都立高入試に使うな

スピーキングテスト 運営従事者語る

報告書改ざん 試験監督者足りない

 東京都立高校の入試に活用する中学校英語スピーキングテスト。都が民間団体に運営を委託して実施します。昨年11月の同テスト運営に携わった男性(20代)が、実施報告書の改ざんの現場に立ち合ったと証言しました。改ざん現場を録画した男性は「どの会社がやっても公平性が担保できず、受験生に負担をかける。中止すべきだ」と話します。(染矢ゆう子)


 同テストは毎年都内全公立中学3年の約7万人が受験します。2022年度から始まり、24年度にベネッセから英国の民間団体ブリティッシュカウンシルへ運営が変わりました。

 男性はブリティッシュカウンシルから試験の運営を委託された全国試験運営センターのグループ会社社員(当時)。一つの会場で試験監督をまとめる立場でした。

テストの実施状況を独自調査した結果を報告する保護者と都議ら=2024年12月4日、都庁内(しんぶん赤旗提供)

消しゴムで消す

 改ざんされた書類は、同センターに提出する試験実施報告書でした。各教室の試験監督が試験ごとに書きます。男性が録画したのは、別のグループ会社社員である会場責任者が、試験監督が書いた不具合があった機器の数や「特記事項」を消しゴムで消して、書き直している場面です。

 都の発表では、機器の不具合や試験監督のミスで23年度比4倍の255人が再受験対象になりました。

 不具合のために追加で使用した機器が複数ありましたが0にされました。機器が止まり、別室で受験した受験生についての記述もなくなったと言います。

 試験監督のマニュアルには実施報告書を「鉛筆で」書くよう指示がありました。

 改ざん現場には男性と会場の正副責任者の3人しかいませんでした。改ざんした理由を「『私(責任者)が怒られるから』と言っていた」と男性は言います。

10分遅れで説明

 改ざん以外にも驚くことがありました。

 当日アルバイト数人が欠席しました。「前後半にそれぞれ試験監督がいる計画でしたが、同じ人がどちらも試験監督を行いました。私は前半、後半組が待機する自習の教室にいましたが、自習開始時間になっても監督が誰もいない教室があり、その一つで私が約10分遅れで説明をした」と言います。

 事前にマニュアルと動画2本を見ておくように指示がありましたが、男性が読んだのは試験当日。マニュアルは黒板に何も書かないよう指示がありましたが、半数以上の教室は黒板に何か書いてあり、男性が消して回りました。

 日本共産党都議団には、男性がいた会場以外に、12カ所で試験当日にメールで試験監督を緊急募集していたという情報が寄せられています。同メールは試験当日正午すぎに出され、午後1時に始まる試験の15分前まで募集していました。試験監督が足りないことで「生徒への説明が平等にできていない。何も悪くないのに再試験になった人が多くいた」と男性は話します。

 男性は同テストを入試に使うことも知りませんでした。試験終了後にXで初めて入試に使うと知りました。「平等とか公平性とかの基本ができていない。公的なテストとしてあり得ないと多くの人に知ってほしい」といいます。

 日本共産党は公平性・公正性を担保できない英語スピーキングテストの高校入試への利用中止を求めています。都議会でも斉藤まりこ都議が試験監督を当日募集したメールを示し質問。「基本的には適切に運営できている」と答弁した坂本雅彦都教育長に対し、「信頼に足る試験をしようと思うなら、事実を受け止めるべき」だと求めました。

 都立高校入試への利用の中止を求めた請願を、自民、公明、都民ファーストは否決し、入試利用を継続しようとしています。

(「しんぶん赤旗」2025年5月26日付より)

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