元IR担当副大臣の秋元司衆院議員(自民党)がカジノ汚職で逮捕される中、都はカジノを中核とする統合型リゾート(IR)誘致の調査費1000万円を引き続き計上しました。
日本共産党都議団の和泉なおみ幹事長は予算案に対する談話などで、「カジノ誘致をめぐり担当副大臣であった東京都選出の現職国会議員が贈収賄で逮捕されるなど、一大汚職事件になろうとしている中で、小池知事が引き続きカジノ誘致の調査検討予算を計上したことは許されない」と批判。「人のお金を巻き上げ、ギャンブル依存症を増やすカジノは東京にも全国にもいらない」としています。
都はカジノを巡り2012年度以降、都民に内容を明らかにしないものを含め毎年調査を実施。これまで9回調査し来年度で10回目。IR候補地に臨海副都心青海地区などをあげています。
危険な羽田新ルート
東京都心の超低空を大型旅客機が飛ぶことになる羽田空港の新飛行ルートをめぐり、予算案には、さらにその拡大につながる、羽田空港機能強化の調査費が計上されました。
羽田新飛行ルートをめぐっては、航空機からの落下物の危険や騒音などが指摘され、住民らの反対運動が広がっています。
私立高校授業料の無償化を拡大 都予算案 貴重な前進も
予算案には、日本共産党都議団の論戦や提案、都民運動で切り開いた貴重な前進もあります(1面一覧参照)。
教育、子育て分野では、私立高校授業料の無償化の対象世帯を、年収760万円未満から年収910万円まで拡大します。後を絶たない児童虐待の防止に向け、児童福祉司35人、児童心理司23人を増員し、児童相談所の体制を強化します。
熱中症から子どもたちを守るために切実な要望となっている学校体育館の冷房化などへの支援は、都から補助が出ることで、区市町村での取り組みが進んでいます。新年度は前年度より18億円増やし、154億円を計上しました。また小中学校のトイレ洋式化の支援には、前年度よりわずかに減ったものの27億円を盛り込みました。
高齢者福祉では、人手不足が深刻化している介護施設の職員確保に向けて、職員の宿舎借り上げ支援を行う事業者に対し、その経費の一部を補助する事業について、定員数に応じて支援する住宅戸数の上限を拡充します。雇用対策では、社会問題にもなっている就職氷河期世代への新たな雇用安定化支援策が盛り込まれました。
鉄道駅のホームで視覚障害者の転落・死亡事故が相次ぐなか、転落を防止するホームドアの整備促進事業を拡充します。災害対策では、避難所の環境改善に役立つ段ボールベッドを備蓄する予算を新たに計上。昨年の台風で甚大な浸水被害が出た河川を監視する監視カメラを増設します。また救急車3台、救急隊員30人を増員します。
異常気象を引き起こす原因となり、待ったなしと言われている地球温暖化対策では、家庭における省エネルギー対策や、家庭の太陽光発電で生まれた電気を貯める蓄電池への補助45億円を新たに計上しました。
市町村への財政支援では、市町村総合交付金が20億円増額され580億円になりました。また、多摩地域の住民から強い要望が出ている多摩都市モノレールの延伸について、上北台から箱根ヶ崎への延伸に着手する予算が盛り込まれました。
膨れ上がる五輪経費
東京オリンピック・パラリンピックで小池知事は経費の縮減、透明化を公約しています。しかし、都の負担だけで1兆3700億円にまで膨れ上がっています。予算案にも大会経費と関連経費を合わせて約4500億円もの巨費を計上しています(表参照)。さらにスポンサー企業との契約金額は、多くが非公開とされています。共産党の和泉幹事長は「重大な公約違反だ」と批判しています。
共産党「前進面は不十分」各会派幹事長が談話
予算案の発表を受けて都議会各会派の幹事長が談話を発表しました。
共産党都議団の和泉なおみ幹事長は都立病院・公社病院の独立行政法人化など、予算案の重大な問題や貴重な前進面を具体的に指摘したうえで、「都の全会計はスウェーデンの国家予算を超えるもので、都の財政力に比べれば、前進面はきわめて不十分」と指摘。「小池知事の予算案を厳しくチェックし、予算の組み替えを含め建設的な提案を行い、地方自治本来の役割である、都民の暮らし・福祉充実に東京都の巨大な財政力を生かすために、18議席の力を発揮して全力を尽くす」と表明しています。
都民ファーストの会の増子博樹幹事長は今後、行政需要の増加が見込まれるとして、「民間に任せることができるものは民間に委ね、行財政改革を徹底して行っていかなければならない」と強調。公明党の東村邦浩幹事長は「必要な施策には重点的に予算を配分しており、抑揚のついた予算案」と評価しています。
自民党の鈴木章浩幹事長は、「オリンピック・パラリンピック大会が開催される大事な年に、大会前に都知事選挙があるからといって、都予算の政治利用を続ける知事の姿勢は到底容認できない」と批判しています。
立憲民主党・民主クラブの中村ひろし幹事長は「一番肝心な『福祉や教育、防災など、都民の暮らし』という視点が明確でないまま編成された感があり、その内容は、不十分と言わざるを得ない」とのべています。