東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難を余儀なくされた住民らが国と東京電力(東電)に対して損害賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁判所第2小法廷(菅野博之裁判長)は17日、国の責任を認めない判決を言い渡しました。福島原発事故をめぐる約30件(原告約1万2000人)の同種訴訟で、最高裁が判断を示すのは初となります。

 判決を下されたのは、「生業(なりわい)を返せ!地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)、千葉訴訟、群馬訴訟、愛媛訴訟で、原告は計約3700人。いずれの訴訟も最高裁決定で東電の賠償責任は確定しているものの、国の責任については高裁判決で生業、千葉、愛媛訴訟は認められましたが、群馬訴訟は否定され、判断が割れていました。
 今回の裁判における主な争点は、文部科学省の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」において、①国は震災前に巨大津波の襲来が予見できたか②予見できた場合、事故を回避できたか―の2点でした。
 最高裁は判決で①についての判断は避けています。②については「発生した地震と津波の規模が想定よりはるかに大きかった」として、「長期評価を前提に国が規制権限を行使して津波対策を東電に義務付けたとしても、事故が発生する可能性が相当にある」と、審理すべき重要な前段を飛ばして結論付けました。
 裁判官4人のうち、三浦守裁判官は「原子炉施設の安全性が確保されないときは、数多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼすなど、深刻な事態を生ずることが明らか。国がその義務の適切な履行を確保するため必要な規制を行うことは当然である」と多数意見を批判。判決文54ページの中で約30ページにわたり、反対意見を付けています。

仮定を重ねた判決
 法廷から出てきた生業訴訟弁護団の馬奈木厳太郎弁護士は「判決はまったく受け入れがたい内容」と強調。「結論を導くための判断の過程が、まったく被害者に向き合っていない」と強く批判しました。
 最高裁前は多くの人であふれ、「許されない」「不当判決だ」「原発をつくったのは国だ」など、怒りの声がひびきました。生業訴訟の原告で、福島県伊達郡から来た農業を営む女性(74)は、日本の原発は国策民営であり、「国に責任がないというのは納得できない。農業は震災前の収入に戻らず、苦しんでいる人もいる。みんなひどい思いをしている。原発の再稼働は絶対に反対」と憤りました。
 判決後に開かれた記者会見で、4訴訟の原告や弁護団が発言。口火を切った馬奈木弁護士は「国は津波に対して何の対策もとっていないのに、仮に防潮堤をつくっていたとしても事故を回避できなかったと判断した。仮定に仮定を重ね、国の責任を免れさせている。残念ながら、原発事故から国は教訓を導くことができるのか。ますます原発を続けるのは無理だという話にしかならない」と発言しました。
 生業訴訟の中島孝原告団長は、「背負った苦難を大きく切り替える判決を期待していた。これではまた、日本は原発事故を繰り返す」と強調。愛媛訴訟原告の渡部寛志氏は「国の政策や制度の未熟さ、科学技術への過信が事故に至った」と述べ、「原発事故を起こした社会の誤りをただせないまま終わってしまうのか」と悔しさをにじませました。
 群馬訴訟の丹治杉江原告団長は、「原発はもう動かしてはいけない。国は責任を取らないのですから。規制権限を持つ資格は国にない」と訴え。千葉訴訟の原告代表、小丸哲也氏は、「まったく忖度の判決」と声を強めました。