新型コロナ 防止措置から2週間 都「経験ない危機的状況」

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 「これまでに経験したことのない危機的な感染状況が続いている」。3日開かれた都のモニタリング会議で、専門家は新型コロナウイルスの直近の感染状況に危機感を示しました。東京都に「まん延防止等重点措置」(1月21日~2月13日)が出てから2週間が経過した4日の都内新規感染者数は1万9798人、11日連続で1万人を超えました。      (長沢宏幸)

救急搬送先
2カ所断られる

 「一刻を争う病気なので救急搬送先を探しましたが2つの病院に断られ、3つ目でようやく受け入れてもらえました」。こう語るのは練馬区で内科クリニックを開く吉田章医師(東京社会保障推進協議会会長)です。
 吉田医師によると、息が吸えないほど背中が痛いと訴える患者のレントゲン撮影をしたところ、大動脈に気がかりな所見がみられたため、近くの病院でCTスキャンをしてもらうと、大動脈解離が見つかりました。
 「命に関わるので、本来なら真っ先に入院させなくてはならない患者です」。ここまで救急医療がひっ迫していることに、驚きを隠しませんでした。
 クリニックでは日曜のみ行っている発熱外来の問い合わせがあまりに多く、診療を断らざるを得ない状況も出ています。吉田医師は「主流となっているオミクロン株は重症化しにくいと言われているが、患者が増えれば持病が悪化するなどして重症者の数も増えてくる。感染拡大を早急に止める必要がある」と警鐘を鳴らします。
 その上で「感染拡大を抑えるには人流を止めるのが一番効果がある。感染から発症までの期間が短いオミクロン株の特性を考えると、子どもから子ども、家庭に感染を広げている学校や保育園を短期間でも一斉に休業・閉鎖することを検討すべきではないか」とのべています。

検査ができず
長引く自主隔離

 検査体制のひっ迫も問題になっています。喉の痛みからコロナ感染を疑った自営業の男性(68歳)=板橋区=は、「検査の予約も結果の判明までも非常に時間がかかった。その間、妻との接触を避けるため木造の寒い作業場で、寝袋と備蓄の食料などで過ごして大変な目に遭った」と、「自主隔離」の日々を振り返りました。
 男性がコロナに感染したかもしれないと疑ったのは、1月26日の朝7時頃。喉に痛みを感じたからでした。男性は自主的な隔離生活に入るため、仕事の作業場として借りている木造アパートに移動。妻が検査場所を探し、あちこちに電話をかけましたが、どこも予約でいっぱいで断られ、2時間ほどかけてようやく予約が取れたのが3日後の29日の枠でした。
 検体採取はしたものの、検査機関も混んでいるため、「結果が出るまで4~5日はかかる」と言われました。実際、検査結果が出たのは採取から4日後の2日夕。陰性でした。喉の痛みの症状が出てから1週間が経っていました。
 一方、病院内の職場でケアマネージャーとして働く男性の妻は「(夫が)コロナだったら、濃厚接触者になるかもしれない。陰性が分かるまで出勤しないように」と職場から指示され、夫の陰性が確認できるまで欠勤することになりました。

都民100人に
1人が療養

 3日開いた都のモニタリング会議では、新型コロナで入院・療養したり、そのために自宅で待機をしている人が合わせて13万9068人(2日現在)に上ることが報告されました。1週間前から1・7倍となり、専門家は「現在、都民の100人に約1人が療養している」として、最大限の警戒を呼びかけました。
 その後も陽性者は増え続け、都によると4日現在、入院患者が3908人、宿泊療養者が4277人、自宅療養者は7万9343人。入院先や宿泊療養先を調整中の6万8025人も含めると、自宅にとどまっている陽性者が約94・7%を占めました。死者も増加しています。
 専門家からは、容体急変時などに適切な医療が受けられるよう体制強化が必要だとの指摘が出ました。
 また救急搬送困難となった事案は2日までの1週間の平均で253・4件に達し、前週(245・9件)から高い水準で推移。会議では「例年、冬期は緊急対応を要する脳卒中・心筋梗塞などの救急受診が多い」「一般病床が満床になっていることに加え、新型コロナウイルス感染症の入院患者も増加しており、救急の受入れがひっ迫している」との指摘がありました。

