都議会本会議で小池百合子知事の所信表明に対する代表質問が9月28日、一般質問が29日に行われ、都政の重要課題について論戦しました。日本共産党は代表質問に斉藤まりこ都議(足立区選出)、一般質問に清水とし子都議(日野市選出)が立ちました。

第七波の教訓 次に生かせ
 斉藤都議は過去最悪の感染爆発となった新型コロナ第7波で、深刻な事態を招いた反省と教訓を次の対策に生かすことを強調。▽引き下げられたコロナ検査の診療報酬を元に戻すことを国に求める▽医師会が進める「センター方式の発熱外来」などの医療機関への支援強化▽陽性者登録センターから直接オンライン診療につなげ薬も処方する仕組み作り▽多摩地域の保健所の早急な増設・拡充▽介護・福祉施設の職員増員や給与引き上げなどの支援の抜本的強化―を提案しました。
 また7月に独立行政法人化された都立病院のコロナ病床利用率が4割にとどまったことを受け、職員の増配置や、コロナに感染しても入院先確保が難しい患者を独法化前と同様に最大限受け入れるよう要求。小池知事は「独法化前と同様に引き続き、重症・中等症の患者や新型コロナの症状は軽くても重い基礎疾患のある方、障害のある方などを積極的に受け入れていく」と答弁しました。

きめの細かい暮らし支援を
 斉藤都議は小池知事提出の補正予算案(総額6135億円)について、物価高騰対策は370億円(全体の6%)にすぎず、不十分だと指摘。「都民の暮らしを守り、経済の回復を後押しするには、さらに手厚く、きめ細やかな支援が必要」だと強調しました。
 その上で▽上下水道料金の減免▽来年度から実施予定の高校生世代(18歳まで)の医療費助成の完全無償化▽小中学校の給食無償化と特別支援学校や定時制高校など都立学校の先行実施▽学生への直接支援、学生支援に取り組む大学への支援▽学生を所管する都の組織の設置▽都営住宅の約12%、約3万戸に及ぶ空き住戸の積極活用による新規募集増―を提案しました。
 小池知事は「都民の暮らし、東京の経済を守るため、必要な施策を機動的かつ的確に講じていく」と答弁。野間達也総務局長は学生、若者施策の推進について「適切な執行体制の下、学生、若者施策に取り組んでいく」、都営住宅について山口真・住宅政策本部長は「今後とも募集戸数の増加を図っていく」と答えました。

18歳までの医療費完全無償化を
 18歳までの医療費助成について、西山智之・福祉保健局長は「実施内容は実施主体である区市町村が、それぞれの地域の実情を勘案しながら定めるもの」と答弁しました。同助成制度は所得制限(4人家族で年収約960万円)や一部自己負担(通院時200円)を設けた上で、区市町村との費用負担の割合を2分の1(23~25年度は都が10割負担)とするもの。
 同制度を巡っては、23区でつくる特別区長会が都の制度に上乗せして完全無償化する一方、多摩26市では、各自治体の財政力が異なるため、完全無償化は4市(武蔵野、府中、調布、あきる野)にとどまっています。
 斉藤都議は「さらなる多摩格差になる」として、完全無償化を強く求めました。西山局長は「区市町村との間で協議の場を設置し、検討することとしている」と答えました。

東京五輪汚職徹底検証迫る
 東京五輪を巡り組織委員会の元理事や事業者トップら関係者が受託収賄や贈賄の容疑で相次いで逮捕され、大きな問題になっています。組織委は都とJOC(日本オリンピック委員会)が設立し、広告代理店をはじめ企業の社員や都職員が多数派遣され、「みなし公務員」と扱われ多額の税金が投入されました。ところが小池知事は所信表明で、この問題に一言も触れませんでした。
 斉藤都議は「都合の悪いことにふたをする姿勢は許されない。次々と疑惑が明らかになり、底なしの様相だ」と批判。「都には五輪開催都市としての責任がある」として、関係職員の聞き取り調査や非公開情報の公開など、都として徹底検証するよう迫りました。
 また前会長が逮捕された紳士服大手AOKIが都と組織委の共同実施事業でも、スポンサーとして優先的に1億8千万円の契約を結んだことを指摘し、不正の有無を調べるよう要求。神宮外苑再開発の背景にも五輪をめぐる巨大利権があり、森喜朗元首相らが深く関与してきたとし、メスを入れるよう求めました。
 小池知事は「事件は誠に残念。(組織委の)清算法人に捜査への全面協力を求める」と答えただけで、都としての責任を示しませんでした。

