感染急拡大 党都委新型コロナ対策本部長・谷川智行さんに聞く

急がれる医療・検査体制強化

病院でPCR検査を行う谷川さん=19日(しんぶん赤旗提供)

感染抑え込む対策こそ

新型コロナウイルス感染症の1日当たりの新規感染者が20日に過去最多の、15万人超に。急拡大の勢いが止まりません。医療現場の現状や政府の対応をどうみるかなど、日本共産党東京都委員会新型コロナ対策本部長の谷川智行医師に聞きました。


勤務している首都圏のいくつかの病院で、発熱外来や救急外来を担当しています。どこも検査を希望する患者さんで長蛇の列。子どもから高齢者まで年齢も幅広く、陽性率は6割を超えています。「近所の医療機関で検査を受けられない」など、「検査難民」の状況が広がり、症状のない濃厚接触者まで検査の手が回りません。受診、検査が遅れれば、重症化を防ぐための治療も隔離も遅れます。

診療報酬戻して

職員や職員家族にも陽性者が続出し、診療体制の維持が難しく、救急外来や入院医療の縮小を余儀なくされる事態も起きています。病床もすでにいっぱいで、在宅療養中、施設入所中など介護が必要な高齢者の入院先確保は本当に大変です。保健所のひっ迫も深刻です。

いま緊急に必要なのは、医療体制の抜本的強化と、感染拡大自体を抑え込む対策です。発熱外来の体制強化、要介護者を受け入れる病床・療養施設の確保、保健所体制強化、自宅療養者への十分な対応、減収補てんなど医療機関全体への財政支援がとくに急がれます。

コロナのPCRなどの検査に対して医療機関に支払われる費用(診療報酬)が、昨年末、4月、7月と連続して大幅に引き下げられました。その上医療機関を支援するための診療報酬上の加算が縮小、廃止される事態が続いており、今後も予定されています。ひっ迫する医療現場を支え医療体制を強化するには、これ以上の引き下げをやめ、診療報酬を引き下げ前に戻し拡充することが不可欠です。

医療機関、高齢者・障害者・子どもの福祉施設・事業所、学校などでの定期頻回検査は非常に重要です。自治体でとりくみの差が大きい現状を正し、PCR検査を基本に実施することが必要です。街角などでいつでも予約なしに受けられる無料PCR検査もさらに増やし、利便性を向上させるべきです。

抗原検査の限界

政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が15日に「感染拡大への対応」方針を出しました。

オミクロン株のBA.5系統の急拡大、置き換わりが今回の感染拡大の主要因で、ワクチン接種者の免疫が弱まっている時期などと指摘しますが、6月から空港検疫などを劇的に緩和し、感染拡大を加速させたことへの反省がありません。

検査に関して、「PCR検査」という言葉は一つもなく、抗原検査を中心に推奨しています。抗原定性検査は、症状のある人の陽性判定には有用ですが、感度がPCR検査より低く、見逃しの危険があります。抗原検査陰性でもPCR検査で陽性となる例は少なくありません。

抗原検査の限界を理解していないと、陰性だからと安心して行動し、感染を広げてしまう危険性があるのです。一貫して抗原定性検査を推奨しているのは大問題だと思います。

政府の方針は、医療のひっ迫がない限り行動制限はしないと強調しています。その一方で感染拡大を本気で抑え込もうという対策が乏しい。医療のひっ迫を起こさないために緊急で多面的なとりくみの強化こそ必要です。

 

(「しんぶん赤旗」2022年7月22日付より)