都環境影響評価審議会は18日、事業者が提出した神宮外苑地区(新宿、渋谷、港区)の再開発事業の環境影響評価書案について、小池百合子知事に認める答申をしました。樹齢100年超を含む1000本近い樹木を伐採する同事業を巡っては、都民から計画見直しを求める声が広がり、評価書案についても前回審議会(5月)で外苑のシンボルであるイチョウ並木の保全への強い懸念が示され、異例の継続となっていました。答申ではそうした経緯を反映し、再開発事業者への環境保全の徹底や積極的な情報公開を求めました。一方、専門家からは前回審議会で出た懸念に答える新しいデータは提示されず、確実な保全が担保されていないなどと、厳しい指摘が出ています。
(長沢宏幸)

環境影響評価審が案を了承
 開発地域内の樹木1381本のうち971本の伐採計画は都民の大きな批判を招き、ユネスコの諮問機関の国内組織、日本イコモス国内委員会からは、伐採数を2本に見直す案が提案されました。
 三井不動産などの事業者出席のもとで開いた16日の環境影響評価審議会の部会は、伐採樹木を971本から保存・移植で556本に削減したことを評価。委員から「立派な決意で評価できる」などの意見も出ました。しかし、伐採削減数415本の内訳を見ると、工事期間中に枯れる可能性があるとして伐採を保留する311本、反対が強かったラグビー場前のイチョウ並木を困難とされる移植「検討」に変更19本を含み、合わせて8割を占めています。
 8万人を超える反対署名を都に提出した経営コンサルタントのロッシェル・カップさんはSNSで、伐採数削減を評価することについて「本来切らなくてもよい樹木や、移植などとうてい不可能な樹木を足してごまかした数字をあたかも環境に配慮し、樹木を救済したかのように伝えることは、大きなミスリードになる」と指摘。「『建設計画の邪魔になる樹木は伐採する』という事業者の姿勢は全く変わっていません」とコメントしています。

8㍍では守れない
 中央大学研究開発機構の石川幹子教授は「『絶対にいちょう並木を守る』という前提への疑念に、具体的データを提示し、これから100年先の不確実性に対して答えることが、今回の審議会の目的だった。伐採樹木の数や新植樹木、伐採した樹木をどう処分するかなどは論点ではない」とコメントしています。
 石川氏は審議会を前にした15日、都庁で記者会見し、地下にトンネルを通した際に樹木を移植した新宿御苑(新宿区)の調査結果を基に、神宮外苑再開発によるイチョウ並木の保全に生かす教訓を示しました。
 トンネルは1991年に開通し、着工に先立つ84年に樹木の調査が行われ、石川氏自らが今年7月に行った調査結果と比較。トンネルに近いほど被害が大きかった一方、15㍍以上離れた樹木は保全に成功していました。一方、神宮外苑の再開発計画では、新しく建設する新球場の外壁がイチョウ並木から8㍍しか離れておらず、審議会でも委員からイチョウの根に及ぼす悪影響をはじめ、様々な懸念が出ました。

 石川氏は会見で「8㍍の距離ではイチョウを守ることはできない。絶体絶命の危機にある」と訴えました。斎藤利晃部会長(日本大学教授)も審議会で、「イチョウの保全には不確実性が伴う。この状態で次の段階に進むことに異論があるかもしれない」と認めていますが、事業者案をなぜ了承したかの明確な根拠は示せませんでした。
 石川氏は「この(新宿御苑の)先例を事業者、委員、双方が学ばず、『不確実性』に対する担保がないまま決定することは、民主的判断の原則に反する」と批判。「審議会をもう一度開催し、アセス(評価)審議会としての明確な責任を果たすことを求める」との見解を表明しました。
 再開発は神宮外苑の約20㌶を対象に、三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、日本スポーツ振興センターの4者が実施。神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替え新築し、商業施設の入る2棟の超高層ビルを建設します。事業者が今後、環境影響評価書をまとめて都に提出すれば、着工可能となります。完成は2036年を予定。
改善案でも壁が並木そばに
 事業者がイチョウ並木の根系に配慮したという改善案。赤枠内の地下部分の構造物を扁平化するなどして、イチョウの根を保全するとしているが、並木から8㍍の位置に外壁をつくる構造は変わらず、専門家からは、長期的にみればイチョウに大きな悪影響が出ると指摘されています。