PFAS汚染米国の基準超え過半数に 血液検査の最終結果発表

横田基地 東側に高濃度集中
 発がん性や免疫の抑制など健康への影響が指摘される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が多摩地域の水道水源などから広範に見つかっている問題で、住民による自主的な血液検査に取り組んだ市民団体が8日、650人分の分析の最終結果を発表しました。国分寺、立川など、米軍横田基地の東側にあたる地域の住民の血液から非常に高濃度のPFASが検出されたほか、多摩地域全域にわたり、高い濃度が検出され、深刻な汚染の実態が明らかになりました。専門家は、「行政などによる長期の監視と対策が必要」と警鐘を鳴らします。
 血液検査は、市民団体「多摩地域の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会」と、京都大学の原田浩二准教授が協力して実施したもの。昨年11月から今年3月まで、世田谷区1人を含む27区市町村の650人から採血して、PFASのうち代表的な4種類の濃度を分析しました。
 発表によると、参加したほぼすべての人からPFASが検出されました。4種の合計で、最高値は124・5ナノ㌘/㍉㍑(以下、ナノ㌘)、全員の平均血中濃度は23・4ナノ㌘でした。
 米国の学術機関アカデミーズは、今回の4種を含む7種のPFASの合計で、血中濃度が20ナノ㌘を超えると健康リスクが生じるとの指標値を示しています。多摩地域全体の参加者の平均値で、この指標値を上回る実態が明らかになりました。
 米国の指標値を、個人で超えていた人は、20自治体の335人と参加者の過半数に及びます。
 原田准教授は、特に健康への影響の調査が進んでいるPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の2種に注目しており、この2種で20ナノ㌘を超えた参加者も、132人いました。
 参加者には、水道水の使用の有無や、浄水器の使用の有無を答えてもらっており、その回答によって血中濃度に差があることから、水道水が主な摂取ルートとなった可能性が高いと結論づけています。

追加の血液検査 井戸など水質も
 ドイツでは、PFOSは20ナノ㌘、PFOAは10ナノ㌘と、それぞれに健康への影響が考えられる勧告値を定めています。
 今回、多くの住民から高濃度で見つかったPFOSについて、このドイツの勧告値を超えていた人は、国分寺市で57人中27人、立川市で38人中9人などで、参加者全体で見ても、1割にあたる55人に及びました。
 参加者が10人以上いた自治体について、平均のPFOSの血中濃度を地図にすると、横田基地の東側に高濃度が集中していることが分かります(図)。
 東京の地下水は大きくは西から東に流れているとされ、PFASを含む泡消火剤を訓練や飛行機事故などの際に利用する横田基地で、土壌がPFASに汚染され、それが地下水とともに広がったことで、多摩地域の水道水源の井戸水から住民が摂取した可能性を示唆しています。都水道局は現在、水道水源の井戸水のPFAS濃度を測定し、一定の濃度が見つかった場合は、取水を停止する対応をとっています。
 原田准教授は会見で、「泡消火剤を使ってきた横田基地は、汚染源になったと考えられる」と指摘。そのうえで、「半導体工場など、他の汚染源がないのかも明らかにしていく必要がある」と語りました。
 会では、多摩地域全体の血中濃度の傾向を明らかにするため、参加人数が少なかった自治体で追加の血液検査を実施するほか、汚染の状況を明らかにすることを目的に、所有者や自治体の協力も得て、井戸水や河川の水質検査にも取り組む予定です。

専門家「行政が長期の監視を」
 「これは、長期にわたる問題になる」―血液検査に取り組んだ原田准教授は、検査結果を見てどう感じたかを問われて、答えました。
 PFAS汚染は、PFOSなどの使用・製造が国際的に禁止されたことで、「終わった問題」との受けとめも、環境問題の専門家のなかにあったといいます。しかし、沖縄や多摩などの米軍基地周辺をはじめ、各地で住民の血液から高濃度で見つかっており、「永遠の化学物質」とも称され、自然界に長く残り続けるPFASの特性と汚染の深刻さが改めて明らかになりました。
 個人ができることは、との問いに原田氏は「負担のない範囲で、浄水器を付けることは一つの選択肢」と応じました。浄水器を使用していると答えた参加者の血中濃度は低い傾向が分かっています。ただ、自治体による水道水への対策も進められており、過度な不安から高額なものを付ける必要はないという考えも付け加えました。
 明らかにする会では、自主的な血液検査の結果を示すことで、国や行政による、より大規模で継続的な調査につなげたいと取り組んできました。原田氏は「行政が水道水などの対策をとったことで、血中濃度が下がっていくのかも見ていく必要がある。『バイオモニタリング』と呼ばれる、広範で継続的な血液検査の実施は有効な手法」として、行政による継続的な監視の重要性を強調しました。