東京・石神井公園駅前の再開発

高さ制限制定に住民参加破るな 税金依存のタワマン 不信と怒り

 税金を投入し、超高層ビルを林立させる“再開発”が全国で進んでいます。東京都練馬区の石神井(しゃくじい)公園駅前では、住民参加でつくり上げた“高さ制限”破りの再開発を巡り、住民の不信、怒りが渦巻いています。(芦川章子)

再開発が進む商店街(手前)と石神井公園駅(右奥)=東京都練馬区

 新宿から約20分のところに西武池袋線の「石神井公園駅」はあります。駅南口の約6000平方メートルに、高さ約100メートルのタワーマンションなどを建てる計画が進んでいます。

街並みを損なう

 昭和から続く駅前商店街の一帯がなくなります。スーパー、喫茶店、やき鳥屋…。多くはすでに閉店しています。

 大手デベロッパーの野村不動産らが再開発組合に加わり、開発を進めています。

ジョギングや散歩をする人たちが行き交う都立石神井公園=東京都練馬区

 「石神井まちづくり談話会」代表の中田嘉種さんは「住民が長年かけてつくり上げてきた街並み、景観、歴史を大きく損なう」として、開発の中止を求め、署名や陳情などを続けています。

 都市再開発法では、3分の2以上の同意があれば、不同意の地権者がいても計画は強行できます。大企業が再開発しやすい“合法地上げ”です。

 駅沿いに100メートルの壁が並ぶことによる風害、日照被害も懸念されています。さらに、幅16メートルの新たな都市計画道路「補助232号」が商店街の真ん中を突っ切ります。「人々の流れがかわり、地域が分断される。開発による損失は計り知れない」(中田さん)

 近くには都立石神井公園もあり、公園を含む周辺は風致地区に指定されています。

公費負担129億円

 武蔵野の面影を残す街並み。住民と区は約10年、まちづくりの議論を重ねてきました。2011年には区の「景観計画」を策定。12年に区が制定した「地区計画」では、石神井公園からの景観を守る目的で、駅南口周辺の建築物の高さを「原則35メートル以下」と定めました。

 そのわずか2年後、計画の変更が持ち上がり、区は20年に都市計画による規制を緩和しました。2000平方メートル以上の敷地があれば100メートル以上の高層ビルを建てられるようにしたのです。

 日本共産党の、とや英津子都議は「地区計画は住民たちの努力のたまもの。南口開発は住民との約束をほごにし、欺くもの」だと語気を強めます。

 「税金依存度」の高さも議論の的です。

 道路を含めた総事業費は約253億円。駅の高架で眺望が望めず、売りにくいとされるビルの3階~5階を区が買い取るといいます。日本共産党練馬区議団の調べによると公費負担は約129億円にも上ります。

 都心では再開発によるタワマン建設は目白押しです。住宅やオフィスの供給過剰はすでに問題に。市民合意なき乱開発に反対の声も上がっています。

 中田さんは「デベロッパーのやりたい放題を止めるのが自治体の役割のはず。行政本来の役割を取り戻してほしい」と語ります。


▼石神井公園駅南口西地区市街地再開

 22年9月、東京都知事が再開発組合の設立を認可。住民や地権者11人が、地区計画の変更は迎法で、これを前提とする再開発組合の設立認可も違法だと提訴しました。再開発組合が今年2月、地権者に土地の明け渡しを求めるなか、地権者が執行停止を求めていました。東京地裁は3月、土地の明け渡しを判決後3カ月間、止める決定を出しました。再開発をめぐる訴訟では異例の決定です。

(「しんぶん赤旗」2024年5月6日付より)