給食無償 「公平性」に挑む

 国として学校給食を無償に―。実現のきざしが見えたものの、文部科学省は、いまだその具体策を示していません。先進的な自治体にも学び、声をあげ続けることが大切です。文科省が無償化の課題の一つとした「公平性」について考えます。(重村幸)

アレルギーで弁当 不登校…どう対応

 各地の市民や日本共産党が長年求めてきた、給食無償化。小中学校ともに行う自治体は、2017年の76から23年には547まで増えました。(文科省調査)

 全国の動きに押され、政府は今年2月、小学校では26年度から無償化を行う方針を示しました。ところが、8月末に文科省が提出した予算の「概算要求」には、制度の詳細や必要な金額などの記載はありません。11月中に一定の方向性をまとめるとの考えが、今月ようやく示された状況です。

 日本共産党の吉良よし子参院議員は「文科省は、金額を示さない『事項要求』に無償化も含めていると説明しましたが、その記載の分かりにくさにも、消極的な姿勢があらわれているのではないでしょうか」と指摘し、こう呼びかけます。「文科省は無償化の“課題”も強調しますが、やらない理由にはなりません。全国で運動をさらに広げることが、より良い制度を実現する後押しになります。私たちも力をあわせて頑張ります」

 文科省は24年末、無償化の“課題”を発表しました。その一つが「児童生徒間の公平性」です。アレルギーなどで弁当を持参したり、不登校だったりで、給食を食べない児童生徒には「恩恵が及ばない」というものです。地方議会でも、公平性を理由に無償化に反対する意見も出ています。一方、前向きに課題に取り組む自治体もあります。

 24年4月から市立小中学校での無償化を始めた東京都西東京市(人口約20万人)は、「弁当持参の場合には給食費相当額を支給する」と同年9月に決定。4月にさかのぼって支給しました。今年4月からは、不登校や長期欠席の場合も支給対象に広げました。

 実現の背景には、市民と力をあわせる日本共産党の姿がありました。

子どもの権利保障する給食無償化実現 署名7000人突破 西東京・市民と党

無償化の実現を報告する「市民の会」や日本共産党市議団(党西東京市議団提供)
私立への拡大・調理員の待遇改善めざす

 日本共産党西東京市議団(現在3人)は、20年以上前から学校給食無償化を求めてきました。
2023年3月には、「無償化を求める決議」を市長に提出しようと議会に呼びかけ、賛成多数での可決につなげます。

「市民の会」を結成
街頭での署名活動(党西東京市議団提供)

 それでも進まない市政に対し、子育て世代の保護者を中心に「無償化を求める市民の会」が立ち上げられます。

 23年10月に5000筆の署名を市長に提出することを目標に、7月から活動を開始。党市議団も、街頭での署名の呼びかけに毎週参加するなど、協力して取り組みました。

 わずか3カ月で目標を上回る5158筆の署名を集め、市民の会は市長と懇談します。さらに7000筆を突破した翌年2月、ついに市長は24年度から無償化を行うと公表したのです。
市民の会は、最終的に7118筆の署名を提出しました。

すべての子のため

 給食無償化を求めるとき、市民の会も党市議団も、弁当持参や不登校、私立学校に通う場合を含め、すべての子どもを対象にすることを同時に求めてきました。

 大竹敦子(あつこ)市議は、「すべての子どもが同じ市民です。うちには関係ないという分断を生まず、みんなの要求にすることが大切です。多くの市民が声をあげたからこそ実現できた」と振り返ります。

 署名活動をしていると、高齢者世代からは「子どもたちのために」と、市外の人からも「自分の市でもやってほしい」と、多くの人に声をかけられたといいます。子どもたちから声援を送られたことも。

 「学校給食は教育の一環です。その無償化は、子育て世帯の負担軽減のためだけでなく、本質的には子どもの権利を保障するためのものです。だからこそ、すべての子どもにいきわたる制度でなければなりません。国もその立場で進めてほしい」。党市議団は、さらなる改善に取り組んでいます。

 「国がやるまでは、自治体が率先するべきです。西東京市では、私立の学校の子どもがまだ対象になっていません。給食調理員の待遇改善などとともに、引き続き求めていきます」

「質は変わらない」 無償化で市長説明

 「無償化したら給食の質が下がるのでは」―。西東京市でも、そういった声がありました。

 しかし、無償化にあたって同市の市長は「保護者が払っていた給食費(食材料費)をそのまま公費負担に変えるだけなので、質は変わらない」との説明をしました。

 日本共産党市議団は「無償化後、物価高騰に対応するため給食費の増額もしてきています。市財政から出す方が増額しやすいので、その点でも無償化は意義があります」と指摘します。
弁当持参に補助 全国でも広がる

 現在、無償化の費用を自治体に補助している東京都や千葉県(千葉県は第3子以降のみ無償化)では、アレルギーなどで弁当を持参する児童生徒に自治体が給食費相当額を支給する場合も、補助対象としています。

 日本農業新聞(8月27日付)の調べによると、都内34自治体をはじめ、全国で少なくとも125自治体が、弁当持参の場合の支援をしています。

(「しんぶん赤旗」2025年10月10日付より)

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