外環道 工事の中止を 住民が署名5千人分

東京外かく環状道路(東京外環道)の大深度地下工事現場付近の地上(調布市)で昨年10月に道路陥没事故が起きて以来、地域住民は恐怖を感じ、「東京外環道路事業・工事の中止を求めます」との署名を展開しています。しかし、国やNEXCO東日本(高速道路会社)らは住民説明会で「2年間要する地盤改良を実施してから工事を再開し、その後に住宅などの被害を補償する」ことを公表。住民から怒りの声が上がっています。

第6回東京外環トンネル施工検討委員会有識者委員会(有識者委)が12日に開催されて以降、NEXCO東日本らが指定した住民に向けた説明会が開催されています。その際、現地が「特殊地盤」であることをことさら強調。今後2年に渡り地盤改良を実施し、被害家屋や健康被害について、その後に補償を行うことなどを公表しています。

一方、住民は事業者内部の有識者委では公平性が担保出来ないとして、第三者委員会での事故原因究明と再発防止策の精査を求めるとともに、個別、秘匿で補償対応しようとするNEXCO東日本ら事業者を批判。被害住民連絡会・調布などとの団体交渉への対応や、補償基準の公表を求め続けています。
日本共産党の山添拓参院議員は、国交省とNEXCO東日本に聞き取りを再度要請。開催日の18日、詳細を説明できる国交省の担当者は「大雪の対応」を理由に欠席し、NEXCO東日本は前回に引き続き同様の理由で不参加でした。山添議員は「雪の度に聞き取りにも対応できなくなる組織に、このような大事業が安全に推進できるのか」と疑問を呈しました。

聞き取りには曽根はじめ都議や田中とも子元都議(予定候補)も参加。曽根都議は東京外環道の施工認可期間が今年3月末で切れるとして「都知事が施工期間の延伸をするにあたり、都から要求のあるデータは全部提出するのは最低限の義務だ。施工上の問題を検討するだけでは危うい。事業自体の問題として考えねばならない」と発言しました。

危険の訴え無視し

東京外環道沿線の練馬、杉並、世田谷の3区と武蔵野、三鷹、調布の3市の住民で構成する外環ネットは19日、「東京外環道路事業・工事の中止を求めます」との署名を国交相宛てに5372人分と、東京都知事宛てに5344人分提出しました。署名は昨年11月21日に集会を開いて以来、インターネットや陥没事故のあった京王線つつじが丘駅や小田急線成城学園駅、吉祥寺駅など5駅前でも集められました。

外環ネットの代表者らは同日、国交省内で記者会見を開催。同ネットと東京外環道訴訟原告団・弁護団他12団体による「東京外環道の調布陥没・空洞調査報告と住民説明会についての声明」が読み上げられました。
会見では「シールドマシンが東名高速道路側から発進する以前に『陥没事故の危険性』を住民が指摘しても『問題ない』として進めた国とNEXCO東日本の責任は重い」と批判しました。

また「署名は2時間で70~80人ほど集まり、『あの時に揺れたけど大丈夫かしら』などの声が多く聞かれた」との話もあり、事故への関心の高さが示されました。
さらに「すでに施工された世田谷区などでもNEXCO東日本の調査で地表近くに空洞が複数発見されているが、工事との因果関係は認められていない」と語られました。「振動や低周波振動の健康被害が、事業者に軽視されている」との訴えもありました。
署名は現在も継続中で、集まり次第追加提出されます。