英語会話テスト「不当な支配」
 斉藤都議は都教育委員会が都内の公立中学3年生約8万人を対象に11月に実施する、英語スピーキングテストについて、「区市町村教育と公立中学校の自主性、自立性への侵害であり、都教委による不当な支配にあたる」とのべ、中止を強く求めました。
 同テストは通信教育・出版大手のベネッセコーポレーションが都の委託を受けて実施するもので、教育関係者から採点の公平性・透明性をはじめ様々な問題が指摘されています。保護者らテストの停止を求める都民53人が、公金支出中止と事業の停止勧告を求めて住民監査請求を提出。15日の文教委員会では、テストの延期、見直しを求める請願が「継続審査」になっています。
 斉藤都議は、学習の到達度を測るアチーブメントテスト(学習達成度を測定する学力テスト)である同テストは、入試の「学力検査」と違い区市町村教育員会や公立中学校に強制できないのに、テストの結果を入試の合否判定に使うとしており、「事実上の強制」だと指摘。「入学試験のあり方を根本からゆがめる英語スピーキングテストは中止すべきだ」と主張しました。
 浜佳葉子教育長は「着実に実施する」とテスト強行に固執。「英語スピーキングテストは学校の授業で学んだ内容の到達度を把握するとともに、英語指導の改善・充実に活用する教育活動の一環として実施するものだ」と強弁しました。
 再質問に立った斉藤都議は、「『教育活動』は学校や教師が行うもので、教育委員会は内容を強制できない。それなのに都教委は英語スピーキングテストの結果を入試に使うことで、実施しない選択肢をふさぎ、事実上強制している」と批判。「都教委による区市町村教育委員会や公立中学校の自立性・自主性への侵害であり、教育基本法16条が禁止する『不当な支配』そのもので許されない」と、ただしました。浜教育長はまともに答弁できず、「教育活動の一環」と繰り返しました。(2面に続く)

共にたたかい、止めよう
インボイス制度 中止求めるデモ

 導入が1年後に迫るインボイス制度(適格請求書)の中止を求め、個人事業主やフリーランス、税理士が集まる市民団体「STOP!インボイス」が1日、初めての街頭デモ「銀座ピクニック」を行いました。
 SNS(ネット上の交流サイト)で開催を知った約100人が参加。「デメリットのみのインボイス反対」「フリーランス淘汰のインボイス反対」などとコールをあげながら、日比谷公園(千代田区)から紺屋橋児童遊園(中央区)まで約1・6㌔の道のりを歩きました。
 参加したフリーランスの女性写真家(29)は、「インボイスは自分だけの問題ではなく、日本全体の文化衰退につながるのではないか」と危惧し、「フリーランスの人たちはクライアントとの関係を考えると、表立ってデモに参加できない人も多い」と指摘。同人誌を作っている大学2年生の男性(20)は、「卒業後も創作活動が続けられるとうれしいが、コロナ禍で打撃を受けている人が多い。さらに増税が繰り返されると絶対に無理だろう」と話しました。
 茨城県「県南農民組合」事務局の山口徹さんは、「9月の市議会にインボイス制度の実施中止を求める請願書を提出し、本会議で採択された。保守系議員にも働きかけると、インボイスの危険性を理解してくれた。まだまだインボイス制度は知られていない。自信を持って広めていきたい」と語りました。
 デモ終了後、主催者のひとりでフリーライターの小泉なつみさんは、「デモに参加したことがないのに、主催するという荒行をやった」と述べ、「始まっていないからこそ止められる。一緒にたたかっていきましょう」と参加者に呼びかけました。
 「STOP!インボイス」は26日、日比谷公園大音楽堂(千代田区)で初の大掛かりなイベントを予定しています。

お断り 新型コロナウイルス感染者数の全数把握が9月26日から簡略化されました。一部データが公表されなくなったため、「都内の状況」も掲載項目を変更します。

 訓練中に受けた性暴力を実名で告発していた元自衛官の五ノ井里奈さんに、防衛省が29日、事実を認めて直接、謝罪しました。謝罪を受け五ノ井さんは、「認めるのが本当に遅い。加害者に直接謝罪に来てほしい」と語りました▼五ノ井さんは8月に、10万人分を超える署名とともに、第三者機関による公正な調査を求めていました。陸上自衛官であった2021年に複数の自衛官から性暴力を受け、自衛隊の警務隊に被害届を提出したものの当時は、証拠不十分で不起訴処分になっています。五ノ井さんは「あったことをなかったことにされた。どこかで誰かがこの問題を変えないと変わらない問題」と調査を求めた理由を語っていました▼勇気ある告発には、シスターフッド(女性同士の連帯)をはじめとした、さまざまな応援が広がりました。五ノ井さんも自身のツイッターで、「89歳のお姉様からお手紙頂きました」として、元教員で自身もさまざまな性被害を受けたという女性からの「貴女の実行力に拍手 御身大切に」という手書きのメッセージを紹介しています▼自衛隊内ではこれまでも、セクハラやパワハラ、いじめなどのさまざまな事件が起きています。今回の告発を、人権侵害一掃の機会にすることが求められています。