地震が起きた際に、自動で通電を遮断し、停電から復旧した際の火災を防ぐ感震ブレーカー。6月に改定された政府の首都直下地震への対策の基本計画では、2035年度までに、緊急対策区域となる1都9県でほぼすべての世帯が設置することを目標とすることが掲げられました。都内の各自治体では、購入・設置した世帯への補助などで、普及を進めています。

100%設置焼失7割減の予測も
首都直下地震は、最大で死者約1万8千人、全壊・焼失する建物が約40万棟という巨大な被害が想定されています。死者数と全壊・焼失棟数の約7割が、火災を原因とするものです。
6月に11年ぶりに見直した政府の基本計画は、今後10年間の減災目標として、死者、全壊・焼失の被害について「半減以上」を目指すとしました。目標達成のために災害が起きる前に対策をとる予防、事前防災の考え方が、建物の耐震化や、火災対策など、各所で強調されています。
都内の普及は13%
大きな被害を生む火災を防ぐうえで、柱の一つとして位置づけられたのが、感震ブレーカーです。
地震の揺れで、モノが倒れて電気製品の配線を傷つけたり、電気ストーブやコンロなどの加熱機器のうえに可燃物がかかるなどして、停電が復旧した後に出火することが予想されます。揺れを感知して自動でブレーカーが落ちることで、可燃物が電気機器にかかっていないかなど、安全を確認してから、電流を復旧し、火災の発生を抑えようというものです。
国の中央防災会議が設置した首都直下地震対策検討ワーキンググループの試算では、感震ブレーカーの設置率を、国の調査による現状の20%から、100%まで高めれば、火災の焼失棟数を72%減らすことができると試算しています。
都内の感震ブレーカーの設置率は、2024年度の都の調査で13%にとどまります。東京都の現在の目標は、2030年度に25%です。
日本共産党の清水とし子都議は、6月16日の都議会第2回定例会代表質問でこうした数字を示し、「100%設置を目指し、目標を大幅に引き上げる」よう求めました。
重要な事業者責任
マンションや住宅の防災対策に詳しい「住まいとまちづくりコープ」の千代崎一夫さん(第一種電気工事士)は、感震ブレーカーの普及について、「耐震化で燃えない・倒れない建物にすれば、火災自体が起きにくくなることなど、対策を総合的に進める必要がある」と指摘したうえで、電力事業者としての東京電力の責任を強調します。
電気と同じように、震災時の火災の大きな原因となるガス機器については、事業者である東京ガスが、揺れを感知してガスを止める安全装置付きのガスメーターをほぼ100%、普及しました。このため、以前は「揺れたら、火の始末」と言われていたのが、まずは身の安全を確保し、揺れが収まってから火の始末へと、対策の〝常識〞が変わりました。
千代崎さんは、「電気についても、東京電力が、地震の揺れを感知し、住民が安全を確保した一定の時間後に電気を遮断する感震メーターを設置すれば、普及は大きく進む。使用できる電気容量を変更可能な『可変容量付きメーター』にすれば、震災などの影響で社会全体に電力使用量の抑制を求めるときなど、さまざまな場面でも活用できる」と指摘します。
工事費用の支援も
こうした抜本的対策とともに、各個人の取り組みを支援する自治体の施策も重要です。
都は感震ブレーカー設置を支援する自治体への補助事業のほか、新築やリフォームの際に設置する住宅事業者向けの補助などを実施しています。
都のまとめによると、都内で感震ブレーカーの設置費の補助などに取り組んでいるのは、23自治体(15区8市)です。簡易な機材の無料配布のほか、高額な機材の購入費用の一部負担、設置工事の費用を支援する自治体もあります。
感震ブレーカー設置の際は、夜間に地震が起きた際の照明の準備や、医療機器を使っている場合の電源確保なども必要になります。簡易版は設置しやすい一方で、多くはすぐに電気が遮断されます。分電盤に設置するブレーカーは、工事が必要で高価なものの、遮断まで3分程度の時間差を設けることが可能です。
自治体によって、どの範囲のブレーカーを対象とするかもさまざまで、住宅の実情に合わせて対策を取れるよう、支援充実が求められています。

