東京都が旧築地市場の移転先の豊洲市場用地(江東区、東京ガス工場跡地)を、高濃度の土壌汚染があることを知りながら、2011年に578億円という高価格で購入したのは違法だとして、都民40人が578億円の返還を石原慎太郎知事(当時)に請求するよう、都に求めていた住民訴訟の判決が21日、東京地裁でありました。

森英明裁判長は原告の請求を棄却し、原告側は控訴の意向を表明しました。

都は、土壌汚染対策費の東京ガス側の追加負担を78億円に減額し、同用地を購入しましたが、2018年には地下水からベンゼンが最高で環境基準の170倍の濃度で検出されるなど、深刻な汚染が現在も続いています。

判決は都の用地取得価格が「著しく高額とまでは言えない」と判断。石原氏が築地市場の再整備方針を撤回して、豊洲に市場を移転したことも容認しました。

判決後の記者会見で原告の水谷(みずのや)和子さんは「都がうそをついて情報を隠し続けてきたことを、容認する不当判決だ」と批判。
原告代理人の梓澤和幸弁護士は「原告が求めていた石原氏の証人尋問も行わず、審理を尽くしていない」と指摘しました。

【解説】豊洲市場用地 小池都政・石原氏の責任不問

豊洲市場用地の取得をめぐる裁判は、2012年5月に都民40人が東京地裁に提訴してから8年余を経過した21日、判決が言い渡されました。

訴訟の争点は、

▽石原慎太郎元知事が東京ガス工場跡地の深刻な土壌汚染を知りながら高価格で購入した
▽土壌汚染対策費を586億円と試算していたにもかかわらず、汚染原因者負担の原則を放棄し東京ガスの負担額を78億円に抑え、都に大損害を与えた

という石原氏の政治責任を厳しく問うものです。

裁判で原告側の不動産鑑定士は「汚染対策費を差し引けば土地価格はゼロ」だと証言。
一方、都は市場用地を汚染がないものとして購入した事実を認めながら、取得価格に違法性はなく石原氏には損害賠償責任はないと弁明しました。

小池百合子知事は初当選の翌2017年、「市場用地の選定、土地購入契約の経過が不透明」だとして弁護団を差し替え、石原氏への追及姿勢を見せたものの、結局、石原氏の責任追及を放棄しました。

石原氏側は、土地売買契約書に知事公印を押したにもかかわらず「知事に決定権が分配されていない」と弁明。
一方、証人出廷した岡田至元市場長は、78億円の東京ガス側の負担額を石原氏に報告した際、差し戻しの指示はなかったと、石原弁明を覆しました。

森英明裁判長が、原告が申請した石原氏の証人尋問を退けたことも問題です。前任の林俊之裁判長は2018年の進行協議で、“石原喚問は必要だと思う”と述べていたのです。

都は豊洲市場整備に約6000億円を投じましたが土壌汚染対策は失敗。築地市場と違い交通の便が悪く駐車場不足、施設の欠陥も露呈、水産物取扱量が激減し仲卸業者の廃業が相次いでいます。

石原元知事の責任とともに、徹底真相解明を放棄した現都政の責任も重大です。

(2020年7月22日付「しんぶん赤旗」より)