東京民報社の和泉尚美代表取締役(前日本共産党都議団幹事長)の都政ウオッチ連載。今回は対談の特別編として、今期の都議の任期が7月で1年を迎えた中で、日本共産党都議団の里吉ゆみ幹事長、とや英津子政調会長、田中とも子都議と、この1年を振り返ります。


都議任期1年対談特別編
和泉 みなさん、新しく役員になって1年、田中さんは24年ぶりに都議に復帰して1年、振り返ってどうですか。
とや この1年間、「生活できる東京へ」をスローガンに条例提案は12本、申し入れや声明発表は他会派と共同のものを含めて35回以上、都議団による政策問題などでの調査結果の会見を7回、取り組んできました。本当に忙しい毎日ですが、14人の議員だけでなく、事務局の皆さんの力もあってこそ、ワンチームでやってこられたと思います。
里吉 提案してきた条例案はどれも、都民の切実な要求に基づくものです。まだ条例提案には至っていないけれど、都議団の各チームで準備を進めているものも、たくさんあります。私たちが条例提案するときには、どれだけの費用がかかって、どう捻出すれば財源を確保できるのかという、予算の裏付けもきちんと行います。条例案にまとめたということは、都政がやる気になれば、できるという証明なんです。
田中 都議団が、毎年の予算の組み換え提案をしていることで、予算の裏付けもしっかり取って条例提案ができる、これはとても大切な取り組みだと思います。24年前の一期目の時に比べて、条例提案や、さまざまな調査、申し入れなど活動が大きく広がっている都議団に、この1年間、本当にびっくりしながら参加してきました。
和泉 都議選で3回連続、躍進し、野党第一党になるなかで、都議団の役割が広がり、新たな仕事にも取り組んできました。それを、議席が減って野党第二党になった中で引き継がないといけない。14人の議員と、事務局のみなさんは、本当に大変だったと思います。
チームが切磋琢磨
田中 都議団には、さまざまなチームがあります。常設のチームだったり、臨時でつくったり、あるいは多摩といった地理的な考え方のチームだったり。それぞれが、毎回の代表質問に向けて、何を取り上げようかとか、条例案を出せないかと、課題をピックアップして議論する。「うちのチーム、条例案、出していないぞ、まずい」とか(笑)、それぞれのチームが切磋琢磨しているのが、すごく良いですよね。
里吉 条例提案が、確実に都政を動かしています。都立の火葬場の火葬料をゼロ円にする条例案は、否決はされましたが、今年6月から稼働した都立瑞江葬儀所の新しい火葬施設は、値上げがありませんでした。新規の施設をつくったら、値上げするのが都政の通例なので、異例のことです。
とや 条例案とともに、調査活動も重視してきました。保育園の給食費負担軽減や、エアコン設置、教育費無償化など、各自治体がどんな取り組みを実際にやっているのかが分からないと、広域自治体としての都がどんな支援をする必要があるのかもわかりません。そうした調査にも、力を入れてきました。各自治体の平和事業の調査などは、区市町村議員団にも、他の自治体の取り組みが分かると喜ばれました。
チェックの役割が
和泉 会派の数が大きく増えました。他党との関係はどうですか?
とや 参政党などが入ってきて、右翼的主張を都議会の場で展開するなかで、それに影響されて
排外的な主張を自民党もするようになっている。そこはぜひ、押し返していきたいですね。
里吉 ほとんどの政党が、都政のチェック機能を果たしていないのが大きな問題ですよね。以前の与党会派には少しはあったような、知事や局に苦言を呈するような質問がなくて、知事の応援ばかりになっています。
田中 ひどかったのが予算議会で、予算書をなぞるような質問ばかりで、何のための質問ですか、と聞きたくなりました。
とや 都に突き刺さるような質問を私たちがすると、都を守るような質問をする。思考停止があるんだと思います。英語スピーキングテストのように、誰が見ても問題があるし、子どもたちを傷つけていることでも、都を追認してしまう。都民と一緒にはね返していかないと、と思います。
同時に、私たちは論戦でさまざま意見が違うことはあっても、共同できることは、共同する立場を貫いてきました。関東大震災の朝鮮人虐殺をめぐって小池知事に追悼文を出すよう求める申し入れや、英語スピーキングテストの入試活用中止を求める議員連盟、外苑再開発の中止を求める議員連盟など、都民のみなさんの運動と連携した野党共闘による取り組みを大切に続けてきました。
被爆実相聞く場も
和泉 他会派にも働きかけて、都議会全体を動かしていく活動は、都議団が前期、野党第一党になったなかで発展した、特徴的な活動ですね。議会のなかで多数派をつくるために、どう議論をまとめていくか、都議団自身も、力をつけてきた部分だと思います。
とや 今期は、都議会内での「原爆被爆の実相を聞く会」を、東友会のみなさんの協力も得て、10月に開くことができました。自民党、公明党も含めて、ほぼ全会派が参加しました。朝鮮学校への補助金復活を求める勉強会の活動では、学校見学に自民党議員も参加しています。都民の運動が広がって、与党会派も動かざるを得ない。都民の力は大きいと感じます。
動画で声伝える姿
里吉 こうした共同とともに、都議団としては、必要な課題には、間髪入れずに申し入れなどを行っていこうと取り組んできて、この1年間で35回以上の申し入れや声明を発表してきました。
和泉 申し入れや記者会見は、意識して重視してきたのですか?
