〝優しさの力〟で変える 暮らしやすい街に

2019年1月31日


新宿区・予定候補 高月まなさん(45)統一地方選挑む
新宿区議選に立候補を予定する、高月まなさん(45)の紹介リーフレットに載る、母フミコさんの言葉が感動を呼んでいます。
「私はこの人に二度、命名しました。一度目は男の子の名前。二度目は望む生き方に合わせた名前。本当の名前をつけるのが遅くなってごめんね。今、あなたが自分の声と言葉で自分を表現している姿を見ることができて本当にうれしい。ありがとう」

 高月さんは成長とともに、男性であることへの違和感を強く感じるようになりました。しかし両親にも、誰にも相談できず自殺を考えるほどつらい日々を送っていました。フミコさんは、そのことに気付けなかった当時を振り返り、我が子にこう謝罪したのです。
 そして、まなさんのことをこう紹介しました。「何回も人生の転機がありましたが、そのたびに優しくなっていきました。『一番弱い者を一番先に、一番遅れている者を一番先に』。こうした言葉に私はハッとさせられます。人はここまで優しくなれる。これはもう力です」。
死にたいとまで言っていた我が子を「信じていた」というフミコさんは、「優しさの力」を見抜いていたのです。

介護で人生を学ぶ
 高月さんは、大学院に進学する頃、社会生活上の性別とのギャップに悩み、精神的に不安定になりました。「自分は生きる意味がない」と、悩む日々が続きました。そんなある日、ボランティア募集のビラを目にし、障害者の介助を始めます。
 生まれて初めて介助した人は、重度の身体障害者でしたが、バリアフリー問題で交通機関と交渉したり、障害者自立支援法に反対して国会行動にも参加する行動的な人でした。
 「消極的だった自分も声をあげ、自己表現したいという気持ちが芽生えました。このときの体験が今につながっています。障害者のみなさんに生き方を教えてもらいました」と語る高月さん。大学院修了後、介護の仕事につくことを決意します。「大変な仕事ですが、人や社会の役に立てていることが実感できて、うれしかった。相手がどんなことで困っているのか、自分に置き換えて気付くのが思いやりであり、優しさだということも学びました」
 高月さんは前向きに生きるようになりました。以前からやってみたかったバイオリンを始めるのもこの頃。オーケストラに加わり演奏活動に参加するほどに上達。自分のセクシャリティーに向き合い、両親や友人に、徐々に打ち明けるようにもなりました。

共産党と出会い 人生がより前向きに
 人生のさらなる転機となったのが、キリスト教会で出会った共産党員との交流でした。性的マイノリティーの悩みや、介護労働のひどさを相談したことをきっかけに、マルクス哲学や共産党についての学習会に参加するようになります。何回目かの学習会の後、共産党入党を勧められました。10年ほど前のことです。
 「人には言えなかったことをストレートに話しても、共産党の人たちは真正面から受け止めてくれました。本当に驚きでした。この人たちと一緒に活動したら楽しいんじゃないかなと、気楽な気持ちで入党してしまいした。憲法を守るとか反原発など、考え方にも共感していましたしね」

 何に対しても消極的だったという高月さんですが、生き方はどんどん積極的に変化しました。性適合手術を受け、戸籍上も女性となりました。
 そんな高月さんに昨年3月、5期務めたあべ早苗区議の後継として、区議選への出馬要請がありました。
 「おとなしい性格で、自分は政治家には向いていないと、思い悩みました。でも今の政治はひどすぎます。議員活動もある意味、人のためになる福祉活動。介護現場で17年間培った経験を生かし、もっとくらしやすい新宿にしたいという思いから挑戦しようと決意しました」と高月さん。
 「優しさの力」で区政を変える挑戦です。
(長沢宏幸)