暮らしの現実、受け止めよ 都議会 代表質問に曽根都議

 都議会は7日に代表質問、8日に一般質問を行い、都政の重要課題で論戦を交わしました。日本共産党は曽根はじめ都議(北区選出)が代表質問に立ち、物価高騰とコロナ禍から都民の命と暮らし、営業を守り抜き経済を立て直すことが急務だとして、過去最高水準の都税収入や残高2兆円を超えた基金を活用して、思い切った施策をとるよう小池百合子知事に求めました。

物価・コロナに対策求める
 小池知事は所信表明(1日)の冒頭で、世界競争力ランキングの低さや、直近の株価総額ランキングでトップ100に日本企業が1社しか入っていないことをあげ、「この現実を正面から受け止めなければなりません」と述べました。
 これに対し曽根都議は①暮らしの支援②賃上げ③中小企業・小規模事業者支援―の3つの柱で具体策を提案。「正面から受け止めるべきは、都民の暮らしと営業の現実」だとし、「出費が増えたのに給料は上がらない、年金が減らされ生活できない、バイト代が激減したなどの声が街にあふれ、多くの中小企業・小規模事業者が廃業の危機にある」と強調しました。

 曽根都議は、暮らしのひっ迫で水道料金の滞納による給水停止件数が昨年度に比べ倍増していると指摘し、250超の自治体に広がる上下水道の基本料金減免を都でも踏み出すよう求めました。
 さらに▽国民健康保険料(税)軽減への区市町村支援▽都営住宅の年間5000戸規模の緊急新規建設▽住まいを失った人が年末年始を過ごせる居場所のホテル確保▽ひとり親家庭の児童育成手当増額▽子ども食堂などへの補助拡充▽学校給食の無償化などの暮らし支援▽中小企業やケア労働者、都の非常勤職員らの賃上げ助成▽コロナ禍、物価高騰、過剰債務の“三重苦”にある中小・小規模事業者への支援―などを提起しました。

 知事は経済対策について「機動的に必要な施策を実施し、都民生活や東京の経済を支える」と答弁しましたが、具体策には触れませんでした。
 所信表明で小池知事は、新型コロナ対策について「年末年始を見据え、先手先手で手立てを講じていく」と強調しました。
 曽根都議は「早くも第8波が始まり、1日当たり陽性者数が1万人を超えている。すでに出遅れている」と指摘。「所信表明でPCR検査に触れず、都の無料検査件数はピークだった8月の4分の1近くまで減った」とし、人の往来が活発になる年末年始を前に検査体制を強化し、PCR検査を実施する企業・事業所への支援や都民が無料で検査キットを入手できるようにすべきだと提起しました。

 コロナ禍で業務が集中し、ひっ迫した都の保健所のあり方についての検討会が都で始まり、保健師の少なさへの驚きの声があがっています。市長会も都への予算要望で都保健所の新増設を要求しています。
 曽根都議は、こうした意見があることを紹介した上で、保健所増設や職員増員も含めた検討の具体化を要求。7月に独立行政法人化を強行した都立病院で、不採算でも都民が必要とする医療を拡充するよう求めました。
 小池知事は第8波に向けて「重症化リスクの高い高齢者への医療提供体制や、自宅療養者への支援を拡充する」と答えました。

英スピテスト
公正・公平に実施されず

 都立高校の受験に活用される英語スピーキングテストが、都民の反対の声が広がる中、11月27日に強行され、6万9000人の中学生が受験しました。
 同試験に反対する都議でつくる議員連盟と保護者の会が行った、実施状況についてのアンケートには1週間で478件の回答がありました。6割が中学3年生自身、3割が保護者からの回答でした。記入があっただけでも全197会場中125の会場からの声でした。
 曽根都議は、いかに問題が多いテストだったかが改めて浮き彫りになったと強調。例えば「イヤーマフ(防音具)をつけても前後左右の人の声がはっきり聞き取れた」「声が丸聞こえで、他の人の答えが分かってしまっていた」など、イヤーマフ越しに他の受験者が解答する声が聞こえた事例が166件もありました。

 中にはテスト開始を知らせる合図のボタンが遅れて押されたり、出題音声のボリュームを下げたりすることでカンニングができてしまうという証言もありました。録音確認の際に周りの受験者が解答する声が録音されていたという証言は55件ありました。「きちんと採点されるのか心配になった」という声も寄せられました。
 さらに受験者を前半、後半に分ける入れ替え制で同じ問題で実施したことから、前半組が解答する声が隣の教室で待機する後半組に聞こえてきた、それを聞いて問題を予測できた、前半組と後半組がトイレで会うことができた、などの声も46会場の受験生徒から寄せられました。
 曽根都議は、こうした事例について、都教育委員会として把握しているかただし、受験者の声を直接聞いて調査するよう求めました。その上で不公平な試験結果を高校入試に活用するのは中止するよう求めました。

