子ども医療費無料、町会支援 条例提案 区政を動かす

2018年11月22日

子ども医療費無料、町会支援 条例提案 区政を動かす
 都内区市では、まだ実現をみない小中学校の給食費を無料にする条例案が今年、港区議会に提案されました。共産党区議団が提案した3本目(前回選挙後)の条例案です。区民の要望を練り上げ、議案提案権を生かした共産党区議団の議会活動が、行政を動かしています。(松浦賢三)
 
 
学校給食無償化も提案
 同区議団(現在4人)は、区民から寄せられるさまざまな要望を実現するため、条例案をつくり提案型の議会活動をすすめてきました(別項)。子どもの医療費の無料化は、新日本婦人の会が当初、乳幼児医療費無料化を求めた請願署名運動をきっかけに制度がスタート。区議団は、無料化の対象と年齢を拡大するため条例を提案し、それによって現在、中学生まで医療費の無料が拡大されました。
 
 幹事長のいのくま正一議員は振り返って言います。
 
 「条例案は可決したことはなく、継続審議になることがほとんど。しかし条例提案がきっかけになり、区が実施するのが通例です。区は私たちの条例内容を超えたより高い制度を出さざるを得なくなるのです」
 
 町会の補助金を増額する条例は、そのいい例です。町会の中には、お祭りができない、役員のなり手がいないなど支援が必要な町会があります。議員団が考えた条例案は、とくに小さな町会のための「町会補助金」の増額でした。
 
 
共産党の姿、鮮明
 区の担当局と折衝しながら条例案を練り上げ、議会でも繰り返し補助金の増額を求めました。こうした議会活動の結果、区は議会で「(共産党の)提案の趣旨を踏まえ、対応していく」と答弁。2018年度から、小規模な町会が他の町会などとイベントをする際、上限50万円の補助を行うという制度が実りました。
 
 町会からは喜ばれ、申し込みは現在、5つある総合支所全てからあり、合計約10件に及んでいます。
 
 給付型奨学金の条例提案では、一人会派の2人の区議が賛同し、共産党議員団とともに6人が共同提案になりました。一人会派の議員は、共産党議員と共に提案者として説明し、質問にも答えました。区教委も、経済的な理由で大学へ行けない状況を改善したいと、国・都の制度や実施している自治体の調査・研究に着手。条例案は現在、委員会で審議中です。
 
 今年2月、小中学校の給食費を無料にする条例(予算額約5億5千万円)を提案しました。その議論を通じ、区民の願いを実現するために奮闘する共産党の姿が浮き彫りになりました。
 
 港区は子ども急増区の一つ。教育費への補助などの子育て支援は切実です。とくに学校給食費の無料化は若い母親たちの要望の一つでもあります。
 
 学校給食費は現在、小学校低学年が月4170円、中学年4560円、高学年4950円で、中学生は5590円。年額約4万5千~6万円になります。区議団は「義務教育は無償」と定めた憲法を守る立場から、国を動かすためにも父母負担の軽減を、と訴えました。提案に当って都議選公約などを見ると、自民、公明など各党のほとんどが「学校給食の無償化」を公約に掲げていました。議員団も「これじゃ『否決』はないだろう」と思ったほどです。
 
 ところが、各党へ共同提案を申し入れたところ賛同者はありません。共産党だけの条例提案となり、本会議の採決でも「賛成」は共産党議員だけ。自民、みなと政策会議(国民民主、立憲、社民、無所属の会派)、公明の各党と一人会派3人が反対しました。
 
 
各党・会派が反対
 その理由は、「財政負担が大きすぎる」(自民)、「給食費の無償化は国の仕事」であり、港区がやれば「近隣から子どもが集まり大変な状況が生まれる」(みなと政策会議)などという無責任な態度。日本維新の会も、給食費の食材費を親が負担しないのは「子育ての意識を涵養するのにいかがなものか」と反対しました。
 
 各党の主張に、共産党の風見利男議員は自治体が無償化することに文科省は反対していないことや、国に実施させるためにも意義があることを強調。膨大な積立金がある港区は、毎年4~5億円の不用額(支出せずにすんだ予算額)があることなど、財源を示して賛同を呼びかけました。
 
 いのくま議員は、自民、公明などの各党の態度について「選挙では学校給食の無償化の公約をかかげながら、港区議会で否決するのはいかがなものか」と公約違反を指摘します。
 
 条例案の成り行きを注目していた区民の一人、小沢奈々子さん(41)は中学3年、小学1年、ゼロ歳の3人の子の母親。「給食費を無料にしてほしいと思っていた」と言い、ほとんどの政党が選挙公約に違反して条例提案に反対したことに失望していました。
 
 3人に1人以上が私立中学へ進学する港区。小沢さんは、これからますます増える教育費が心配です。
 
 「給食費の引き落としが年間10万にもなります。子どもが塾へ通うようになり、大学進学のことを考えると貯金をしなければ…」
 
 
全都で212件
 この4年間、共産党の区市町村議員団が住民政策のために行った条例や修正案などでの議案提案権の活用は、全都で148件の条例提案、64件の予算修正(修正または組み換え提案)。共産党都委員会に報告のあったものだけでも計212件にのぼっています。こうした議会活動は、自治体の条例や施策に結実する成果を生み出しています。