希望持てる都政に 都議会本会議 尾崎あや子都議が代表質問

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 都議会第1回定例会は2月27日、本会議を開き、小池百合子知事の施政方針に対する各派代表質問を行いました。日本共産党から尾崎あや子都議が立ち、2024年度予算案について、都民が物価高騰に苦しむ中、「都民の暮らしに無関心な小池都政の姿勢が表れている」として、「暮らしに希望がもてる都政への転換」の必要を強く訴えました。

暮らし無関心な小池都政
耐震化助成を減額自己責任の転換を
 尾崎都議は能登半島地震の大災害を受けて、首都直下地震の災害から都民を守るために、石原都政から続く「自助が一番、共助が二番、最後が公助で極力小さく」という姿勢からの転換が、求められていると強調。住宅耐震化助成の予算を減額(グラフ)した小池知事に対し、「自己責任だとする石原都政以来の姿勢からの転換が必要だ」として、同予算の拡充を求めました。
 尾崎都議は石川県輪島市の深刻な被害状況について、木造、非木造の計2万件の家屋調査の結果、「被害なし」は約80件のみで、残りは全て「全壊」「半壊」「一部損壊」だと紹介。住宅被害に関して小池知事の受け止めを問いました。
 また、都の住宅耐震化助成の予算5億円が一般会計予算のわずか0・005%にすぎないとし「『倒壊ゼロ』を目指し、耐震化工事の『自己負担ゼロ』も視野に入れ、予算は大胆に増額を」と求めました。
 避難所について、温かい食事の提供や段ボールベッドの確保、冷暖房環境などの課題が山積していると指摘。「学校体育館だけでなく、災害時にホテルなどを指定避難所にすることも検討すべきだ」としました。
 さらに、自治体リストラで職員を減らし、公共部門を縮小して「自助・共助」にまかせる「新自由主義」の政策が災害への対応力を弱くしているとし、公助の力、公共部門の力を強くするよう提起しました。
 耐震助成について小池知事は「都民の生命と財産を守るためには住宅の耐震化を進めていくことが重要だ」と答弁。谷崎馨一都市整備局長は「2024年度から耐震改修などの補助限度額を引き上げる」とし、額については、再質問に「地域などによるが、一例として10万円」と答えました。

給食の無償化へ都は全額補助を
 新年度予算案に区市町村の学校給食費の負担軽減や都立学校の給食費無償化、所得制限なしの都立・私立高校、都立大学などの授業料実質無償化が盛り込まれたことについて、「都民の世論と運動、都議会での野党共闘の広がりと、日本共産党都議団の論戦や条例提案が、後ろ向きだった小池知事を動かした成果だ」と強調。
 その上で、学校給食費の都の2分1補助について「財政力の違いによる格差が生じる」とし、県が全額負担して全県の公立・私立の小中学校、特別支援学校などの給食費を無償化する青森県の事例を示し、都の全額負担による無償化を求めました(表)。
 小池知事は学校給食費について「国の責任と財源で無償化を実現すべきもの」との従来の考えを繰り返し、横山英樹・生活文化スポーツ局長は私立小中学校の給食費について「各学校において教育方針等を踏まえて判断するもの」と答えました。

国家並み財政力暮らしに支援を
 都の財政規模はスウェーデンの国家予算に匹敵するうえ、都税収入は人件費抑制や円安による大企業の収益改善などによって、バブル期を超える史上最高水準が続いています。
 尾崎都議は「豊かな財政力を都民の福祉・暮らしを守り、地域経済を立て直し、広がる格差を是正するために使うなら、東京から貧困をなくし、都民の生活の質を格段に向上させる大きな可能性が開かれる」と強調。1日600円の食費で暮らす90代女性など、高齢者の厳しい生活実態を示し、知事の認識を問うとともに、高齢者の生活を支えるための経済的支援の強化を求めました。
 小池知事は「高齢者を含め、暮らしに余裕がないと感じている方がいると認識している」と述べましたが、支援強化への言及はありませんでした。

中小企業の支援都の総力あげよ
 尾崎都議は「都民の暮らしを支え、経済の好循環をつくり出すためには、物価高騰を上回る賃上げがカギを握る」とし、中小企業が賃上げできる環境をつくるために、「特別チームを設置するなど、都庁の総力を挙げて取り組むこと」を提起しました。
 尾崎都議は国際競争力や都市間競争を声高に叫ぶ小池知事の経済政策について、「経済界ファーストの最たるもの。都の政策をゆがめ、多くの矛盾を引き起こしている」と批判。中小企業支援について、石原都政以来の伸びるところしか応援しない政策を極端に進めていると指摘。「雇用の7割を担う中小企業、町工場や商店街が地域の中で豊かに発展していける経済政策への転換が必要だ」と強調しました。その上で家賃や設備のリース代などの固定費への直接助成や燃料費補助、上下水道料金の減免などの支援、20年間開かれていない中小企業振興対策審議会、同じく11年間の雇用就業対策審議会に、中小企業の賃上げや物価高騰対策などについての諮問などを提案しました。
 小池知事は「賃上げなど労働者の処遇改善に向けた中小企業の様々な取り組みについて、経営や職場づくりの面から引き続き促進していく」と答えました。