共産党都委・議員団が緊急要望

 新型コロナウイルス感染拡大の第6波により、医療機関や保健所のひっ迫が深刻になっているのを受けて、日本共産党の東京都委員会、都議団、区市町村議員団は1日、小池百合子都知事あてに都民の命とくらし、営業を守る対策の抜本的な強化を求める緊急要望を行いました。
 要望は15項目に及び、ワクチン接種の迅速化や発熱外来の補助金復活を国に要請するとともに都として独自支援を行うこと、コロナ患者が適切な医療を受けられずに自宅で放置されることがないよう宿泊施設の拡充と活用を求めています。また、早期の検査・診断・治療で都民の命を守り、感染拡大を抑え込むため、不足する抗原検査キットの増産を都として業者に強く要請することや、重点的な検査と大規模検査の拡充を求めています。
 藤田りょうこ都議が要望内容を説明。共産党都委員会の谷川智行・新型コロナウイルス対策本部長は「検査の診療報酬引き下げで積極的に検査を行っている医療機関は、検査をするほど赤字になる。都でも独自に支援をすべきだ」と要望。坂井和歌子山添拓・吉良よし子参院議員東京事務所事務局長は「小学生が発熱して病院で検査したら8800円もかかったという人がいる。これでは気軽に検査を受けられない。自己負担ゼロで検査ができることを周知徹底してほしい」と求めました。
 斉藤まりこ都議は「路上生活者や生活困窮者は検査が無料でもその他の診療費がかかると検査を受けられない。陽性でも路上に放置されるケースもある。生活保護などを活用して公費負担で入院、宿泊療養ができるように対応してほしい」と訴えました。
 応対した福祉保健局の雲田孝司次長は「オミクロン株の特性を踏まえ、各自の症状に応じた対応が必要」「重症化して亡くなることは避けなければならない」と答えました。

新人都議 新春インタビュー 
清水とし子(59)=日野市=
市民の願い都政につなぐ

 ―都議補選で敗れた自民党候補に競り勝っての初当選でした。
 2020年7月の都知事選と同時にたたかわれた都議補選は、市議会議長だった自民党の候補と、当時副議長だった私との一騎打ちでした。立憲民主党として初めて大河原まさこさん(現衆院議員)が共産党の私を応援してくれて、社民党や新社会党、無所属市議(当時)の、あるが精一さん、市民応援団のみなさんとで初めて本格的な市民と野党の共闘ができました。
 当選には届きませんでしたが、それまで共産党が取ったことのない3万5000票余という票を得ることができました。
 翌年の市長選は元副市長らを巡る不正・腐敗が大問題となり、クリーンな市政に変えようと、あるがさんが市長候補になって、さらに広い共闘ができあがりました。現職に負けましたが「次の都議選で不正の舞台となった土地区画整理事業の監督権限を持つ都政に清水を送ろう」と、共闘はさらに強く大きくなりました。今度は補選で負けた自民党候補に勝って、日野市では村松美枝子さん以来16年ぶりに、共産党の議席を取り戻すことができました。

一分

 「大富豪である私たちは、現在の税制が公平でないことを知っています」▼アメリカとヨーロッパの大富豪102人が、1月に署名した公開書簡です。書簡はパンデミックのなかで多くの富裕層が富を増やしたことを指摘し、「今こそ、不平等に向き合い、金持ちに課税することを選ぶべきです」と提起しています▼来年度の東京都予算案が1月28日に発表され、一般会計の予算規模が過去最高になりました。背景にあるのが、今年度より5858億円、11・6%も増加した都税収入です▼大企業の本社などが多い東京都の税収は、法人関連の二つの税(法人二税)の割合が高くなります。ここからも、コロナ禍で、庶民や中小企業は深刻な影響を受ける一方で、IT関連など業績が好調な大手企業も多いことや、富裕層が資産を増加させていることがうかがえます▼富めるものはさらに豊かに、貧しいものの暮らしはさらに厳しくなる社会のなかで、重要なのが政治や行政の所得再分配の機能です。にもかかわらず、来年度予算案に盛り込まれたコロナ対策は、すでに実施しているものが多いなど、都政の対応は不十分。求められるのは、豊かな税収を生かして、コロナ禍であえぐ人々や業者にあたたかい手を差し伸べる姿勢です。