が抜本的な人的体制確保など、医療充実に乗り出さないと、助かる命が助からない状況が広がります。都の姿勢を転換させ都民の命を守るためがんばり抜く」と話します。