里吉 議会の定例会は、年に4回しかないし、質問時間も短くなってしまいました。定例会まで待っていたら間に合わない課題や、質問時間の都合で、入りきらない課題などは、申し入れや記者会見で対応しようと取り組んできました。人数が少なくなっている分、申し入れの文章をつくったり、会見の準備をしたりも大変になっていますが、みなさん積極的に取り組んでくれています。
都議団に、「ネットSNSチーム」ができたのも大きいですね。申し入れや会見の様子を動画で撮って、ショート動画にしてSNSで発信する。都民の要求や声を都政に伝えている姿を紹介するために、動画はとても有効なツールです。
都政の軸足変える論戦を
和泉 この1年間、毎回、代表質問を傍聴しています。これだけの中身を、時間内によくまとめたなと毎回、思います。
田中 代表質問に結実させる大変さを、参加して実感しています。今回の定例会で何を取り上げるのか、みんなで徹底して議論してまとめていく。その芯が座っているから、質問も鋭いものになるんだと実感しました。地域でも、自信をもって私たちの質問を紹介できます。
里吉 都議団の中では、それぞれのチームに属していても、地元に戻ると、あらゆる分野の相談や情報が寄せられます。全員が参加する論戦の検討会で、それぞれの地元で起きている課題や現状を出してもらうことで、質問が深まっていきますね。
和泉 そうやって、都議と事務局の全員で質問を練り上げていくのは、共産党都議団の特徴であり、財産ですね。
とや 事務局の皆さんは、長年にわたって、それぞれの分野の都政の動きを系統的に見てきたエキスパートです。この力も本当に大きいし、共産党都議団ならではです。
里吉 同時に、質問準備の仕方も進化していて、今期は、全体での検討を一定、進めたところで、チームリーダー会議を開いています。質問時間が短くなった中では、内容を鋭くするために、テーマを絞る必要がある。チームリーダー会議で今回の質問のポイントはここに置こうと議論して、準備を進めています。
否決されても実現
里吉 そういう取り組みで、この1年間、たくさんの成果を実現してきましたが、やはり前期、前々期からの積み上げが大きいですね。都営住宅も、長年、対象者を絞り込んで、希望者が入れない状況になっている問題を、繰り返し質問してきました。今期は、その実態をアンケートで明らかにしようと取り組んで、シンポジウムも開きました。住宅問題を専門とする研究者からも、「自分も分析してみたいので、資料が欲しい」と注目されています。
とや 公共交通でも、民間バス運転手の離職防止のための住宅手当の支援などが実現しました。住宅問題でも、公共交通の問題でも
都議団として政策提言をまとめ、権利として位置づけたことで、論戦や調査が大きく発展しました。
里吉 全都で実現した学校給食の無償化が成功体験になっています。最初に質問した時はひどい答弁だったり、条例提案も否決されていました。一回の質問で変わらなくても、積み重ねていけば必ず、変えていけるという自信になっています。
田中 中小企業の賃上げ条例も、否決されても、答弁で必要性は言わざるを得なかったですよね。
和泉 否決されても、落ち込まないよね(笑)。
とや 全然、落ち込まないし、ひるまない(笑)。否決されても、実現するか
ら。
里吉 学校給食の無償化も、23区の東部地域の自治体が先行して、少しずつ23区全体に広がり、多摩地域で実現させるには、都の財政支援が不可欠と論戦する中で、都の制度として実現しました。まったく同じパターンで、シルバーパスの一律千円とか、修学旅行費用などの教育費無償化が広がってきています。都民の運動、区市町村議員団の論戦と連携して、ぜひ全都で実現させていきたいと思います。
もうける東京しか
和泉 都政の今後に話を進めたいと思います。
とや 小池都政がちょうど10年を迎えました。毎回の定例議会で、知事の所信表明を聞くたびに感じるのは、都民の暮らしへの関心がまったくない、もうける東京のことしか考えていない、ということです。
田中 都議団が「生活できる東京」の実現を、論戦の大きなテーマに据えたのが、とても良かったと思います。ニューヨークで、マムダニ市長が誕生し、生活できる都市の実現に取り組んでいる。これを、東京でも実現したいですよね。
とや 都政の流れを変えるという点で、今後、大きな焦点になるのが、カジノ誘致です。来年5月から、国がカジノ候補地の再募集を始めます。
里吉 先日、カジノ誘致の有力地としている青海地域を都議団として視察しました。現地で見ると、ここにカジノ、ここに噴水、ここにカジノ関連施設の球体劇場スフィアなど、誘致に向けた整備を進めていることがよく分かります。
公共取り戻すため
和泉 この問題は、小池都政の分水嶺(れい)になりますよね。都議会での答弁は、いまだに「メリット、デメリットを検討して」みたいに言っているけれど、実際は準備を着々と進めて、民間企業のもうけのためのカジノ誘致に、巨額の費用をかけて、都有地まで差し出そうとしている。都政に公共を取り戻すという点でも、小池都政の本質が問われる問題です。
とや 都政の流れが変われば、日本の政治も大きく変わります。来年の統一地方選でも、「公共を取り戻す」ことが、共産党の政策の大きな柱に据えられました。全都で、たたかいを広げていきたいと思います。
里吉 都は都営住宅を26年間、つくっていません。その一方で、大企業のもうけのための都市再開発に毎年、数百億円もの都財政を投入し、再開発のタネ地に、本来なら都営住宅をつくるべき都有地を提供しています。間違った都政の軸足を変えさせるため、都議団全員で力を合わせ頑張っていきます。

