住民の命支える処遇改善を 広がる会計年度任用職員

 「担当する子どもの成長の話を共有する時はみんなニコニコ笑顔です。そこに正規職員だとか、会計年度任用職員だからなどの差はありません。誇りをもって働いています」―都内の自治体で働く保育士の切実な声です。日本自治体労働組合総連合(自治労連)は5日、会計年度任用職員(ことば)の実態アンケート結果(中間報告)を公表し記者会見を開きました。

自治労連がアンケート
 会計年度任用職員は地方自治体の現場で事務職、保育職(保育士、保育補助)、医療職(看護師、保健師、栄養士など)、その他の専門的な職など多岐にわたり採用されており、住民と直接かかわる仕事に多く採用されている傾向があります。
 仕事内容とその責任は正規の公務員と遜色のない一方で、勤務期間が単年度であるなど極めて不安定な処遇で従事しています。こうした中で「働き続けられるか不安という声が後を絶たない」ことから、自治労連はアンケートを実施しました。
 アンケートは用紙とインターネットを使って収集。その総数は1万3762件(発表時)にも上り、そのうち労働組合に未加入の回答者が8割近くに上っています。女性は86%、40代以上が84・8%とそれぞれ割合が高い傾向にあります。
 主に家計を維持していると回答した人は約25%で、そのうち半数が年収200万円に満たない〝官製ワーキングプア〟であることが明らかになりました。勤続1年以上でも年収200万円未満が59・3%となっており、低所得での雇用が横行していることが数字上はっきりしています。
 一方で会計年度任用職員は次年度も勤務することが可能ですが、「3年の壁が存在する」と自治労連の担当者はいいます。多くの自治体では、3年以降の勤務を希望する際には公募と同じように採用試験を受けなくてはいけないのが実態で、「経験や技術が蓄積されにくい、継承しにくい」と現場の職員は訴えます。さらに労働契約法、最低賃金法、パートタイム・有期雇用法の適用除外であり、民間企業以下の処遇となっているところも存在すると告発しています。

命と向き合う
仕事にやりがい

 都内の自治体で長年に渡り非常勤職員として働き、現在は会計年度任用職員とされ勤務する保育士の女性(50代)は「20~30年間も非常勤職員として勤務経験がある保育士と、勤務1年目の会計年度任用職員の保育士の賃金は同じ。正規職員への道もありません。長く続けられません」と語り始めました。
 「子どもの成長を見守りたいが、次年度は続けていられないかもしれないと思うと悲しい気持ちになります。1年ごとで区切れる仕事ではありません。子どもの発達の保障ができません」と声を詰まらせます。
 また、関西で特別支援学校の介助員を務めていた女性は「子どもや親御さんにとっては、わが子の学校生活を支えるという点で正規職員も会計年度任用職員もないんです。排せつの介助も行うのは当然のことで、相談にもきちんと対応しますし、キャリアを磨いて誇りをもって、命と向き合って働いてきました。やりがいを搾取しないで欲しい」と訴えました。
 自治労連ではこうした処遇のままでは、命の軽視や住民サービスの低下が起きるとして改善を求める署名運動を進めています。

会計年度任用職員とは 地方公務員法の改正で2020年度から新たに設けられた非常勤職員の制度。地方公務員法第22条の2の規定に基づき任用される非常勤職員。これまでの臨時的任用職員や非常勤の特別職員と比べて、休暇、福利厚生、手当等の拡充がされる一方で、服務規律(守秘義務や職務に専念する義務等)が適用され、懲戒処分等の対象にもなる。単年度(4月1日から翌年3月31日)の間で必要とされる期間を任期としての勤務で、任期は手続きなく自動的に継続されない。