葛飾区 都内区市で初 学校給食を無償化へ

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 「子どもの貧困」が社会問題化する中、公立学校の給食費無償化を求める声が高まっています。コロナ禍での物価高騰で家計が深刻化していても、いっこうに政府が動こうとしない中、住民の声に応えて独自に無償化に踏み出す自治体が広がっています。青森市(10月実施)に続いて葛飾区が来年4月から都内区市で初めて完全無償化に踏み出します。「足立っ子給食費無償化ネットワーク」(横田真美子代表)は、足立区でも無償化をぜひ実現したいと署名運動に取り組み、5日に1456人分を区議会に提出しました。来年の統一地方選挙でも一大焦点になると見られます。

共産党が繰り返し提案
クローズアップ地方選
住民の願い実現を

 葛飾区の青木克德区長は7日、区立小中学校の給食費を来年4月から完全に無償にすると表明しました。「学校給食を安定的に供給することで、児童及び生徒の心身の健全な発達を促すとともに教育環境の一層の充実を図ること」を目的とし、予算は従来の公費負担分約7億円を含む総額約17億円を見込みます。
 この間、都内各自治体では、共産党議員団と保護者が連携した取り組みなどで、多子世帯減免やコロナ禍での物価高のもとでの給食費の保護者負担軽減が各地で実現してきました。都内では奥多摩町、檜原村、利島村、三宅村、御蔵島村の1町4村で完全無償化を実現していますが、人口の多い区市では初めてです。
 同区の給食無償化を巡っては、日本共産党区議団が「義務教育は無償」の立場から繰り返し求め、財源も示して実現可能だと要求してきました。しかし、区は「学校給食法では給食食材は保護者負担が原則」との法解釈をたてに拒んできました。
 そうした中で2013年度には多子世帯第3子などへの無償化、14年度には就学援助の対象に給食費を追加させるなどしてきました。今年6月の一般質問でも給食の無償化を提案し、区教育委員会は「すでに公費による学校給食費の負担軽減を行ってきた」「さらに今年度は現下の社会経済状況を踏まえ、保護者の負担が増えないよう、公費補助の増額も行った」と答弁。その上で「引き続き保護者の負担増にならないよう対応を図ってまいりたい」と述べていました。
 共産党区議団の三小田准一区議は「粘り強く無償化を求め、給食無償化へ一歩一歩前に進めてきました。あきらめずに区民の声を議会に反映してきたことが、区政を動かす力になりました」と話しています。

食材費補助
文科省否定せず

 国会でも日本共産党は給食の無償化に向けた論戦を進めています。葛飾区が従来、完全無償化しない理由としてあげていた、学校給食法にある「学校の経費の負担区分で給食食材費は保護者負担が原則」としていることに関連して、文部科学省は、自治体が全額補助することは否定していないことを日本共産党の吉良よし子参院議員の答弁で確認しています。
 吉良議員は2018年12月6日の参院文教科学委員会で、1954年の文部事務次官通達を示した上で、「自治体等がその判断によって全額補助すること、これ自体も否定するものではないということでよろしいか」とただしたのに対し、柴山昌彦文科相(当時)は「そのように理解されるところだ」と答弁しています。

足立区
「足立っ子ネット」が署名
「子育て世帯を支援して」

 学校給食の無償化を巡って足立区では、日本共産党が2016年に「第3子無料、第2子半額」の予算修正案、17年に無償化条例案とそのための予算修正案を提案しましたが、いずれも自民、公明両党などが反対して否決。20年には第3子の無償化条例を提案しましたが、自民、公明、立憲民主各党の反対で否決されています。
 しかし粘り強い取り組みが実を結び、21年度から区による第2子半額補助、第3子以降の全額補助が実現しました(生活保護、就学援助受給世帯の負担はなし)。
 同区の給食費は今年度、小学校は平均で月額4158円、中学校は同5023円。専門学校生と中学2年生、3歳の3人の子どもを育てる同ネットワークの横田真美子代表(41)は、「子どもが3人いても公立学校に通う子は1人なので、補助の対象にはなりません。年間5万円の給食費は家計の負担になっています」と語ります。
 陳情署名は「すべての子どもに健康の増進と食育の推進、成長期における栄養に保障と支援が必要」だとし、シングル世帯や経済的困窮世帯が急増する中、「多子世帯や準要保護世帯だけではなく、すべての世帯への支援を」と求めています。
 横田さんは「就学援助を受けていない家庭でも、食費を削って家計をやりくりしている隠れ貧困とも言える事態が広がっています。子どもの栄養も後回しにされている」と心配します。

 同ネットワークのメンバーの一人、新日本婦人の会足立支部の美濃山智子事務局長は「足立区では約40年前に起きた給食民営化反対運動で、自校方式を守り、1校1人の栄養士配置や協議会の設置などが自慢のおいしい給食の今につながっています。子育て世代を地域で支え、地元農家の支援で地産地消の食育にもなる給食の無償化は、多くの区民に望まれています」と話しました。
 区の青少年委員で小中学校のPTA会長も歴任してきた山下恒彦さんは、各学校のPTA役員に申し入れています。西の原ゆまさん(日本共産党区議予定候補)は、「約15億円の予算があれば小中学校の給食費を無償化できます。区には1800億円の積立金(基金)があるので財政的には問題ありません。年間約5万円の給食費の無償化は、子育て世帯への大きな支援になります」と訴えます。
 同ネットワークでは、戸別訪問やライン(無料通信アプリ)などを使って署名を呼びかけてきました。加えてインターネット署名Change.org(チェンジドットオーグ)でも協力を呼びかています。寄せられた署名は9月28日に第2次分として区議会に提出する予定です。