 浜佳葉子教育長は、周りの受験者の声が聞こえたとの証言について、「現実的とは考えられない」と否定。テスト終了時に事業者(ベネッセ)や会場に配置した都職員への確認、区市町村教育委員会の聞き取りで、「解答に影響を与えることはなかったことを確認している」と答弁。「適切に実施された」として、入試活用を強行する考えを変えませんでした。
 曽根都議は再質問で「解答に影響があったという事例が数百件、大量に寄せられている」「不公平な試験の状況についての、これらの中学生の証言はうそだというのか。中学生本人の声を聞くべきだ」と再要求。さらに、都教委が中学校に報告を求めたのは、受験人数、欠席人数、予備日受付対象人数だけで、中学校にトラブルの報告は求めていないと告発。「その中学校からすすんで報告がないからといって、解答に影響を与えるような事例がなかったと、なぜ言えるのか」と追及しました。

 浜教育長は今回のテストに限らず、中学校に課題があれば市区町村教委を通して報告が上がる仕組みがあるので、「トラブルがあれば上がってくることになる」と答弁しました。
 曽根都議は他に▽都立学校の教員不足の問題▽ジェンダー平等▽気候変動対策▽住宅の耐震改修推進▽神宮外苑再開発と外環道問題▽米軍横田基地の特殊作戦機オスプレイの飛行問題▽統一協会問題▽芸術文化施策―について質疑しました。

統一協会問題で合同ヒアリング
弁護士「学校に情報提供の場を」

都議会
超党派

 統一協会問題で初となる都議会の超党派による合同ヒアリングが6日、全国霊感商法対策弁護士連絡会の久保内浩嗣弁護士を招いて開かれました。日本共産党と立憲民主党が呼びかけたもので、他にグリーンな東京、生活者ネット、維新の5会派の都議が参加しました。
 立憲民主党の西沢圭太都議は「都議会、都政としてやれることをやるのが大事。ヒアリングの内容を役立てていきたい」とあいさつ。共産党の白石たみお都議は「知事は統一協会について反社会的団体という認識を示していない。都は調査しているというが結果は公表していない。被害者救済や癒着を断ち切るなど、都議会としてどういう取り組みが求められているのか考えていきたい」とのべました。

 久保内弁護士は「旧統一教会」が人権侵害をする団体であり、正体を隠して勧誘することに問題の本質があると指摘し、その手口を紹介。「大学生をターゲットに、4~5月は1年生が草刈場になっている。最近は中高生まで狙っている」と語り、都立学校などに弁護士を派遣して情報を伝える場を設けてほしいと提案しました。
 また、政府が提出した被害者救済法案について「規制を寄付行為の問題に限定している。寄付以前に行う勧誘の段階を規制する必要がある」と強調しました。
 都政に求めることとして、「正体を隠した勧誘を規制できないか。『宗教2世』にも成長過程での恋愛禁止をはじめ虐待が多くある。児童相談所など相談体制の拡充や研修が必要だ」とのべました。さらに信者の脱会相談や両親を信者にもつ2世信者から相談を受ける継続的体制が難しく、人材も限られていると説明。支援団体への経済的支援とともに、臨床心理士らカウンセリング業務の従事者への研修の充実などへの支援を求めました。

 漢字一文字で今年の世相を現す「今年の漢字」が「戦」に決まりました▼22万3768票の投票で、一位となる1万804票を獲得して選ばれました。サッカーワールドカップでの日本の活躍や、新型コロナウイルスとの苦闘なども理由の一つでしょうが、やはり大きいのは、今年2月から続くロシアによるウクライナ侵略でしょう。「戦」が今年の漢字になるのは、アメリカ同時多発テロが起きた2001年以来、二度目だといいます▼引き続きコロナ禍に覆われた2022年。ウクライナ侵略の他にも、東京での山添拓氏の勝利と全国での日本共産党の議席後退が入り混じった参院選、日本と世界に衝撃を与えた安倍晋三元首相の銃撃、世界的な物価高の進行、各国で相次いだ気候危機を要因とした多くの命を奪う異常気象など、文字通り怒涛の一年間でした▼そうした激動の一つが、12日の自民・公明両党による安保関連3文書の改定合意です。敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記し、日本の安全保障政策を大転換しようというものです▼自公政権は、相手国の基地や中枢施設を攻撃する長距離のミサイルなどの兵器の大量保有を進める狙いです。暮らしを破壊する大軍拡は、地域の緊張を高める「戦」への暴走でしかありません。