野宿続ける難民増 住居・食料・医療早く

❚ 国の支援なく民間団体「限界」

 日本に逃げてきたものの、行き場のないまま野宿を続ける難民が増えています。政府の支援がないなか、受け入れ能力を大きく超える難民が押し寄せている民間支援団体は「限界」と悲鳴を上げています。(小梶花恵)

 東京都内の公園のベンチに2人の外国人男性が座っていました。スマホの翻訳機能で話しかけると、「難民だ」と言います。次第に17人もの男性が集まり、みんなここで寝泊まりしていると言いました。

 英語を話す人に聞くと、出身国で反政府活動をして迫害され、9月に来日。数日間ホテルに宿泊したのちは行く当てがなく、インターネットで見つけたNPO難民支援協会(JAR)を訪れました。17人の多くは互いに初対面。今年9月と10月に来日し、JARで出会ったのち1カ所に集まって過ごすようになりました。

 JAR広報の田中志穂さんによると、新型コロナ感染拡大に伴う入国制限が緩和された昨年10月以来、難民の入国が増え、JARを頼る人も激増しました。70カ国からの難民が毎日30人前後JARを訪れ、助けを求めます。ほかの支援団体などと連携して寝る場所を確保していますが、女性や未成年者、体調不良者を優先。田中さんは「健康な男性は断らざるを得ないこともある」と言います。

時間がかかる

 JARは難民のため、出入国在留管理庁への難民申請や政府から委託を受ける「難民事業本部(RHQ)」の保護費の申請手続きを手伝います。

 ではなぜホームレスとなるのか。入管庁は難民申請者に就労許可を与えるかどうか、時間をかけて審査します。「就労可」の結果をもらうまで働くことはできません。難民でなくても稼いで食べなければ生きられないと入管庁に問うても、明確な答えはありません。何カ月も待たされて「就労不可」になることもあります。

 RHQの保護費も、申請後すぐもらえるものではありません。出身国の家族の支援が受けられないかを聞かれ、本人の資産を見るため通帳の提示を求められます。結果も厳しい。JARの調査によると、2022年に保護費を申請した3772人のうち、受給できたのは204人。住居については、同年JARが223人に提供したのに対し、RHQは25人です。

党区議に通報

 公園の難民らはすでに1、2カ月野宿しており、頭痛や胃の不調、風邪症状、背中や関節の痛みを訴えています。心配した付近の住民が日本共産党の牛尾耕二郎千代田区議に知らせて明らかになりました。日本共産党の本村伸子衆院議員や谷川智行衆院東京比例・4区候補、難民支援者らが駆け付け、外務省と入管庁、厚生労働省、都に緊急保護制度を利用した住居の提供を働きかけています。

 外務省は本村氏に、公園の難民の出身地域が紛争などで「人権人道上劣悪な状況」であることを報告しています。本村氏は「寒さが増すなか住居の確保は人道上、緊急を要します。一刻も早く住居と食料、医療を保障すべきです」と話しています。
(しんぶん赤旗2023年11月1日付より)