貴重な証言、広く伝えて
東京空襲 30年経て都が映像初公開

 東京都が1990年に3月10日を「東京都平和の日」と定めてから毎年実施する関連行事のひとつ「東京空襲資料展」が、2月28日から都内3カ所で順次開かれ、30年近く非公開となっていた東京大空襲の被害者による証言映像の一部、122人分の公開が始まりました。同時に、デジタル化した紙資料もわずかではありますが、初めて展示されています。
 同資料展は、2月28日~3月13日に「東京芸術劇場」(豊島区)、3月3~12日に「三鷹市公会堂さんさん館」、3月7~14日に「調布市文化会館たづくり」で開催。公開された映像は、都が昨年6月までに本人や遺族から同意が得られたもの。1人あたり10分ほどに編集し、それぞれに字幕を付けました。各会場で34人ずつ、10日に都庁で行われる「第34回東京都平和の日記念式典」で20人分の映像が流されます。
 都は90年代に「東京都平和祈念館(仮称)」の建設に向け、東京大空襲の戦争体験者330人の証言映像などを、約1億円の公費を投じて収録。戦争の惨禍を後世に伝えてほしいと、多くの人々から約5000点もの遺品が寄せられました。
 この計画に対し、展示内容などをめぐって都議会が紛糾。98、99年に都議会で建設予算案は可決されましたが、「都議会の合意を得た上で実施する」との付帯決議により、計画は事実上凍結。9人の証言映像のみを公開し、多くの映像と資料は都立庭園美術館(港区)の倉庫に封印されたまま長い年月が過ぎました。

戦争を身近に実感
 東京芸術劇場では、「深川にある明治小学校の講堂に逃げ込み、鉄の扉が閉められた。朝になり扉を開くと遺体が積み上がっていた」「川には水が見えないほど人間が浮いていた」「死体の処理がとにかくつらかった」など、大きな画面を通して悲惨な状況を語る被害者の証言を、来場者は食い入るように見つめていました。
 東京大空襲により祖母が命を落とした練馬区在住の女性(74歳)は、「東京空襲犠牲者名簿に祖母の名前はあるが、遺体がない。映像を見ると、戦争が身に迫るように感じた。焼夷弾の中を逃げまどった体験を聞いて、祖母もそのような最期を遂げたのだろうかと想像して胸が詰まる」と、涙をこらえて話しました。
 埼玉県新座市から来場した男性(83歳)は、「4、5歳で空襲を経験した。3月10日以前に目黒区から埼玉県川越市に疎開したが、夜鳴り響く空襲警報、世田谷のまちが真っ赤に燃えている光景を覚えている。映像は訴える力が強い。広く公開する機会を大事にしてほしい」と過去を振り返りつつ語りました。
 母親と訪れた板橋区の女性(22歳)は、「その当時に生きていた人々の生活の様子が伝わってくる。学校の教科書で学ぶより身近に感じ、戦争の怖さを実感することができた」と話しました。
 都の担当者は、「例年に比べて来場者が多い。平和を考える機会のひとつとして、映像を見てほしい」と述べました。
 「東京都平和祈念館(仮称)建設をすすめる会」世話人の柴田桂馬氏(93)は、「都に対し、我々は繰り返し330人の貴重な証言映像の公開、活用を求めてきた。122人の映像を公開したことは第一歩前進」と評価しつつも、「1人10分程度の編集、わずかな日数での公開では不十分。これで終わらず被害者や犠牲者に、心のこもった対応をお願いしたい」と訴えました。

 1990年に完成した都庁舎は、しばしば「バブルの塔」とも呼ばれます▼バブル景気のなかで建設が計画され、丹下健三氏による独特なデザインに、莫大な建設費を投じてつくられた庁舎。当時、日本一の高さを誇ったことなどから、バブル期の象徴ともなってきました▼その都庁舎を利用した、都によるプロジェクションマッピング事業が賛否両論を巻き起こしています。事業は、都庁の建物をスクリーンにして、東京の街並みや歴史を紹介する映像を毎晩、上映するものです▼都は観光名所とするねらいで、常設の建物では、世界最大のプロジェクションマッピングとして、ギネス世界記録に認定されたといいます。その一方、関連事業の費用は一時18億円と伝えられ、実際は23年度、24年度とも20億円を超えることに、批判の声が広がっています▼日本経済は、日経平均が初の4万円代を記録し大企業の業績が好調にもかかわらず、庶民の暮らしは深刻さを増しています。都庁の足元で、毎週土曜日、支援団体が取り組む食料配布には、700人を超える列ができるときもあります▼暮らしの困難が広がる中で、過去最高水準の都税収入を使って「光をあてる」べきものは何か―重要なのは、都政に臨む都知事の姿勢です。