子どもの人権 守る保障を 小金井市

2020年2月25日

権利条例制定から10年 推進計画の検討が進む
 「子どもの権利に関する条例」の制定から10年が経った小金井市が、理念条例にとどまる同条例の具体化に向けて動きます。市議会が2018年、同条例の推進計画策定や権利擁護の第三者機関としてのオンブズマン創設を求める陳情を賛成多数で採択したのを受けて市も重い腰を上げたもの。実効性ある条例へと市民も声を挙げています。
 陳情書を提出した市民団体「いかそう!子どもの権利条例の会」が1月26日、開いた「子どもオンブズパーソンの役割ってなに?」と題する学習会に会場いっぱいの80人が参加しました。
 兵庫県川西市の職員として、日本で最初に「川西市子どもの人権オンブズパーソン条例」をつくったことで知られる吉永省三・千里金蘭大学教授を講師に、オンブズパーソンとはどういうものか、学ぼうというものです。
 吉永さんは子どもオンブズが70年代、スウェーデンで民間制度として生まれ、81年にノルウェーで公的オンブズとして誕生したと話しました。その理念を、「子ども時代それ自体が重要だという考え方で、早く大人にすればいいとか、大人と同じように扱ってよいのだとかいうそれまでの子ども観の捉えなおしがされた」と説明。「子どもの利益を守る独立した代弁者(オンブズ)が必要だ」と語りました。
 「いかそう!子どもの権利条例の会」の阿部寛子さんは、「良い計画を策定するには市民参加が欠かせません」と求めました。

子どもの側に立ち
 学習会では、条例制定から10年、市は条例についてのリーフレットを作成・配布したものの、子どもの権利についての市の理解も、また権利条例についての周知も、進んでいない現状があるという声が聞かれました。他方、市民レベルで子どもの権利を知らせる啓発や伝え合いの取り組みが多彩に行われています。
 「小金井子育て生活情報紙」のKOKOぷれす「小金井市子どもの権利条例施行10年記念号」(19年6月発行)は、市民に対するアンケート調査(回答数203通)の結果を掲載しました。
 そこには、「子どもの権利を知り、親とは別のひとりの人間として尊重するようになった」という回答が多数あったことが紹介されています。
 同紙は回答者の、「子育てを楽しめるようになった」「子どもの側に立って考えられるようになった」「どんなに小さな子どもにも自ら育とうとする力があることや、その力を引き出すサポートをするのが大人の役割だと知って、子どもとの向き合い方が楽になった」などの前向きの声も伝えています
 編集に関わった市民は、「子どもの権利を知らなかった方からも『身近に感じた』、『もっと知りたい、活かしたい』という回答があり、アンケートに回答することで関心をもってくれてよかった」と話しました。

子に義務を課す市
 共産党の元市議で昨年12月8日投開票の市長選候補者になった森戸洋子さんは、1998年に市議会で初めて国連子どもの権利条約を紹介。子どもの権利条例制定に抵抗があった市を子どもの権利宣言の制定までこぎつかせたことは、条例制定に道を切り開く契機となったと語ります。
 それから条例制定までに10年もかかったのは、市側に大きな責任があります。
 市民から権利条例をつくろうという声があがり、行政も重い腰を上げたものの、稲葉孝彦市長は、策定委員会が出した答申(条例案含む)を棚上げにしたのです。
 その後、提案された市長の条例案は「子ども条例」という名称で、「権利」という文字がなくなり、義務を課すものでした。市は「権利に偏りすぎている」、「子どもの権利は、後進国の子どもたちのためのもの」などと説明していました。
 市議会でも、子どもの権利について否定的な意見が出される中、市民は粘り強く陳情書を提出しました。5回の委員会で半年間かけて議論。条例内容はベストとは言えませんでしたが、名称を「子どもの権利」と修正され、制定することができたといいます。
 森戸さんは今回、推進計画策定の「権利部会」の設置に至ったことについて、「市民の陳情書の採択に共同で全力をあげたことが大きい」と言います。
 「『子どもの権利推進計画』を策定している松本市を視察し、推進計画があることで、行政全体が具体的な取り組み目標をかかげ、実現に努力していました。推進計画が、地域や子どもたちの間に子どもの権利保障を根付かせるきっかけをつくっていることに確信を持った」と話しました。